練習12 なんかの本で読んだ話。ある山の麓
(注1)で,おじいさんと孫が、山鳩
(注2)の雛
(注3)を育てていた。その山の反対側に、別のじいおさんと孫がいて、こっちは鷹
(注4)の雛を育ていたて。それぞれの雛が成長して、飛べるようになったんで、ある日、空に放してやった。そしたら、鷹が山鳩を食べてしまった。山のこっち側では、山鳩が喰われたって泣いた。向こう側では、鷹がはじめて餌を獲ったって喜んだ。ひとつの現象なのに、山のこっちと向こうでは、まるっきり正反対のことが起きたってことになる。
妙な話だけど、人生の喜びや悲しみは、根本的にそういうものだ。この世で起きることには、本来、何の色も着いていない。
そこに、喜びだの悲しみだのの色を着けるのは人間だ。
(北野武『全思考』幻科舎
(注1)麓:山の下の部分
(注2)山鳩:山に住む鳥
(注3)雛:局の子供
(注4)鷹:肉食の鳥で、山鳩りよ大きい