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長い間演劇に携わっていても、今でも驚くのが「役者はなぜこれほど変わるのだろう」ということである。メイクや衣装で、見栄えだけでも相当違って見える。が、変わるのは外見ばかりではない。立ち居振る舞いから、極端な時には人格まで変わってまっしたのだろうか、と驚くことがある。
ー人の役者に医師の役を当てる。普段着で練習する時はそうでもないが、白衣を着せると途端に医者に見えてくる。役者だから、当然といえば当然だが、医師風の歩き方、所作、話し方に変わっていくのだ。同じ役者に、今度は兵士の役を当て、兵隊の衣装を着せる。( ① )、兵士の歩き方、喋り方になり、果ては思考方法まで兵士に変わっていく。
アメリカの心理学者フィリップ・ジンバルドが②
こんな実験を行っている。新聞で公募した二十四名を、無作為に「内人役」と「看守役」に、半分に分ける。因人役は警官に逮捕された後、取調べを受けて囚人服を着せられ、監獄に入れられる。看守役は、制服を着て、警棒を下げ、囚人を監視する。どちらも、それらしく振舞うよう指示されわけるではない。ところが、服を着せるだけで、本物らしい振る舞いになっていったのである。囚人は卑屈な態度を取り、看守は命令口調になる。
言葉遣いは行動が変われば、やがて思考方法も変わってくる。つまり、人は服装によって変わる可能性がある。
(竹内一郎『人は見た目が9割』ぇによる)