短文
(1)
 今の多くの若者にとって、 日本も自分も将来が見をない。 (中略)
 高校生へのグループインタビューの結果でもほとんどの生徒の上昇志向は皆無に等しい。将来の夢が「つぶれない会社になんとか潜り込むこと」であったりする。政権交代しても政治や経済がよくなることもない現実を目のあたりにしている若者が政治に関心をもてる道理がない。関心の行き着く先は自分とその周辺である。

(橋元良明 「メディアと日本人』 岩波新書による)

(55) インタビューでどのように答えた高校生が多かったと考えられるか。

短文
(2)
 まだ幼かった頃、近所の原っぱで紙しばいを見終えた後、夕ごはんに間に合うように走って帰った夕暮れの美しさは今も忘れない。あの頃、時間とか、自分をとりまく世界を、一体どんなふうに感じていたのだろう。一日が終わってゆく悲しみの中で、子どもながらに、自分も永遠には生きられないことを漠然と(注)知ったのかもしれない。それは子どもがもつ、本能的な、世界との最初の関わり方なのだろうか。

(星野道夫「『旅をする木」 文藝春秋による)

(注) 漠然と : ぼんやりと

(56) それとは何を指しているか。

短文
(3)
 おばあちゃんがケガをしたせいもあって、外出されなくなった。家にこもってばかりいずに散歩でもしたほうがいいと、周囲の者がいくらすすめても、おばあちゃんは耳を傾けようとされない。
 ところが中学1年生の孫娘さんが、「散歩しようヨ。(  )」と言うと、おばあちゃんは早速外出きれ、出会う人に対して、「孫にせがまれて(注)散歩しています」と生き生きとした表情で話されたそうである。
 「体にいいから散歩しなさい」とか、「散歩に連れていってあげようか」とかの言い方と比べると「(  )」という言葉のやさしさがよくわかるのである。

(河合信座『「老いる] とはどういうことか」 講談社+ a文庫による)


(注) せがむ : 熟心に頼む

(57) (  )の中に入る言葉は、次のどれか。

短文
(4)
 大学当時、毎日のように入り浸っていた美術部の部宇には、いろんな静物が置いてあり、暇があればキャンバス(注1)に向かっていた。描いてみればわかることだがりんごの質感は、空腹であればやわらかく感じられるし、そうでもなければつるんとして陶器(注2)のようにも見える。つまり「あるがままに」描くということは、対象ではなくむしろ自分のこころの状態を、キャンバスの上に再構成することなのである。ということは要するに、私にとって絵を描くという行為は、「自分とは何か?」を解明する作業に他ならなかったわけである。

(石湿 減・池谷瑠絵「ロボットは涙を流すか】 PHP サイエンス・ ワールド新書による)


(注1) キャンバス : 絵を描くための布
(注2) 陶器 : 土を材料にした焼き物

(58) 筆者にとって、「絵を描く」ことは、どんな意味があるのか。

短文
(5)
 日本人は、本質や人格が日に見える部分に表れるものだという感覚が強い。
 そのために、「私は男性を見るときに、まず傘と靴を見て判断する」などと言う人が出てくる。また、心理テストのようなもので社員の採用を決める会社もある。
 そういった語を「人を見る日があるな」などと感心して聞いているのは感心しない。私に言わせてもらえば、日常生活では誠実に制御している深層心理を暴き出して(注1)それを本質と見るなどというやり方はアンフェアだ。第一、持ち物や点数に頼るようでは、眼力がないことを露呈(注2)しているようなものだ。そうした偏った見方なり、安直な(注3)ペーパーテストなりをやめて、自分と相手との関わりから見るべきなのだ。

(斎藤着「眼カ」三移書房による)


(注1) 暴き出す : 隠しているものを探して出す
(注2) 露呈 : 隠れていたことを、わぎと表面に出すこと
(注3) 安直な : 安くて簡単な

(59) 筆者は、「人を見る目」とはどのようなものだと考えているか。

中文
(1)
 イヌは飼い主が「こっちへおいで」と呼べば、たいていはちゃんとやってくるが、ネコは①そんなことはない。いくら「おいで、おいで」といっても、ちょっとこっちを見るくらいが関の山(注1)で、さっぱり寄ってこようとはしない。
 ぼくの家にも5匹も6匹もネコがいたころ、春や秋の日曜日の昼には、庭の奥でバーベキューをすることがよくあった。するとまもなくネコたちはみんな家の中から出てきて、ぼくらのいる庭の隅にやってくる。けれどイヌのようにぼくらの足もとに寄ってくるわけではない。近くの物置の上や塀の上に、てんでに(注2)すわりこんだり、寝そべって(注3)ぼくらのほうを見ている。そして、②とても満足そうな顔をしているのだ。
 彼らは人間といっしょにというか、人間の近くにいたいのである。だからほくらが留守中のネコの世話を近所の知り合いに頼んで2日ばかり旅行に出かけようとしていると、非常に不安そうな様子になる。ぼくらの気配で何か察知して(注4)いるとしか思えないのである。

