短文
(1)
 あなたは本をどのように読んでいますか。読みたい本がたくさんあるから、できるだけ速く読もうとしていませんか。忙しい時間の合間にささっと読書を済ませようとしていませんか。本を食べ物に例えるならば、読書は、私たちの頭や心に、知識や想像力といった栄養を与えてくれるものだと思います。情報があふれ、スピードが重要といわれる時代ですが、そんなめまぐるしい生活の中だからこそ、食事をゆったりと楽しむように本を味わいたいと思いませんか。

(1) 筆者は、読書はどうあるべきだと言っているか。

短文
(2)
 従来の見方では、縄文晩期から弥生時代にかけて(注1)稲作が日本列島にわ
たってきてからの列島社会は、基本的に農業、稲作を中心とするようになり、海によって周囲から隔てられた(注2)島々の中で、自給自足の生活を営む孤立した社会であった、と考えられてきたと思います。しかし、この常識的な見方はじつはまったく偏っており、こうした日本列島の社会像は誤った虚像(注3)であるといわなくてはなりません。
 まず、海によって周囲から隔てられた島々というのは、ことの一面のみをとらえた見方です。たしかに海が人と人とを隔てる障壁の役割をすることのあるのは、もとより事実ですが、しかし、それは海の一面で、海は逆に人と人を結ぶ柔軟な交通路として、きわめて重要な役割を果たしていたことも間違いありません。

(網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』筑摩書房による)


(注1)縄文晩期から弥生時代にかけて:紀元前11〜3世紀ごろ
(注2)隔てられた:空間的に離された
(注3)虚像:実際とは違う姿

(2)筆者は、昔の日本列島はどのような社会だったと言っているか。

短文
(3)
 マーケティング・マネジメントは、一筋縄ではいかない(注1)。なぜなら企業経営者やマーケティング担当者が、こうしたいと思っても、市場(生活者や歳客)は思うようには動かないからだ。資源を費やした新商品があえなく失敗し、他社を真似て発売した商品が大ヒットする。時間をかけて総力をあげて展開したキャンペーンが失敗し、生活者の口コミ(注2)の中で静かに広がった評判がその商品を救う。思惑(注3)と異なることがつねに起こる。そこが、対組織内部のマネジメントと対市場のマネジメントの一番の違いだ。つまり、経営者やマーケタ一(注4)の意のままにはならない市場を相手にする、これがマーケティング・マネジメントの難しさの根源にある。

(石井淳蔵『マーケティングを学ぶ』筑摩書房による)


(注1)一筋縄ではいかない:簡単にはできない
(注2)口コミ:うわさや評判が人のロからロへ伝えられること
(注3)思惑:予想
(注4)マーケタ一:マーケティングの担当者

(2)筆者は、昔の日本列島はどのような社会だったと言っているか。

短文
(4)
 進化とは、生物が時間とともに「変化」していくことであって、その変化は必ずしも「進歩」であるとは限りません。第一、「進歩」という言葉には、悪いものから良いものへという価値観が入っていますが、なにが良くてなにが悪いのでしょう?「下等動物」・「高等動物」という言い方は、細菌のように、からだの体制が単純で神経系も簡単な作りをしているものを「下等」と言い、サルのように、からだが複雑で神経系がよく発達しているものを「高等」とする価値観に基づいています。そして、この考えではもちろん、もっとも高等ですぐれた存在が「人間」ということになります。

(長谷川真理子『進化とはなんだろうか』岩波書店による)

(4)筆者は、「進化」と「進歩」をどう考えているか。

短文
(5)
 谷中教授らは花粉症(注1)のマウスに、1日約10グラムのバナナを3週間与え、通常のエサを与えたマウスと比較した。その結果、バナナを食べたマウスは、アレルギ一を引き起こす物質の量が通常食のマウスの半分以下に減り、花粉症になると増える白血球(注2)の一種「好酸球」の数も、正常マウスと同レベルまで減少していることがわかった。谷中教授は「マウスにとっての約10グラムは人間では3〜4本に相当する量だろう。人でも症状が軽くなるかを調べたい」と話している。

