短文
(1)
 リサイクルといってすぐ思いつくのは、紙類やペットボトルですね。ただそれらは、収集場所に出してしまえば後のことはわがりません。しかし、江戸時代は違いました。われた茶碗をくっつけ、ゆるくなった桶を締め、ほうきを付け直してくれるようなそれぞれの専門業者(注)がいて、直してもらい、長く使用したのです。
 そう考えると、靴の修理は立派なリサイクルです。履けないからといってすぐごみに出してしまうのではなく、修理してまた履くことで、十分にごみの減量に貢献しているのです。
(注)専門業者:専門的にその仕事をしている人

(55)筆者がこの文章で勧めているリサイクルはどのようなものか。

短文
(2)
 食物繊維を多く摂取する(注1)と、脳卒中や心臓病といった病気になる確率を減らせることが、国立がんセンターによる調査でわかった。調査は約8万7千人の男女を対象に10年間にわたって行われたが、この調査の中でさらに判明したことがある。女性およびたばこを吸わない男性には上のような傾向が見られたのに対して、たばこを吸う男性には変化が見られなかったというどとだ。
 たばこが肺がんの発症(注2)に関係していることは既に知られている事実だが、たばこの影響がそれだけにとどまらないことが、この調査で明らかになった。
(注1)摂取する:取り入れること
(注2)発症:病気の症状があらわれること

(56)この調査で「さらに判明したこと」とは何か。

短文
(3)
 英語の学習熱が60代以降にも広がっている。企業内の昇任試験や大学入試などにも利用されている英語能力テストTOEIC(Test of English for International Communication)の受験者数も、全体では最近8年間で3.0倍なのに、60代以上は4.7倍。
 驚くのはその成績。平均点を年代別にみると、なんと60代以上が最も高い。記憶も体力も衰えているはずなのに、なぜか。
 TOEICを実施している国際ビジネスコミュニケーション協会の斉藤一彦さんは「60歳を超えても受ける人はそれなりの(注1)心づもりがあるからだ」という。
 たとえば、定年退職後に海外に移住したり、国際協力機構(JICA)のシニア海外ボランティアに参加したり。「モチベーション(注2)が違うんです」。六十の手習い、侮るべからず。

(「あっと!@データ六十の手習い手ごわいぞ」
2006年4月9日付け朝日新聞be on Sundayによる)


(注1)心づもり:心の中で先に考えておくこと
(注2)モチベーション:motivation目標に向かって頑張る気持ち

(57)ここで述べる60代の英語学習の現状と合っているものはどれか。

短文
(4)
 私たちはだいたい一日14、5時間を起きて生活している。いま、そのきのうの一日を思い出してほしい。(中略)
 こういった一日を思い出すのに、きのう一日ぶんの14、5時間がかかるわけではない。せいぜい5分か6分で、思い出すことになる。
 これは私たちのアタマの中で、一日の出来事が5、6分程度にダイジェスト(注)できることを示している。すなわち、14、5時間の情報は、たかだか5、6分の情報に短縮できるのだ。
 これを〈情報圧縮〉という。じつに不思議なことである。

(松岡正剛『知の編集工学』朝日新聞社による)


(注)ダイジェスト:digest要点をわかりやすく要約すること

(58)「じつに不思議なこと」とは何か。

短文
(5)
 観客のまったくいない演劇は、演劇とは言えない。第三者に見られているという意識のもとで、自分がいかにも内側からわき上がる感情に充たされているように話す。これは難しい技術だ。自然さが失われやすい。
 それだけに、演劇の練習で鍛えられた人は、人目(注1)にさらされた場での度胸が据わっている(注2)。他者の(それも多くの)・目を受け止める芯の強さが、身体の中に軸として生まれる。(注3〉世阿弥(注3)の言う「離見の見」は、観客側から見える自分の姿を役者が意識するということだ。

(斉藤孝『コミュニケーション 力』岩波書店による)


(注1)人目にさらされる:多くの人に見られる
(注2)度胸が据わっている:落ち着いていて、物事を恐れない様子
(注3)世阿弥: 1300年代後半の舞台で活躍した歴史上の人物

(59)筆者は、役者が演劇の練習を通して身につける力は何だと述べているか。

中文
(1)
 電子書籍とは、紙の本とは違って、音楽や映像など、様々なものを盛り込めるのが魅力であり、それによって小説がどう変わるかということをよく尋ねられる。
 私の作品に関して言えば、①そういったものは何もつけなかった。出来るからといって、本当に読者が求めているのかどうかは考えてみるべきである。私はデザインにかなり興味がある方だが、ホームページの凝ったフラッシュ動画などは、ほぼ100%スキップする(注)。ユーチューブに飽き、iPadに飽きて、さあ、本でも読もうという時に、また動画が再生され、音が鳴り出すと、②読者はうるさがるのではないだろうか。
大体、小説は、それ自体として完結する世界であり、そこに更に写真や効果音が加わると、明らかに過剰である。もし、それをやるなら、最初から他の要素を前提とした文章を書くべきだが、そのためには、映像、音、テキスト(注2)のすべてに通じていなければならない。実用書などでは動画は効果的だろうが、小説に関しては、当面は紙の本のために書かれたものをそのまま電子化するだけだろう。
最近では、早くも中国で違法に電子化された本も登場した。著作権の保護も取り組まなければならない課題の1つである。