(日効族「ネコはどうしてわがままか]法研による)


(注1)関の山:それ以上は無理という限界
(注2)てんでに:思い思いに
(注3)寝そべる:横になる
(注4)察知する:外にあらわれた様子から感じとる

(60)①そんなことはないとあるが、ネコはどんな行動をとるのか。

(61)ネコは、なぜ②とても満足そうな顔をしているのか

(62)筆者は、ネコとは、どのような動物だと考えているか

中文
(2)
 われわれは、よく、「①体が覚えている」とか「手が覚えている」という言い方をすることがある。意識的にものを考えるときには、「頭を使う」という言い方をするように、頭、脳を使って考えるが、人の心の働きには、脳の活動だけで説明しきることのできないものがたくさんある。
 たとえば、記憶喪失になって、自分の名前や過去を忘れた人でも、車の運転は覚ていることがある。
 文字は手で覚えるというのも、よくいわれることだ。子供のころ、文字を覚えるのに、同じ字を何回も書かきれたという覚えは、誰しもあることだろう。
 そうして覚えた字は、忘れていても、書いてみると思い出せることがある。思い出してから書くのではなく、書くことによって思い出すということが起こるのだ。
 たとえば、人が書いた漢字を見て、まちがっているような気がするのに、どこがどういうふうにまちがっていると、はっきり指摘(注1)できないことがあったとする。そんなとき、②たいていの人は、その文字を紙に書いてみようとするのではなかろうか。
 手がちゃんと覚えていたら、頭で考えなくても正しい字が書け、人の書いた字と比べて、「あっ、ここが違う」と指措できたりする。逆に、妙に(注2)意識してしまうと、いつもは自然に書ける字が、かえって書けなくなり、思い出せなくなるときがある。

(区英一[操意識という不思議な世界」河出人房新社による)


(注1)指摘:取り出して示すこと
(注2)妙に:変に

(63)筆者が言う①体が覚えている例として、あっているものはどれか。

(64)なぜ②たいていの人は、その文字を紙に書いてみようとするのか。

(65)筆者がこの文章で一番言いたいことはどんなことか。

中文
(3)
 第二次大戦中、アメリカで、数百人の兵士が参加した大がかりの断眠(注1)の実験が行なわれた。
 断眠2,3日目から、いらいらしたり、記憶がわるくなったり、ひどい錯覚や幻覚がおこったりして、4日目ころには、①ほとんどの者が落伍して(注2)しまったという。レコードホルダー(注3)は、断眠8日と8時間で、まさに超人的である。
 実験がおわってから精密検査をしたところ、精神状態はヘんになっていても、身体にはどこも異常はなかったという。しかし、精神状態の異常は、ひと晩ぐっすり眠るとすっかり回復したが、2人だけは、数年間精神の異常に苦しんだということである。
 断眠は肉体にはほとんど影響をおよぼさないが、脳にはかなりの障害をおこすことが、この実験ではっきり証明されている。(中略)
 眠りは、呼吸や食欲や性欲と同じように、どうしてもかなえなければならない本能的な欲求である。
 頭が疲れたから眠るのだ、脳の疲労を回復するために眠るのだ、ということをよくきく。しかしこの表現は、およそ限りの本質をついていない。眠りとは、脳細胞がいつも活発に働きうる態勢にととのえるための準備工作である。腹がへったからたべるのではなく、肉体を健康に保ち、身体活動するために私たちはたべるのである。②これと同じように、脳を健康に保ち、明敏な(注4)精神活動をするために私たちは眠るのである。

(時実利彦「脳の話」岩波新書による)


