短文
(1)
 食事の作法は、世界各国で違うから私には大変おもしろく思える。
 時々、日本以外の国のホテルで、サラダのお皿などを持ち上げて食べている日本人を見かける。あれは外国の習慣に慣れないことを示してはいるのだが、日本では子供の時から、決してご飯をいれる茶碗や、スープを入れる本のお椀を、下においたままと食べてはいけない、としつけられているのである。ご飲茶碗を下においたまま食べようものなら、母は、「そういうだらしのない食べ方をしてはいけません」と叱る。

(三浦洒門・曽野綾子 『日本人の心と家』 読売新聞社による)

(55) この文で筆者が説明している「日本人の食事の作法」は、どれか。

短文
(2)
 生物の活動が昼夜の長さ、いいかえれば明暗の周期(光の周期)によってきまる現象は、「光周性」と呼ばれている。
 植物の花がいつ咲くか、動物がいつ繫殖(注)するか、いつ冬眼に入るかなど、いろいろなことが光周性によってきまることが、今ではよくわかっている。小鳥は光周性によって春の到来を知り、さえずり(注2)出すのである。
 その一方、多くの昆虫は暖かさで「春を数えて」 いる。
 昆虫が温度で春を数え、その昆虫を餌にしてひな(注)を育てる小鳥が日の長さで春を数えるということになると、そこに食いちがい(注4)がおこる可能性が生じる。

(日高敏際『セミたちと温暖化】 新潮文庫による)

(注1) 繁殖する : 動物や植物が生まれて増える
(注2) さえずる : 小鳥が鳴く
(注3) ひな : 鳥の赤ちゃん
(注4) 食いちがい : 少しちがって、一致しないこと

(56) そことは、何を指しているか。

短文
(2)
 生物の活動が昼夜の長さ、いいかえれば明暗の周期(光の周期)によってきまる現象は、「光周性」と呼ばれている。
 植物の花がいつ咲くか、動物がいつ繫殖(注)するか、いつ冬眼に入るかなど、いろいろなことが光周性によってきまることが、今ではよくわかっている。小鳥は光周性によって春の到来を知り、さえずり(注2)出すのである。
 その一方、多くの昆虫は暖かさで「春を数えて」 いる。
 昆虫が温度で春を数え、その昆虫を餌にしてひな(注)を育てる小鳥が日の長さで春を数えるということになると、そこに食いちがい(注4)がおこる可能性が生じる。

(日高敏際『セミたちと温暖化】 新潮文庫による)

(注1) 繁殖する : 動物や植物が生まれて増える
(注2) さえずる : 小鳥が鳴く
(注3) ひな : 鳥の赤ちゃん
(注4) 食いちがい : 少しちがって、一致しないこと

(57)( ア )( イ )に入る語句の組み合わせとして、適当なものはどれか。

短文
(4)
 コンピュータの登場で、本の世界は、大きな衝撃を受けた。いまただちに目には見えなくても、その衝撃がボティブロー(注1)のようにじわじわと効いて、やがて全身におよぶのはまちがいない。本をはじめとするドキュメント(注2)の領域にコンピュータが進出し、原稿の作成から流通にいたるまで、コンピュータが、多くの場面で大きなパワーを発揮するようになった。紙の本が消えて、デジタルのデータだけになることはとうぶんは考えられないにしても、本の世界は、致命的な一繋をまえにして固唾をのんで(注3)いる、そんなふうにも見える。
 いま起こっている本の革命は、長い時間をへて、どのようになっていくのだろうか。

(歌田明私『本の未来はどうなるか」中公新半による)


(注1) ボディブロー : ボクシングの技
(注2) ドキュメント : 書類
(注3) 固唾をのむ : どうなるのか心配して、息を止めている

(58) 本文に書かれている本の世界に起こった変化とは、どれか。

短文
(5)
 能力や適性は仕事の「前」にあるのではなく「後」に発見される。
 ある仕事が「できた」という事実が、自分にはその仕事を行う能カが備わっていたことをはじめて本人に教えてくれるのである。
 だから、上司が「この仕事をやってくれ」と命じたときに、「私にはそのような仕事を完遂する(注1)だけの能力がありません」という遁辞(注2)を述べることは就業規則で禁じられているのである。

(内印 樹 fひとりでは生き られないのも芸のうち』 文春文庫による)