(平野啓一郎「すでに始まってしまった未来について-⑤」
[Nextcom vol.5 2011年Spring] KDDI総研による)


(注1)スキップする:飛ばして次に進むこと
(注2)テキスト:書籍の本文の部分

(60)①「そういったもの」とは何か。

(61)なぜ②「読者はうるさがる」のか。

(62)小説の電子化について筆者はどう考えているか。

中文
(2)
学級崩壊という言葉が使われ始めてから、早いものでもう10年以上経ちます。その原因は「親のしつけ(注1)にある」とか「教師の指導方法が問題だ」とか、「本人に障がいがある」とか言われてきましたが、未だはっきりしません。解決の特効薬(注2)は見つからず、大きな社会問題となっています。
 学級崩壊した教室の特徴として見られるのは、小学校抵学年の子供たちが授業中席につけず、話を聞けないことです。それが、教室活動の妨げにもなっています。学級崩壊の原因は模索中とはいえ、それが見つかるまで子供たちの成長を止めることはできません。大人になる前に、社会生活で必要な知識を身につけなければならないのですから、何としてでも解決策を見つけ出さなければなりません。
 そこで学校の先生たちは、様々な②工夫をするようになりました。例えば、問題のある子供が授業に集中できるように、教え方や注意の引き方を変えてみるーーいわば児童指導のスキル(注3)を磨くこと。また、体を動かしたり、眼球トレーニングをすることで集中力をつけさせるなどです。
 それらを実施した学校では、子供たちに好評で少しずつ効果も出てきているようですが、その効果がずっと続くかどうかはわかりません。子供たちの明るい未来のためにも、こういった先生たちの努力のほかに、原因を究明することが欠かせない(注4)でしょう。
(注1)しつけ:社会や集団のルール、礼儀などを身につけさせること
(注2)特効薬:特別によく効く薬。ここでは効果のある対策
(注3)スキル:skill 技術
(注4)欠かせない:なくてはならない。絶対に必要だ

(63)①「学級崩壊」を説明するものとして最も適切なものはどれか。

(64)先生たちの②「工夫」とはどのようなものか。

(65)筆者は、学級崩壊についてどのように考えているか。

中文
(3)
 散歩という言葉はぶらりぶらりのそぞろ歩きを連想させるが、それではカタルシスはおこりにくい。相当足早に歩く。はじめのうち頭はさっぱりしていないが、30分、50分と歩きつづけていると、霧がはれるように、頭をとりまいていたモヤモヤが消えていく。それにつれて、近い記憶がうすれて、遠くのことがよみがえってくる。さらに、それもどうでもよくなって、頭は空っぽのような状態になる。散歩の極地はこの空白の心理に達することにある。心は白紙状態(①タブララサ)、文字を消してある黒板のようになる。
 思考が始まるのはそれからである。自由な考えが生まれるには、じゃまがあってはいけない。まず、不要なものを頭の中から排除(注1)してかかる。散歩はそのためにもっとも適しているようだ。ぼんやりしているのも、ものを考えるにはなかなかよい状態ということになる。②勤勉(注2)な人にものを考えないタイプが多いのは偶然ではない。働きながら考えるのは困難である。歩くのは仕事ではない。だから、心をタブララサにする働きがある。時間を気にしながら目的地へ急ぐのでは、同じく足早に歩いても思考の準備にはならない。
 ものを考えるには、適当に怠ける必要がある。そのための時間がなくてはならない。

(外山滋比古『知的創造のヒント』講談社による〉


(注1)排除:いらないものを取り除く
(注2)勤勉:勉強や仕事に一生懸命取り組む様子

(66)①「タブララサ」とはどのような状態か。

(67)②「勤勉な人にものを考えないタイプが多い」のはなぜか。

(68)筆者は、ものを考えるにはまずどのような状態にするのがよいと述べているか

統合理解
A
 人の記憶があいまいだったり、まちがっていたりするのは、だれにも覚えのあることだろう。実際に、あの日雨が降ったと思っていたけれど、記録を調べてみだら違っていたということがある。「今度の休み、出かけられる?」と聞かれ、「出かけられないわけじゃないよ」と消極的に答えたつもりが、「出かけられないわけないよ」、つまり、「積極的に行く」と受け取られたということもある。こっちが言いまちがえたのか、相手が聞きまちがえたのか、もはや確認のしようがない。
 何が問題なのかというと、人の記憶は主観的で一面的だということだ。本来、人はそういう狭い世界で生活しているのである。といっても、この世の人が全て主観的だというわけではない。記憶が全てそうなのではない。人の記憶は他の人の記憶と共通する部分も多く、それで社会は客観性を維持しているのである。