(「バナナで花粉症改善?マウス実験で効果」2010年12月14日付け読売新聞による)


(注1)花粉症:植物の花粉が鼻や目に入って、鼻水が出たり、目かゆくなったりするアレルギー
(注2)白血球:体内に入ったウイルスなどをやっつける、血液中の細胞

(5)この実験について、正しいのはどれか。

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(1)
 博物館には、古今東西(注1)の様々な品物が展示されている。鑑賞のしかたは人それぞれだろうが、私は、展示品の前に立つとそれが使われていた時代へ行ったような気分になる。
 これらの品々がもともとどのように使われていたのか、どこにあったのかということが頭に浮かぶのだ。生活の中で使用されていた工芸品だったら、細かいことも想像しやすい。例えば重厚な茶碗だったら、誰がどのように使っていたのか。身分の高い人が招かれる、優雅な茶会の様子が思い浮かぶ。美しい絵で彩られた大きな花瓶だったら、どんな屋敷を飾っていたのか。複雑な模様が織り込んである着物だったら、どんな人が着ていたのか。展示品は、それを見ている私たちを別の世界へと連れて行ってくれる。
 何度も博物館に通ううちに、私は、展示品をただ鑑賞するだけではもの足りなくなってきた。例えば、なぜその絵皿には雪の模様が描かれているのか。そこには作り手の気持ちが込められているはずである。のちに、雪は吉兆(注2)を表すものだということを知った。①このようなことがわからないと、その時代にこの絵皿を使用していた人の気持ちまでは想像できないのだ。それで、私は博物館で売られている解説書を買って読んだり、図書館に通ったりするようになった。
(注1)古今東西:昔から今まで、いろいろな地方
(注2)吉兆:良いことが起こりそうな知らせ

(6)①このようなこととは、どんなことか。

(7)筆者は、どういうことに満足できなくなったか。

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(2)
 現代人は大衆の中の一人ではなく、名前がある個人として認められると、自分の存在が尊重されたと自尊心(注)が満たされ、私は大切にされていると、喜びを感じます。
 「お客様を名前で呼びましょう」と教育している店が多いです。クレジットカードやメンバーカードの使用で名前がわかるので、その時点からは「お客様」でなく、「〇〇様」と個人名で呼ぼうというものです。(中略)
 筆者はレジでクレジット払いをしたときに、「小林様、いつもお買い上げありがとうございます」と言われると、その店の上得意(注2)になったようで、ちょっと優越感(注3)を感じます。接客をしてくれた、私は名前を知らない応対者から自分の名前を呼ばれると、急に親近感がわき、相手に優しい気持ちを持つようになります。
 しかし名前で呼びかけられて困ることもあります。夜や土日を中心に買物に行くOLと異なり、私は近所のショッピングセンターへ曜日、時間に関係なく出かけます。平日の昼ごろ顔なじみ(注4)の従業員が私を見つけると「あら〜小林さん、こんな時間にどうしたの?休み?」と声をかけてきます。エスカレー夕脇で私の仕事の事情を話すつもりもなく、あたふたします(注5)。せめて「小林さん、こんにちは」でやめて欲しいなぁと気弱に願い、平日の昼間はドキドキしながら店に行っています。

(小林作都子『その話し方がクレームを生む』日本経済新聞出版社による)


(注1)自尊心:自分を大切にする気持ち
(注2)上得意:店にとって大事な客
(注3)優越感:自分がほかの者より優れていると感じること
(注4)顔なじみ:よく会うので顔を知っている人
(注5)あたふた:落ち着きをなくし、あわてる様子

