短文
(1)
 ほかの人の成功事例をマネすることが、必ずしも自分の成功を約束するものではなくなったのがいまの時代です。昨日までの成功は、今日の成功を意味しません。そのような時代に大切なのは、やはり創造力です。そして創造力とは新しいものをつくりだす力を意味している以上、失敗を避けて培えるものではありません。
 創造力を身につける上でまず第一に必要なのは、決められた課題に解を出すことではなく、自分で課題を設定する能力です。

(畑村洋太郎『失敗学のすすめ』による)

(46)筆者によると、いまの時代に創造力を養うには何が必要か。

短文
以下は、ある会社が取引先に出した文書である。

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2010年11月10日


エ―ピーシー株式会社
海外営業部長 田中春子 様
ア サ ク ラ 株式会社
国際課長 西田良雄
拝啓
 貴社ますますご盛栄のこととお喜び申し上げます。
 先日お知らせいたしました通り、弊社は、事業拡大のため、来年 1 月に本社を現在の朝日ビル(北森区)から山中ビル(西川区)に移転いたします。それに先立ちまして、これまで東川区にございました国際課も、12 月 3 日に山中ビル 5 階に移転することになりました。つきましては、以下の通り新住所および連絡先をお知らせいたします。
 今後とも、なお一層のご愛顧のほどお願い申し上げます。

敬具



新住所 :〒1 41 ―0023 東京都西川区大町 1 - 5- 20 山中ビル5階
新電話番号 :0 3 ―7434 ―5656
新 FAX 番号 :0 3 ―7434 ―5657
以上
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(47)この文書で最も伝えたいことは何か。

短文
(3)
 価値観や科学的常識は、誰にとってもいつの世でも、変わらぬものだと感じがちです。しかしそれは雲の形のように、一見、静止しているように見えて、じつはゆっくりと変化しています。あまりにもゆっくり変化するため、多くの人が、雲は静止画のように変化しないものだと信じているのです。
 誰もが、たまたま自分の成長期に見ていた雲こそが「正しい雲の形」だと思い込みます。こうしてそれぞれの世代の人の脳裏にある雲の姿は、お互いに尐しずつズレてきて、すれ違いが起こるのです。

(藤沢晃治『「わかりやすい教え方」の技術―「教え上手」になるための13のポイント』による)

(48)筆者は、すれ違いが起こる原因をどのように説明しているか。

短文
(4)
 データが示す姿は光の部分もあれば影の部分もある。そのどちらか一方だけを強調することは、分かりやすさという面はあるものの、 徒に対立軸を先鋭化(注)させたり、無用の混乱を生じさせる危険性がある。
 これらをいちいち意識しているのは大変であるが、尐なくともデータをやみくもに信じてしまう態度だけはとるべきでない。データの罠を見分ける力、すなわちデータリテラシーは、多くの人にとって必要なものではあるが、本来は、公平で客観的な報道に努めるべきメディアに携わる人間が、しっかりと備えていなければならない必須の条件である。

(田村秀「データの罠―世論はこうしてつくられる」による)


注:先鋭化させる:ここでは、目立たせる。

(49)筆者によると、報道に携わる人間が備えておくべき必須条件とは何か。

中文
(1)
 すでに地図の空白がなくなった現在、地理的な冒険や探検といった行為は、時間が経つにつれてどんどん不可能になってきている。ジャーナリストの本多勝一氏は、冒険の条件として「命の危険性」と「行為の主体性」の二つをあげているが、①近代の冒険は、その後者が重要なのだ。それはつまり自己表現の問題とも密接に関かかてくる。ここでいう表現とは、地図上に誰もたどったことがない軌跡を描くという意味である。これまでの人類の歩みを俯瞰(注1)して、その隙間を見つけ、自分なりの方法で空白を埋めていく行為と言い換えることもできる。わかりやすいところでは、登山におけるバリエーション・ルートや、8000 メートル峰(注2)を無酸素で登ることや、厳冬期にどこそこを横断するとか、はじめて大陸の最高峰に全部登るとか、そういうことだ。末踏(注3)の地がなければ、点と点を結んで誰もおこなっていないことをすればいい。そうした点と点を結ぶのが厳しい土地、アクセスの難しい場所、思いもよらないルートを形成するなら、なおさらその注目度は増していく。冒険の世界には、海でも山でも空でも、そういう志向が必ずどこかに存在している。白紙のキャンバス(注4)に絵を描くためには表現力が必要なように、②地理的な空白がなくなった時代を生きる現代の冒険家たちは、そこに特別な自分なりの題材を見つけなくてはいけない。だからこそ③冒険者はアーティストでもあるといえる。

(石川直樹『最高の冒険家』による)


(注1):俯瞰(ふかん)する:全体を眺める
(注2):8000 メートル峰(ほう):8000 メートル級の山
(注3):末踏:まだ誰も足を踏み入れたことがないこと
(注4):キャンバス:絵を描くための布地