B
 たとえば、「りんご」といえば日本人は赤いりんごを思い浮かべるものだが、フランス人にとってりんごは緑色に決まっていると言う。また、日本人は、緑色のリンゴを「青いりんご」と呼ぶし、交通信号の緑色を「青」と呼んで少しも不思議に思わない。
 これは文化の違いによるもので、文化にも一面的なところがあることのいい例だが、他にも、人は見る角度によって、同じ物が異なって見えたりもする。私たちは普通お金の100円玉を円形だと思っている。ところが、横から見れば同じ100円玉が細長い長方形に見える。私たちはいつも駅で切符を買うときに、コインの投入ロの四角い形を目にしている。それなのに、100円玉は四角いと言う人はいない。私たちの思考には決まった型があるからだ。決まった型、つまり、一定の枠組みの中で私たちは物を見ているのである。

(69)AとBで共通して述べられていることは何か。

(70)AとBの筆者は、人の社会や文化について、どう述べているか。

長文
 私自身、実家が北海道、勤務先が関東、と離れているためもあってか、「遠距離介護(注1)」 についての取材を受けることがたまにある。
 たしかに、離れた実家に暮らす親が高齢になってくると、①若いころには予想もできなかったような問題があれとれ出てくる。病気の治療をどうするかということから、買い物や掃除などの日々の生活のことまで。近くにいれば「じゃ、今日、帰りに寄るね」と言えるが、電球ひとつ取り換えるために飛行機に乗って駆けつけるわけにはいかない。
 私など、「何もできなくてゴメンね」と言いながら、心のどこかには「やらずにすんでよかった」という思いもある。遠くにいるのを、介護や手伝いを避ける方便(注2)にしているのだ。
 ところが、診察室に来る人たちは、もっとまじめだ。「ちょっと具合が悪いのよ、なんて郷里(注3)の母親から電話が来ると、ドキドキしちゃって……」と②心身の不調を訴えてやって来る人もいる。中には、どんどんマイナス思考に陥って、「やっぱり都会で仕事をしよう、と思ったのは間違いでした。ずっと実家にいればよかった」などと言い出す人さえいる。
 その親への愛情ややさしさはすばらしいと思うが、そこまで自分を責めるのは、やっぱり間違いなのではないだろうか。
 そういう人には、「どうでしょう、今はご両親も弱気になっているかもしれませんが、かつては都会で自立しているあなたに喜んでいたのでは?」と昔のことを思い出してもらう。すると、最初は「いえ、近くにいてほしかった、と嘆くばかりです」と言っている人でも、次第に記憶がよみがえってくる。
 「そういえば、近所の人に“ウチの子、東京でがんばってるのよ”と自慢した、と言っていたこともあったような。“お母さん、やめてよ、恥ずかしい”と止めたのですが」
 そうそう、どの親にとっても子育ての目標は、「子どもに介護してもらうこと」ではなくて、「子どもを自立した人間に育てること」。遠距離介護に悩む人たちは、「親の願いをかなえて自立した子ども」でもあるのだ。きっと親は、地元を離れてがんばるわが子を誇りに思い、そんな子育てができた自分にも満足しているに違いない。
 遠距離介護をしている自分を、責めたり恥じたりしていないで。自分は「子どもとして不合格」だなんて思わずに、自信を持って。その中で、できる範囲でケアしてあげれば、それで十分。
 悩む人たちに、そう声をかけたい。

(香山リカ「香山リカのココロの万華鏡」2011年2 月8 日付け毎日】jp
http://mainichi.jp/life/health/kokoro/による)



(注1)介護:お年寄りの面倒を見ること
(注2)方便:言い訳
(注3)郷里 :生まれ育ったところ

(71)①「若いころには予想もできなかったような問題」とはどういうことか。

(72)②「心身の不調を訴えてやって来る人もいる」とあるが、なぜ心身が不調になるのか。

(73)筆者がこの文章で最も言いたいことは何か。

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屋内運動場の利用案内の一部分である。
(74)4月29日に全面を利用したい場合、いつまでに申請書を出さなければならないか。

(75)プロのサッカーチームが雨天練習場として3時間利用し、その練習の様子を一般市民に公開し入場料1人100円を取った。またその日は暑かったので、全面で冷房を使用した。入場した一般市民が100人いた場合、このサッカーチームは施設利用料をいくら払わなければならないか。