(注1) 完遂する : 完全に行う
(注2) 遁辞 : 言い逃れの言葉

(59) なぜ、就業規則で禁じられているのか。

中文
(1)
 そこは、ぼくが東京に来て初めて入った食べ物屋さんだった。受験のために上京したぼくは、そば屋に入るのさえこわがっていたのだ。そして、すきっ腹をかかえて、やっととび込んだこの店で、恐る恐る壁に書かれた品目を見上げ、一番安いものを注文したのだ。あれから11年が過ぎていた。得た物も多い。だがその間に失くしたものも大きかった。
 「えっ? こんなとこに入るの?いやよ、あたし]
 硝子戸に手をかけたぼくに、連れの女は露骨に(注1)不快表情を向けてそういった。その女との結婚を考えをていたぼくは、急に心が冷めたように感じた。
ぼくはかまわずに戸を引いた。そのとき、ぼくの脳裏(注2)に高校生の娘の顔が浮かんだ。注文を受けた彼女は、数分後に申し訳なさそうな目をして、作られだ料理をぼくの前に置いたものだった。それを見て、ぼくは②全身に冷や汗をかいた。玉ねぎの薄切りが出ていたからだ。オニオンスライス。何かの飯だとぼくは思っていたのだ。
 「いらっしゃいませ」
 暖かい目をしたふくよかな(注3)女性が11年ぶりにぼくを迎えてくれた。

(高橋三千綱「心の風景] i中品り小説」 新潮文庫による)


(注1) 露骨に : 実際にあったとおり、少しもかくさないで
(注2) 脳裏 : 頭の中
(注3) ふくよかな : 少しふとっている

(60) ①ぼくはかまわずに戸を引いたとあるが、何にかまわなかったのか。

(61) ②全身に冷や汗をかいたのはなぜか。

(62) ③女性とは、だれのことか。

中文
(2)
 我々は生まれたとたんに身につけることばがある。それは多くの場合、両親のことばであり、祖父祖母、兄姉など肉親のことばであり、生まれたばかりのその人間を取りまく(注)周囲の人達のことばである。①これは標準語ではない。人間が生まれて初めて耳にし、覚える自然なことばは方言なのである。それが次第に成長し、広く社会に出ていくにつれて、自分の属する環境の中での共通語を身につけはじめる。「女ことば」「男ことば」の名で呼ばれる女性共通語、男性共通語。あるいは遊び仲間での共通語、「若者ことば」と呼ばれる若い年代層の間での年齢共通語、そして職業を同じくする者の中での職業共通語。
 つまり人間は、自分が生まれ育った環境の中で体得した最も狭い意味での家族方言、地域方言、環境方言に囲まれて成長し、次第に広がる生活環境の変化の中で、その状況に応じたきまぎまな共通語を身につけるようになる。しかし、ここまでのことばは、ある限られた領域の中でしか通用しないという意味では、すべて方言である。

(水原明人【江戸落・東京語・標準語」講談社現代新書による)


(注)取りまく:まわりを明む

(63)筆者はどうして、①これは標準語ではないと言っているのか。

(64)筆者の言う「方言」に入らないものはどれか。

(65)筆者の考えと合っているものはどれか。

中文
(3)
 人間が一番リラックスして話せるのは、斜め前に相手がいるときであるらしい。精神分析の創始者であるフロイドの診察室というのをウィーンで見たことがあるが、患者との椅子は寝椅子であり、フロイドは脇にある小さな椅子に座って、昨日見た夢とか、連想できる事柄などを患者から聞いていたという。患者からは自分の正面の壁や天井が見えるだけで、自分の話を聞いているフロイド先生の顔は見えない。ときどき返事をする声が聞こえてくるだけ。
 真正面に立たれると、人は圧迫感を感じて緊張してしまう。相手の顔が見えすぎるのは、あまり話しやすいことではない。語学教師は、学生に聞かせたいときには黒板の前の真ん中に立つ。少し楽しくきせたいなら、斜め前とか、教壇を隆りて低いところから話すようにする。ひとりひとりに自由に答えさせたいのなら、学生のそばの斜め前ぐらいに立つといい。そういうテクニックがある。
 したがって、デートのときにいいのは、斜め向かいに座ることである。できれば、お互いの身体の向きが90度から45度ぐらいになるように座るのがいい。相談事を聞くのもじっくりと話し合いたいときも、①そういう位置関係が、お互いに一番楽なはずである。

(金田一秀穂 [新しい日本語の予習法} 角川oleテーマ 21 による)

