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 技術者にとってレース車を開発すると言うのは、非常に魅力があるようなのだ。それはそうだろう。市販車の開発であれば、コストのことや工場のことを考えなければいけないので、自分の考え出した創意工夫を必ずしも反映できるわけではない。いいモデルを出したからといって、営業のカが弱ければ売れるとは限らない(少なくとも、多くの開発技術はそう思って歯軋り(注1)をしているに違いない)。しかし、レース車であれば、ある程度、採算無視で色んなことにトライできる。何よりも、営業力とか他の要素に邪魔されることなく、①どんな大メーカーを相手にも対等に優劣を争うことができるわけだ。
 逆にいうと、言い訳のない世界でもある。敵上りコンマ1秒でも遅れをとれば負けるのだ。そして、それは、はっきりとその場で目に見える。(中略)
 目標設定も単純だ。市販車開発なら、時にはアメリカと欧州の両市場で売れる車を作ってくれと営業から要求されたりする。そこでは技術的に妥協せざるを得ないが、レースは絶対的な速さだけを目指せばいいのだ。その代わり、自分の実力がいまどうであれ、敵の車が75秒でサーキット(注2)を1周していれば、それより速いタイムで走る車を作らないと意味がないのだ。②出来る、出来ないを論じる余地は全くない。また、お分かりのように、他チームの車の真似だけをしていれば、決して「最速」にはならないのも真実なのだ。
(注1)歯軋りをする:ここでは、悔しく思う
(注2) サーキット:レース用コース

1。 (49)①どんな大メーカーを相手にも対等に優劣を争うことができるとあるが、なぜか。

2。 (50) ②出来る、出来ないとあるが、何が出来る、出来ないのか。

3。 (51) この文章によると、レース車の開発は、技術者にとってなぜ魅力的なのか。