「協⼒は結果でなく過程にせよ」
 この⾔葉、私が経営コンサルタント(注1)をしていた30代の頃、さまざまな研究開発をおこなって成功している企業と、あまり上⼿に成果を出せない企業のやり⽅の差を分析したときに気づきました。
 何か新しいことの成果を⽣むためには、時間と労⼒とお⾦をかけるような努⼒が必要です。しかし、そういった努⼒をおこなうとき、うまくいっていない企業はついつい「結果」ばかり重視し、そのを評価してしまうのです。
 例えば新薬の研究開発や、新しい製品、サービスの誕⽣はさまざまな偶然性に左右され、まじめに努⼒してきた⼈が必ず報われる(注2)とは限りません。たまたま⼤ヒットする(注3)ことも少なくない⼀⽅、ものすごく⼒を⼊れたものが拍⼦抜けする(注4)ようにダメだった場合もあるためです。
 しかし、結果ばかり評価するやり⽅は、同じ試みをして再び成功する確率が低い、つまり「再現性」が乏しい(注5)のです。よく私は②「成功は復習する」という表現も使いますが、たいした過程管理もせずに、たまたまうまくいってしまったとき、2回⽬、3回⽬も同じような偶然を狙いに⾏き、失敗してしまうのです。
 ⼀⽅、研究開発に成功している企業は、「過程に正しくチャレンジしているか」という観点(注6)を重視し、結果は確率変数(注7)と割り切って、過程がうまくいっていれば⼀定割合で成果が⽣まれると考えます。

(勝間知代「勝間知代の⼈⽣を変えるコトバ」2009年8⽉1⽇付朝⽇新聞朝刊)


(注1)経営コンサルタント︓会社などの経営をよくなるために助⾔をする仕事
(注2)報われる︓「報いる」の受け⾝。何かしたことに対して⼗分なものを受け取る
(注3)⼤ヒットする︓⼤成功する
(注4)拍⼦抜けする︓がんばっていた気持ちが急になくなる、がっかりする
(注5)「再現性」が乏しい︓もう⼀度同じことをするのが難しい
(注6)観点︓ものの⾒⽅
(注7)確率変数︓そのとき、そのときの確率によって変わる数字

1。 (66)①それ何を指しているか。

2。 (67)②「成功は復習する」とは、ここではどういうことか

3。 (68)筆者がいう「成功している企業」は、なぜうまくいっているのか。