(8)筆者は、商品を買ったとき店員に名前で呼ばれると、どのように感じると言っているか。

(9)この文章で筆者が言いたいことは何か

中文
(3)
 昼に活動するジョロウグモの巣は、いつも白いように思われます。それも、秋になると太陽光の加減で縦糸は少し黄ばんで見えます。しかし、巣の細い糸を見ても正確な色を判別することは難しいのです。そこで、本当はどのような色をしているのかを確認するために、巣の縦糸と同じ腺(注1)から分泌される(注2)牽引糸(注3)の色を調べることにしました。
 多量に集めた牽引糸の可視光(注4)の吸光スぺクトル(注5)を調べると、ジョロウグモが幼体(注6)から成体(注7)になるまでの春から夏にかけては白色を示しますが、秋に成熟するとはっきりと黄金色を示すことがわかりました。ジョロウグモの巣の糸の黄色化の理由は、秋になって環境が紅葉化するための保護色の可能性が考えられます。つまり、クモの巣の色が周囲の色と似ていることで、昆虫が巣を認識できずに①捕獲されやすくなることを意味しています。一方、夜に活動するズグロオニグモの牽引糸を調べた結果、春から秋にかけてずっと白色のままでした。これは、夜に活動するズグロオニグモにとっては色が必要ないためと考えられます。

(大崎茂芳『クモの糸の秘密』岩波書店による)


(注1)腺:物質を作ったり、出したりする器官
(注2)分泌される:出される
(注3)牽引糸:クモの糸
(注4)可視光:目で見える光
(注5)吸光スぺクトル:光の吸収を表すグラフ
(注6)幼体:子をつくれるほど成長していない生物
(注7)成体:子をつくれるぐらいに成長した生物

(10) ①捕獲されやすくなるとあるが、何が何に捕獲されるのか。

(11)この文章の内容と合うものはどれか。

中文
(4)
 これは私自身の経験ですが、私は全国の江戸時代(注1)の古文書を仕事の必要から見ており、それを読んで筆写をしたりしていたのですが、ごく最近ふっと、なぜ自分が九州の文書を読めるのだろうかと疑問がおこってきたのです。
 つい四、五年前、鹿児島(注2)にいったときのことでした。バス停で五分ほど待っているあいだ、隣にいたお年寄り二人が、楽しそうに笑いながらいろいろな話をしているので、何を話しているのかなと思って、なんとなく耳を傾けて理解しようとしたのですが、何を話しているのかまるっきりわからない。もちろん単語ぐらいはわかるのですけれども、なぜこんなに楽しそうに話しているのかという文脈は、まったく理解できなかったのです。
 その経験が文書を読んでいるときにふっと重なって、どうして自分は全国の文書を読むことができるのだろうということ自体を不思議に思ったわけです。
(中略)
 つまり日本の社会の場合、文字社会、文書の世界は非常に均質(注3)度が高い。これにたいして、無文字の社会、口頭の世界は、われわれが考えているよりもはるかに多様だということなのです。ですから均質な文字社会の表皮をはがしてしまうと、じつはきわめて多様な民俗社会(注4)が姿を現すということになる。①日本の社会はいまも決して均質ではないのです。

(網野善彦『日本の歴史をよみなおす(全)』筑摩書房による)


(注1)江戸時代:1603年から1867年までの時代
(注2)鹿児島:九州の地名
(注3)均質:どの部分も同じ性質であること
(注4)民俗社会:一定の生活習慣や生活文化を持つ社会

(12)筆者は、文字の世界と口頭の世界について、何と言っているか。

(13)①①日本の社会はいまも決して均質ではないとは、どういうことか

統合理解
相談者:
 夫が歯医者になりたいと言い出しました。仕事を辞めて大学に通い直したいそうです。そのための貯金はしてあるとのことです。夫の今の仕事がうまくいっていないとか、嫌いな仕事だというわけではないので、なぜ今になってそんなことを言うのだろうと驚いています。また、今は歯医者になっても仕事があるかどうかわからないと聞いたことがあるので心配です。ただ、自分の好きな仕事をしたほうが後悔しないと思うので、夫を応援したい気持ちもあります。

