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昼に活動するジョロウグモの巣は、いつも白いように思われます。それも、秋になると太陽光の加減で縦糸は少し黄ばんで見えます。しかし、巣の細い糸を見ても正確な色を判別することは難しいのです。そこで、本当はどのような色をしているのかを確認するために、巣の縦糸と同じ腺
(注1)から分泌される
(注2)牽引糸
(注3)の色を調べることにしました。
多量に集めた牽引糸の可視光
(注4)の吸光スぺクトル
(注5)を調べると、ジョロウグモが幼体
(注6)から成体
(注7)になるまでの春から夏にかけては白色を示しますが、秋に成熟するとはっきりと黄金色を示すことがわかりました。ジョロウグモの巣の糸の黄色化の理由は、秋になって環境が紅葉化するための保護色の可能性が考えられます。つまり、クモの巣の色が周囲の色と似ていることで、昆虫が巣を認識できずに①
捕獲されやすくなることを意味しています。一方、夜に活動するズグロオニグモの牽引糸を調べた結果、春から秋にかけてずっと白色のままでした。これは、夜に活動するズグロオニグモにとっては色が必要ないためと考えられます。
(大崎茂芳『クモの糸の秘密』岩波書店による)
(注1)腺:物質を作ったり、出したりする器官
(注2)分泌される:出される
(注3)牽引糸:クモの糸
(注4)可視光:目で見える光
(注5)吸光スぺクトル:光の吸収を表すグラフ
(注6)幼体:子をつくれるほど成長していない生物
(注7)成体:子をつくれるぐらいに成長した生物