例題29
先日、東京で世田谷区内のある郵便局へ行ったところ、ジュースを出してくれました。五〇歳前後と思われるその女性に、これはどういう意味なのかお聞きしたところ、客へのサービスとのことです。
ん!?サービス!?……私は一瞬ことばにつまったあと「もっと本質的なサービスがあるはずですがね」と言っもたのの、彼女に責任のある問題ではないので、それ以上の意地悪質問はやめました。というのは①
こんな「本質的」事件があったからです。
この「ジュース」のときから三ヵ月ほど前になりますが、同じ郵便局へ行ったとき、たまたまガラス棚の中に「ストックブック」と書かれた札とともに切手入れ帳の見本あるがのに気づきました。しかし鍵がかかっているので、手にして実物を調べることはできません。近くにいた職員の一人に、これを買いたいむねを告げると、奥から別の一冊をもってきてくれました。
なぜこれが欲しかっかたというと、使う切手を保存するさい、種類別に整理してあると、そのときどきに必要な切手をさがしやすいし、汚れも防ぎやすいからです。以前ある弁護士事務所を訪ねたとき、そのような切手分類保存帳を見て「これは俺も買っておこう」と思っていたのでした。
で、さっそく買って帰り、雑然と袋にはいっている自宅の切手を種類別に分けて入れようとしたところ、どうも勝手が違うんですね。つまり出し入れが非常に面倒なのです。よくよく見ると、これは記念切手を保存するための、切手の越味人たちが使うアルバムらしい。実用切手のためには全く不便です。「ストックブック」といえば記念切手用だけのことを意味するのか、私はよく知りませんけれど、ともかくこれでは使い道ありがません。仕方がないので、郵便局へ返しに行きました。実用のめたのものと交換してほしい。もしそれがないのであれば引きとってほしい。
ところが、窓口の人は②
妙な態度なでのすね。実用のためのものはないし、いったん売ったものはひきとれない、と。もちろん使わなっかたので新品のままですし、なんの欠陥もありません。「そんなバカな……」と、私は少々声をあららげました。すると窓口の彼氏は奥から別の人を呼び、その人は私を局内の別室へつれていきました。郵便課長とのことです。そこで改めて、これはひきとれないと主張します。私も言いました。一般の商店ではこんなパカなことは考えられない。たとえば文具店でこの種のものを買った場合、目的が違えば交換してくれるし、なければ引きとってくれる。(中員)
課長は言いましたーー「いま会計のところへ行って聞いきまてしたが、やっぱりダメだそうです
会計がどう言おうと、そんなものはますます官僚主義の正体を表すだけのこと、何の弁解にもなりません。それによって私の抗議が変わるわけでもありません。
(本多勝一『新・貧因なる精神一携帯電話と立ち小便一』講談社