(50)筆者は①近代の冒険は、その後者が重要なのだと述べているが、それはどのような意味か。

(51)②地理的な空白がなくなったとはどういうことか。

(52)筆者が、③冒険者はアーティストでもあると述べているのはなぜか。

中文
(2)
 世界の食糧供給の頭打ち(注1)、かつての日本と同じように、経済成長のために農業を衰退させ、一方では食生活の向上を図るアジアの動きなど、私たちが暮らしている輸入大国の基盤は意外に脆い。
 私たちは、①このへんで食糧の危機管理体制を考えておく必要があるのではないか。危機管理とは、いったんことが起きた時に、生産から流通までをどうするか、前もって体制作りを考えておくことである。②体制を制度にしておかないと、食料確保のためのある程度強制力を持った政策を実施することなど不可能である。畑にはイモ類を優先的に植えなければならない。個人的に嫌だという人がいても、国民が最小限の栄養をとるために協力してもらう必要がある。この点を制度化しておく方が良いのではないか、ということである。
 平和な時には、この制度は眠らせておけばいい。いざという時に(注2)政府が発動(注3)するのである。普段は、政府はなるべく食料の生産や流通には介入すべきではない。それぞれの立場の人たちが、自由に活動出来るような環境を整えておく役割だけでいい。しかし何かの時には、食料管理に責任を持つ仕組みに移行するのである。多くの場合は、異常事態が過ぎ去るまでの一時的な措置になるだろう。
(中略)
 食糧の危機管理体制とは、非常事態に備えた生産から流通までの仕組み作りである。発動する(注3)ことがないように祈りながら、制度を検討しておく必要があるのではないか。

(中村靖彦「コンビニ ファミレス 回転寿司」による)


(注1)頭打ち:限界に達して、それ以上に伸びなくなること
(注2)いざという時に:非常事態の起こった時に
(注3)発動する:ここでは、制度を実際に使う

(53)①このへんで食糧の危機管理体制を考えておく必要があるとあるが、なぜか。

(54)②体制を制度にしてとあるが、どうすることか。

(55)政府が検討すべき食糧の危機管理体制について、筆者の考えに合うものはどれか。

中文
(3)
 ①日本の建築は寿命が短いが、これは木造自体の耐久性から決まるのではない。木造建築でも百年や二百年は持つ。千年以上持たせることも可能である。しかし、構造部材(注1)のメンテナンスが必要なので耐久性を考えると大材(注2)を用いたほうが良い。しかし、城郭(注3)や宮殿、館、寺院仏閣(注4)の類でないとなかなか大材を用いることができない。入手も難しいし加工にも手間暇(注5)がかかる。また、一般的に木造建築は火事や地震で失われることも尐なくない。
 日本人は白木の新しい建物を愛したが、時が経つと木の表面が黒ずんでくる。そこで、余裕がある者は、地震や火災に遭った時は勿論、ある程度老朽化してくると建て直し、周囲はその建て主のことを「甲斐性(注6)がある」といって褒め称えた。しかし、建て直すといっても、大まかにいえばもとと同じものが建つ。勿論少し大きくなったり小さくなったり間取りが変わったりするが見た目に大差がない。そこで、街並みや風景は長期にわたって維持される。しかも木材はリュース(注7)、リサイクルされた。
 ②これは、日本独特の更新の文化と呼んでも良い。この典型が伊勢神宮である。二十年ごとに隣合う敷地に交互に建て直されるが、建てられるものは全く同じである。建物を更新するためには、木材が必要であり、樹木も植林によって更新される。若木のほうが二酸化炭素の吸収能力が優れているから、若木への更新は環境上も評価できる。同時に職人技術も更新される。更新は環境に優しく、人々に仕事を与え、ゆっくりとした変化をもたらす木の国の優れた文化である。

(小西敏正『平成 日本らしき宣言』による)


(注1)構造部材:建物に加わる力を支える材料(例えば、柱)
(注2)大材:ここでは、長期の使用に耐える大きな木材
(注3)城郭:城とその外側の囲い
(注4)仏閣:寺の建物
(注5)手間暇:労力と時間
(注6)甲斐性(かいしょう)がある:ここでは、何かを行う経済力があって立派だ
(注7)リュース:再使用

