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日記とは限りなく私的な記録であり、読者が存在しないビころか、他人には読まれたくない秘密の表現であるともいえる。
ただ一人だけ、奇妙な読者が存在する。いつでも自由に日記を読むことの出来る、日記の筆者である。その読者は筆者とは異なる場に立って、様々な配慮を動かす。万が一日記が盗み読まれたり(注)、死後に他人の目に曝されるような事態が発生した場合、こんなことが書かれているのはまずいのではあるまいか、等々と。しかし、これは限りないく私的な記録である筈の日記にとって矛盾である。
(注) 盗み読む:他の人の日記や手紙などをこっそり読む