大学生の就職活動は4年生になってから本格的に始まる。4年生は就職活動で慌しい。大学教育は4年間であるはずだが、その最後の1年は見苦しいものだ。特に4年生を中心としたゼミ(注)などの授業では、学期が始まる4月、5月と①開店休業に近い状態が続く。学生や大学はよい迷惑だが、困っているのは企業も同じだろう。この時期に会社を決めても、卒業までの1年の間考えが変わってしまう学生が多いからだ。これは典型的な②「囚人のジレンマ」と呼ばれる現象である。
 どの企業も、採用する時期はもっと遅いタイミングが良いと考えている。しかし優秀な人材を確保するためには、他の会社より早く採用せざるを得ない。実は、ライバル会社もまったく同じことを考えて採用を早めているのである。結局、個別会社の自由な判断にまかせるだけでは、このおかしな状態から抜け出すことは容易でない。ライバル企業が採用を早めている中で、自社だけが出遅れることはできないからだ。
 したがって、この問題の解決には政府や業界団体あるいは大学団体がともに協力し、すべての企業が同時に採用時期を遅らせるよう協定を結ぶか、在学中の学生を採用することをできなくすればいいと思う。しかし、それらは根本的な解決ではない。大学を卒業した人がそうではない人より優秀であるという社会認識を変えない限り、結局またこのおかしな状態が続くだけなのだ。
(注)ゼミ:教授を中心にあるテーマについて議論や研究を行う少人数授業

1。 (7)①開店休業になる理由は何ですか

2。 (8)②「囚人のジレンマ」の意味にもっとも近いのは何ですか

3。 (9)筆者がもっとも言いたいことは何ですか