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 日本ではあまり朗読CDで本を読むということをしないが、欧米では人気があり、新刊本から往年の名作まで朗読CD化され、普通の書店でずらりと販売されて略る。これは視力の低下している人のためだけではなく、車中の眼を休めたいときても、そうした朗読 CD を利用して多くの人が読書を楽しんているのだ。
 それなのに、これが日本であまり利用されないのは、日常的に活字に親しむ文化があるので、わざわざ音声化する必要性を感じていない人が多いだけのことだろう。しかし、「音声は音声なりの楽しみがある」ということを知ったなら、朗読 CD は趣味や実用にもっと活用されるに違いない。 (中略)
 同じ内容の文章を活字で読むのと、他人が朗読した音声を聞くのでは、ほぼ同じ時間がかかる。「黙読なら、音声を聞くより速い」という意見があるかもしれないが、黙読(注1)にかかる時間は、自分で活字を音読(注2)した場合とそれほど変わらないはずだ。そして、一定のペースで読み進める限り、自分で活字を読んだ場合と音声で聞いた場合とで、理解できた内容もほぼ同じになるに違いない。
 実はそれでも、脳に入力される情報量は、音声より活字の方が少ないのである。なぜなら、音声で聞いた場合は、文字だけでは区別がつかないニュアンスの違いなど、が朗読した人によって適切に判断され、イントネーション(抑揚)や「間」など、を含めた音声表現として発話されるからだ。
(注1) 黙読:声に出さないで読むこと
(注2) 音読: 声に出して読むこと

1。 (55)筆者によると、日本ではあまり朗読CDで本を読むということをしないのはなぜか。

2。 (56)文章を読んだり聞いたりするのにかかる時間と理解できる内容について、筆者はどのように述べてい るか。

3。 (57)筆者の考えに合うのはどれか。