回答者:A (歯科医)
あなたのおっしゃるとおり、今は歯医者が余っています。希望する土地で仕事が見つかるかどうかわかりませんし、歯医者になる試験は簡単ではないので、大学を卒業しても一回で合格するとは限りません。また、貯金があるとは言っても、お金の不安はあるでしょう。そんな状況で何年も彼を応援できるでしょうか。彼の考えは甘いと思います。今の仕事に問題はないのなら、それを続けるほうがいいのではないでしようか。

回答者:B (弁護士)
 彼は大学に通い直すために貯金をしていたのですね。すごいと思います。でも、どうして突然歯医者になりたいと言い出したのでしょう。貯金を始めるときに話してもらいたかったですよね。貯金のことをだまっていた理由を聞いてみたらどうですか。彼が将来のことをきちんと考えていたとしても、あなたに内緒で貯金をしていたのは、あなたを不安にさせる材料として十分です。正直な気持ちを彼に伝えて、よく話し合ってみてください。

(14) 「相談者」が述べた内容と合うものはどれか。

(15)AとBについて、正しいのはどれか

長文
 読解力の第三のポイントは、文章の内容についての背景知識です。政治、経済、社会、科学、スポーツ、芸術など、文章のテーマそのものに関わる知識です。こういった背景知識も、これまでの国語の授業では、ほとんど取り扱われてきませんでした。
 「先入観(注1)を排除して文章を読め」という原則を貫く(注2)ならば、文章の内容自体についての予備知識は、不要であるどころか、客観的・論理的な理解を妨げる障害になります。現代国語の参考書の中には、論理的思考力さえあれば文章の内容についての知識は必要ないと言い切っているものもあります。
 たしかに、現代国語のテストは文章の読解力、表現力といった「国語力」を純粋に試すものですから、そのなかで文章の内容に関する背景知識を要求するのは邪道(注3)かもしれません。しかし、まったく予備知識を持たずに文章を読むことは不可能です。排除しようと思っても、何らかの先入観が入り込んできます。
 かりに何の予備知識・先入観も持たない人がいたとすると、その人は、文章で言われていることがどういう位置づけになるのか、たとえば過破な意見なのか穏健な(注4)意見なのかも分からず、結局、文章の内容は頭に残らないことになります。
 この意味で言うと、本当に必要なのは、「先入観を排除して読む」ことではなく「バランスの取れた先入観を持って読む」ことです。ただ、バランスが取れていれば、それは「先入観」ではなく、したがって「バランスの取れた先入観」というのは矛盾した言い方なのですが、ここで言いたいのはこういうことです。
 さまざまな問題に関してさまざまな論じ方がある、そのことを具体的な知識として把握したうえで、その知識を①いったん脇に置いて、先入観を排除して問題文に接する。それによって、たんに形式的な論理的思考力に頼るだけでは得られない、内容についての②実のある理解ができるのではないか、ということです。
 もちろん、どんなテーマの文章を読むのかによって、必要な知識は違ってきます。しかし、新聞や雑誌の論説-評論にせよ、新書(注5)や教養書にせよ、現代社会を生きる私たちにとって「読解力」が問題になる場面で問われている背景知識は、一言で言ってしまうと、「近代」というものに対する理解につきます(注6)

(三上直之『「超」読解力』講談社による)


(注1)先入観:初めに持ったまま、固定した見方
(注2)貫く:絶対に変えない
(注3)邪道:望ましくないやり方
(注4)穏健な:おだやかな
(注5)新書:手のひらぐらいのサイズの本
(注6)つきます:一番重要である

(16)①いったん脇に置いてとは、どうすることか。

事実のより正確な理解

論説や評論を読むといい練習になる

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(19) 学生〈26歳)のAさんが1年間第4駐輪場を利用する場合、最も安い利用料金はいくらか。

(20) 申込手続ができないのはどれか。