何か⾔われたら、すぐ、「わかっているよ」「知っているよ」と答える
 ⼈が何か⾔ってきたとき、こう答えれば、相⼿は⼗中⼋九(注1)、不快になります。「はい、わかっています」と、丁寧に答えても同じこと。相⼿に伝わるのは、あなたが、そのことについて、すでにわかっている、知っているということではなくて、「うるさい。もう、それ以上、話すな︕」ということだからです。
 もし相⼿が、あなたの意図通り、「わたしは、よくできる⼈間です。だから、わたしのことを認めてください」という意味に受け取ったとしても、やはり、多くの⼈が不快になります。「わたしは、よくできる⼈間です」ということは、つまりは「あなたよりよくできる」ということだからです。つまり、相⼿との間の「違い」を強調することだからです。
 この「違い」というのは、コミュニケーションにおける重要なキーワード(注2)のひとつです。
 ⼀般に、⼈と協調したいときの基本は、「相⼿と同じところを⾒つける」ことで、⼈と対⽴したいときの基本は、「相⼿との違いを⾒つける」ことです。
 これは、⼀対⼀のコミュニケーションから国と国との外交まで、すべてに共通するコミュニケーションの原則です。この「わかっているよ」という表現は、その原則から⾒ると、本⼈がどういうつもりであれ、①後者、すなわち相⼿との違いを強調する表現なのです。

(ディスカバーコミュニケーションラボラトリー編『なぜか好かれる⼈の話し⽅ なぜか嫌われる⼈の話し⽅』ディスカバートウェンティワン)


(注1)⼗中⼋九︓⼗のうち⼋か九まで。たいたいの場合
(注2)キーワード︓何かを理解するために必要な⾔葉、鍵となる⾔葉

1。 (63)筆者によると、何か⾔われたとき、すぐ「わかっているよ」「知っているよ」と答えると、相⼿はどんな気持ちになるか

2。 (64)「わかっているよ」「知っているよ」と答えることは、相⼿にはどんなふうに伝わるのか

3。 (65)①後者とあるが、何を指しているか