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人間にはそれぞれに、持って生まれた能力や特性がある。それぞれの能力というものに優劣があるわけでは決してない。音楽の能力や絵を描く能力のどちらが優れているかというのは言えないし、比較をすること自体おかしいことだ。
同じように仕事の中においても、営業能力と管理能力を比較することは、おかしい。比較できない能力に、ましてや他人から見て差をつけるなどということは、やるべきではないと私は思う。
確かに同じ仕事をしているのに、実績などに差が出てくることは、よくあることだ。要領が良くて飲み込みの早い人間もいるだろう。少々要領が悪く動きの遅い人間もいるのだろう。そのときだけを比較すれば、①
“できる人間"と“できない人間"がいることが確かだ。しかし、それは、あくまで一時的なことに過ぎない。
たとえば、若い頃は速く走る能力があっても、歳を取ればその能力はなくなってしまう。逆に歳を取ることで、物事をじっくり考える能力が身についてくることもある。つまり、能力というのは、その時々によって常に動いているものだと考えべきるなのである。
( ② )、上司が部下を評価する時に、その時点の能力けだで単純に永遠の評価をしてはならない。ましてや、能力の評価を、人間の評価に結びつけるなど、もってのほかである。能力がないから人間的にもダメなやつだ、などということは絶対に思うべきではない。
(江口克彦『上司の哲学に』よる)