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ある有名な野球監督が、現役中
(注1))、少なくともゲーム中にば、実に無表情で誰に対してもニコリともしないということで、有名だったそうです。それが引退してから、ある新聞記者の問いに答えて、ある人間に笑顔を見せたということになると、その人には親しみを持っているけれども他の人間にはそうではないということの表示になる、だから自分は、現役のあいだは、選手の個々と常に全部同じ距離を持っているということを示すために、表情を変えなかったんだということを言ったそうです。
これは管理という行為を見事にあらわしているエピソード
(注2)だと思いますが、人と人とがふれ合って理解していくことを殺す作業であることははっきりしています。そこでは部下の“性格”理解は支配し操作する技術の一部となる。そればかりか、管理のための行為のくり返しが、管理者の性格を限定し作り出していく。
(竹内敏晴『からだが語る言葉』評論社)
(注1)現役中:仕事をしている間
(注2)エピソ一ド:話