人と人が内容あるコミニュケーションをするとき、そのなかだちとなるのは、「言葉」です。ありがたい気持ち、あるいは申し訳ない気持ちを感じていても、それをどのように言葉に表すか(50)、うまく伝わるかどうか違ってきます。また、人に何かを頼むときや言われたことを断るとき、どのような表現を使うかによって、相手の気持ちもずいぶん違ったものになります。
(51)、「巧令言色鮮仁」のような言葉もあります。どのような表現をするにせよ、言葉の奥に「誠意」があることが必要です。しかし、一方で、いくら「誠意」があっても、うまく伝わらなければ、相手にとってはないのと同じだというのもまた現実です。相手を尊重する気持ちがあっても言語表現上のすれ違いがあれば、結果として相手を尊重する(52)。相手を尊重する気持ちらがある(53)、その思いをうまく表現できなかったという経験は、誰しも、多かれ少なかれある(54)。
(森山卓郎『コミュニケーションカカを磨く一一日本語表現の戦略に』よる)