人が暮らしのなかで何かを選ぶという機会は、私が生きたこの六十年で、ずいぶんと増えたように思います。衣類一つをとっても、今は家の中に溢れかえっていて、いかに処分するかが問題となる状況です。(1)デパートやスーパーに行って、商品の山にさらされると、ついついまた何かを選んで買ってしまう。そういう生活になっています。
 あるいは子どものおもちゃ(2)、私が子どもだった頃には、買ってもらえるものが本当にかぎられていました。子ども向けの商品は、(3ーa)に比べてずいぶん貧弱でした。
 ところが、いまは子どもをターゲットとした商品市場が、親を巻き込んだかたちで、圧倒的な広がりを持つようになっていて、子どもが小学校に上がる頃には、ダンボール数箱分のおもちゃのガラクタがたまっていたりします。(3ーb)の子どもたちが持っているおもちゃの量は、(3ーc)に比べて、おそらく100倍以上に達しているのではないかと思います。

(明寿半男閉『心はなぜ不自由なのか]EHP研究所刊)

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