(注1)断眠:睡眠を断つこと、寝ないこと
(注2)落伍する:脱落する
(注3)レコードホルダー:最高記録をもつ人
(注4)明敏な:活発な

(66)①ほとんどの者が落伍してしまったとは、どういう意味か。

(67)②これは何を指しているか。

(68)筆者がこの文章で一番言いたいことは、どんなことか。

統合理解
A
 人の生活スタイルは朝型と夜型に分けられる。朝型の人は気持ちよく日覚めて朝食をしっかり食べ、午前中から頭はフル回転(注1)でバリバリと仕事をこなすタイプ。夜型は、朝起きるのが苦手で朝食もとらずに出勤し、午前中は仕事の効率が上がらず、午後になってやっと活動を開始するタイプ。
 こう見ると、朝型のほうが仕事にも健康にもいいと思われるであろう。たしかに、健康面からは朝型にすべきだという意見が多い。しかし、仕事に関しては、最近出た研究結果によると、そうとも言えないようだ。人の脳を調べた研究からは、早い時間帯では朝型の人のほうが、脳の働きが活発だが、脳の持続性は夜型のほうが優れているということがわかったそうだ。それで、短時間で簡単にできる仕事が少なくなっている現代では、夜型人間が増えているようだ。
(注1)フル回転:使える限度まで使う、ここでは「(頭を)100%使う]という意味

B
 都市化が進むにつれて夜型の生活をする人が増えている。テレビの深夜番組や24時間営業のコンビニ、インターネットなどの普及によって、深夜も日中と同じように活動できる。今は、若い世代だけでなく50代以降の人々も夜型の人が多くなっているのが特徴だ。夜型生活をする人にその理由を聞いてみると、静かだし、人から用事を頼まれることもないから、夜のほうが集中できて作業がはかどる(注2)ということだ。
 夜より朝の頭のほうがすっきりしていて思考に適していると言われているが、日中は集中して一人で考える時間がとれない人が多い。夜型になるのは周囲との接触を最小限にした環境で集中して考える時間を求めた結果であるといえる。われわれ現代人は一人になる時間を必要としているのである。
(注2)はかどる:順調に進む

(69)AとBでは、現代は、どうして夜型が増えていると言っているのか。

(70)AとBが共通して芝っていることは何か

長文
 アメリカ人が日本人をどう見ているか、(中略)意識調査をやってみたことがあります。
 アメリカ西海岸の高校生たち、南部の主婦たち、シカゴあたりの労働者たちなど。つまり、アメリカの地域と階層や年齢を組み合わせて全米何カ所かで、日本人についてのVTRを見てもらいながら調査しました。日本人がいたら日本人の悪口は言わないだろう、ということで我々は表面に出ず、アメリカ人の心理学者たちなどのスタッフでやったのです。
 で、日本人は物静かで、勤勉で、メイド・イン・ジャパンの品物はいい、というとても高い評価が出ます。ひと通りそれが終わったところで、「では、日本人を動物にたとえるとどんなイメージですか?」と聞く。日本人がよくたとえられるのは狐ですが、この調査ではそれは少なかった。ワニとかリスというのが出できた。「なぜその動物をイメージしたのですか?」と質問を重ねる。(中略)
 なぜリスか。リスというのは自分が必要以上の餌を集めては、木の穴に溜め込む。日本人はとにかく( ① )。そういうイメージだと。ワニは静かで何も言わないけれど、あるときパッと襲ってきそうなイメージがあると。ポジティブ(注1)に言えば勤勉、ネガティブ(注2)に見れば働くだけで人生を楽しむことを知らない人たち。
 つまり、大事なことは、良く言えばこうなんだけど悪く言えばこうなる、と全部裏表があり得るんだということ。②これは日本人に限らずすべての評価について言えることだと思います。(中略)
 私たちは誰でも、日本人についての自己イメージというものをもっています。自分のことはなかなか分からないのに、自分がこうだと思い込んでいる部分というのは、個人にはいっぱいあります。まして集団になると日本人はこうだ、とさらに強く思い込むところがあります。
 しかし一番大事なことは、日本人がずっと変わらず、同じような傾向をもっているのかどうか。つまり、民族も人問も変わるんです。変わっているにもかかわらず、前のイメージに自分を固定させてしまっている恐れというのがあります。

(筑健世也若き友人たちへ}集英社新草による)


(注1)ポジティブ:ここでは、「良く」
(注2)ネガティブ:ここでは、「悪く」

(71)( ① )に入る文はどれか

(72)②これは、何を指すか

(73)筆者が言っていることと同じものはどれか。

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海山市の外国語による相談窓口を示したものである。
(74)中国から来日した王さんは6歳の子供を学校に入れたいと思っている。どうしたらよいか。

(75)ブラジルから来たマリオさんは職場でトラブルがあり、ポルトガル語で相談したいと思っている。どうしたらよいか。