例題5 江戸時代以前、人々の普段の生活はとても単調で、毎日ほぼ同じ事の繰り返しだった。特に農村は娯楽もほとんどなく、食生活も貧しかった。白米や酒は贅沢品で、めったにロにすることができなかった。しかし、正月や祭り、結婚式などは特別な日だった。この日だけは白米や餅を食べ、たっぷりの酒を飲む。いい着物を着て、歌や踊りに興じる。このような「非日常」を思い切り楽しむことで、人々は「日常」のつらさを忘れることができた。
 民俗学者の柳田國男は、このような特別な場面を「ハレ」、それ以外の毎日の生活を「ケ」と名付けた。昔は「ハレ」と「ケ」がはっきりと分かれていて、それが人々の生活にリズムを与えていたと考えたのである。
 では、現在はどうか。もちろん結婚式などは今でも人生で特別な場面であろう。しかし、近代化が進んだ結果、昔は特別な日にしかできなかったこと一おいしい物を食べたり、綺麗な服を着るなどということは、すっかり普通のことになった。TVだ映画だカラオケだと、娯楽も日常化している。現代は「ハレ」と「ケ」の境界があいまいになっているのである。

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