(2)
A
月刊『文芸いろは』連載中(注1)から読者に絶賛されていた(注2)『R』が、ついに全3巻の単行本ほとなった。
物語はまず、沖縄返還(注4)の交渉のかげで、日本とアメリカの間で密約(注5)があったというところから始まる。その情報を流した外務省の職員と情報を得た新聞記者が、のちに罪を問われる。
長期取材による大量の証言と資料を得た同著は、政治や新聞社の裏側を細部まで再現し、読者の真実を知りたいという願望を十二分に満たす傑作である。また、登場人物の心の動きや沖縄の様子が生き生きと描かれていて、読者を小説の世界にぐんぐん引き込む。
B
久々の長編である『R』もベストセラーとなった。来春にはドラマ化も決定している。
沖縄返還時に日米間で密約があったということが、主人公の新聞記者を通して世間に広がってしまう。外交問題から、徐々に新聞記者と情報源の人物との男女関係に移っていく。
徹底した取材と多くの資料をもとに書きあげられた本書を読み、著者の真実を追い求める姿勢に感動を覚えた。沖縄は私の出身地でもあり、また、主人公の新聞記者という職業も、ジャーナリストの私にとって非常に身近に感じられ、情景が目に浮かび、緊迫感が手に取るように伝わってきた。ただ、沖縄返還のシーンの描き方があまりにもありきたりだったことが、残念であった。
(注1)連載中:続けて載せている間
(注2)絶賛されていた:非常にすばらしいと、ほめられていた
(注3)単行本:雑誌やシリーズで出る本ではなく、独立した一冊として発行される本
(注4)返還:元のところや持ち主に戻すこと
(注5)密約:秘密の約束