(56)①日本の建築は寿命が短いとあるが、なぜか。

(57)②これは何を指すか。

(58)筆者は、木造建築が更新されることにはどのような利点があると考えているか。

長文
 心は目に見えない。だから客観的に知ることはできない。ならば、心とか意識なんて面倒なことを考えるよりも、目で見える、定規で測れるものだけを考えることにしよう。そう考える人がいても不思議ではない。行動主義(注1)心理学と呼ばれるこの流派では、サルやネズミなどにレバー(注2)押しなどの行動を訓練し、その行動から動物の心を探っていく。しかし動物に「まずはレバーを押してみてください」と頼むわけにはいかない。例えば、初めて実験室につれてこられたサルは、そもそもレバーにさえ気づかないからだ。では、サルにどうやってレバーを押させるのか?ポイントは二つ。ひたすら待つ。そして尐しずつ目標に近づける。
 例えば、サルが尐しでもチラッとレバーを見たとする。そこですかさずエサを与える。これを何度か繰り返すと、サルの注意が次第にレバーに向いてくる。ここでいったんエサやりを止める。するとサルは、うろつきまわったりキョロキョロしたり、色々なことを試し始める。ここが我慢のしどころ。試行錯誤の中、サルの手がレバーに伸びるのをじっと待つ。そして手が尐しでも伸びれば、すかさずエサを与える。こうして、適切なタイミングでエサをやりながら、尐しずつ目標の行動に近づけていくのである。
 私はこのやり方を、大学院生の頃、助手の先生に教わった。それは教科書に書いてあるとおりのことだった。が、実際にやってみると、それは衝撃の体験だった。エサやりのボタンを右手に持ち、白黒のモニターごしに、サルの行動をじっと見つめる。 私はサルに念じていた。「振り向け、レバーに振り向け」。伝わらない思いを伝えたい。ふいにサルがレバーに近づく。と、すかさず「エサやり」というメッセージを送る。それは紛れもなく(注3)コミュニケーションであった。この訓練をずっとやっていると、徐々にサルの気持ちがつかめてくる。そして、気持ちがつかめてくると、訓練は格段に早く進む。行動だけを見よといいながら、その実(注4)、うまく訓練するにはサルの心がつかめていなければならないのだ。心は行動からしかつかめない。しかしそれがつかめたとき、手の中にサルの心があるように思えてくる。そのとき私は、学問の本当に大事なことは、教科書には書いていないことを知ったのだった。

(金沢創「心体観測 2009年2月8日付朝日新聞日曜版による)


(注 1)行動主義心理学:人間や動物などの行動を観察して研究する学問。
(注 2)レバー:機器を操作するときにつかんで動かす棒。
(注 3)紛れもなく:間違いなく。
(注 4)その実:実際には。

(59)サルにレバー押しをさせる目的は何か。

(60)この実験室内の訓練で、人間はサルに対してどのように対応しているか。

(61)そのときとは、どんなときか。

(62)筆者がこの訓練をして分かったことは何か。

統合理解

 テレビや新聞などで年々深刻化するごみ問題が取り上げられている。例えば一般的な家庭ごみとして、生ごみのほかにも食品容器や商品などの過剰包装による廃棄物が多く見られるという報告がある。最近では指定されたごみ袋を買ってごみを捨てたり、客に買い物袋の持参を促したりする動きがあるが、ごみの量に変化は見られない。もし、自治体が家庭ごみ一個の収集につき〇〇円と有料化すればごみは減るかもしれない。ごみ自体の廃棄にもお金がかかるようになれば、誰もがごみを出す前に考えるようになるだろう。そうなれば消費者は不必要な包装を断り、使用可能な物まで捨ててしまうことも減尐するのではないだろうか。


 現代社会は数十年前と比較にならないほど便利な生活が可能になった。しかし、不要になったものを再利用することよりも便利さを優先してきた結果、家庭ごみは増え続ける一方だ。家庭ごみを減量するため、現在、ごみ袋を有料化し消費者が処理費用の一部を負担することになっている。しかし、それだけでは不十分であり、所定の場所でのごみの収集にかかる費用を消費者に負担させようと言う意見も出ているが、そうなればごみを所定以外の所に隠れて捨てるおそれも出てくる。このような問題を解決せずに安易にこれを実行に移すのには賛成しかねる。物が生産され、消費者が購入し、不要なものは廃棄されごみになるという循環を考えると、新しい製品を次々と作り出す生産者も、それに慣れ切ってしまった消費者も便利さに対する意識を変える必要があるのではないか。

(63)AとBが共通して問題だと指摘していることは何か。

(64)家庭ごみ収集の有料化についてAとBはどのように述べているか。

(65)ごみ問題についてAとBはどのように考えているか。

漢字読み

1。 橋本選手の活躍で、なんとかピンチを逃れた

2。 子どものおもちゃは、安全性を考慮して選ぶようにしている。

3。 この辺りは視界を遮る物が何もない。

4。 この説は科学的な根拠に乏しい。

5。 去年より利益がわずかに増えた。

6。 何事も初めが肝心だ。

文脈規定

7。 物置の隅で、ほこり(  )になっている古い人形を見つけた。

8。 木村さんとは共通の趣味があるので、いつも会話が(  )。

9。 地域の(  )に合った医療のシステムが求められている。

10。 その選手は、十年に一人の(  )だと言われている。

11。 書類に(  )があった場合、申請は受理されません。

12。 約300年前の絵画の(  )が終わり、来月から公開される予定だ。

13。 経済だけでなく、法律にも詳しいのが彼の(  )だ。