(66)フロイドが、脇にある小さな椅子に座るのはなぜか。

(67)語学教師のテクニックとして、正しいものはどれか。

(68)①「そういう位置関係」とは、どんな位置のことか

統合理解
A
 市内のコンビニエンスストアチェーンのALCマートは、今月20日から、お弁当などを購入した際に無料でサービスしていた割りばしを有料化したそうだが、私はこの有料化に賛成だ。そもそも森林を伐採して作られる割りばしを使うこと自体、環境破壊につながるし、使い捨ての割りばしは、ごみの量も増やす。特に、コンビニエンスストアなどで無料で配られる割りばしについては以前から問題だと思っていた。無料でもらえるので、割りばしを使って捨てることを繰り返しても何とも思わない人が増えてしまうのだと思う。割りばしが有料になったら、割りばしに対する意識が芽生えて、多くの人が家から自分のはしを持ってくるようになると思う。(20代学生)

B
 コンビニエンスストアで今月始まったという割りばしの有料化については、本当にそれが人々の意識を変えることにつながるのかという点で疑問を感じる。確かに地球環境保護のために、割りばしの使用量全体を減らすことは大事なことだ。しかし、割りばしの有料化により、環境への意識がもともと高い人たちは「できるだけ自分のはしを使うようにしよう」と思うようになるかもしれないが、そうでもない人たちは不満をかかえるのではないかと思う。私は、有料化よりも、今まで通り割りばしは無料で配り、「割りばし不要」の人にはカードを1枚あげ、それを集めた数に応じて何か商品と交換できる、などといった方法のほうが、ずっと効果があると思う。(40代半)

(69)AとBのどちらにも共通している考えはどれか。

(70)AとBは、「割りばしの有料化」について、どう思っているか

長文
 スピーチをするとき「ぜったいにあがる(注1)まい」と思うとよけいあがる。好きな人の前で、ふつうに振る舞おうとすればするほど、動作や言葉がぎこちなく(注2)なる。そういうことがよくある。懸命に努力しているのに、かえって結果がわるくなるのはなぜだろうか。
 それは自然に反するからである。たとえば人前でしゃべり慣れていない人は、あがって当然である、にもかかわらず「あがるまい」とする。自然の法則に逆らうから、かえって結果はわるくなる。これを「①努力逆転の法則」という。
 努力はただすれば報いられるものではなく、効果があるように工夫をしなければならない。ではどのように工夫するか。まず意志を捨てることである。「あがるまい」というのは意志だ。そのような意志をもってもあがるのは、意志とは別に「あがる自分」を想像しているからなのである。
 ( ② )。だからいくら強固な意志をもっても、心の奥底ではそれとは反対の自分を想像してしまう。そして想像のほうが勝ってしまうのである。
 意志をもつことは簡単だ。「きょうからタバコをやめよう]と思うのは意志である。意志をもつにいたった理由もきわめて理にかなっている(注3)。「タバコは健康によくない」「金銭的にもバカにならない」「他人を不愉快にする」「アメリカのエリートは吸わない」「やめれば女房も子供も喜ぶ」。これだけ立派な理由があって、確固たる意志を固めれば、やめられそうなものだ。
 だが一服する(注4)自分のリラックスした姿を想像したとき、もうタバコに手が出ているのである。いくら意志を強固にしても想像にはかなわない。他のことについても同じことがいえる。いくら努力しても結果の出ない人は、努力する意志があることはまちがいないが、想像でそれを台無し(注5)にしているのだ。
 人前であがらない最良の方法は「あがるまい」という意志を捨てることだ。あがって当然なのだから「きっとあがるだろう」でいいのである。ただし、そのあとでこう付け加える。「あがるけれども、きっとうまくいく」。これなら精神の緊張がほぐれるから、あがってしどろもどろ(注6)ながらも、人から好感をもたれる自分が想像できる。

(川北義則「計転の人生法則日からウロコが落ちる87の視点」PHP文庫による)


(注1)あがる:頭に血が上って、普通の状態でいられなくなる
(注2)ぎこちない:不自然で、なめらかでない様子
(注3)きわめて理にかなう:非常にあたりまえである
(注4)一服する:タバコを吸って一休みする
(注5)台無し:全部だめにして役に立たなくなる
(注6)しどろもどろ:話し方にまとまりがなく、ばらばらな様子

(71)「①努力逆転の法則」の例として合っているものはどれか。

(72)( ② )に入る文で最も適当なものはどれか。

(73)筆者がこの文章で一番言いたいことはどんなことか。

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