練習56
今までは、どちらかというと、どんな心持ちで勉強や仕事をしていったほうが幸せだろうかという視点で考えてきましたけれど、そうではなくて、社会の制度のあり方として、どんなものがよいだろうかという点を考えてみます。
ひとっの提案は、もう少し進学のプロセスを変えてはどうか、少し大胆にいうと高校からダイレクトに大学へ進学するのを原則禁止して、いったん社会に出て働くことにしてはどうか、ということを考えています。
よく言われていることですが、日本の大学は、大学入試のゴール地点になってしまっていて、そこで何を学ぶのか、そこでどんなことを身につけるのかという意識がかなり希薄です。いっぽうでは、大学を出てから働き始めた多くの人が、大学時代にもっと勉強をしておけばよかったと後悔したり残念がったりしている姿をよく見かけます。①
これはとてももったいないことだと思います。
このようなことを言うと、ならば、大学でもっと勉強をさせるようにすればいいじゃないか、それは大学でちゃんと教えていない君たち教師の責任じゃないか、というお叱りを受けそうですし、たしかに②
反省すべき点は多々あると思います。けれども、現状では大学生がなかなかやる気を持てないという面もあるように感じています。
それは、実社会で実際の仕事などを経験してみないと、その学問の重要性や必要性を実感できないという面があるからです。とくに経済学のような学問はそういう傾向が強いように思います。
(柳川範之『独学という道もある』筑摩書房)