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 ヒトが他の動物と最も異なっている点として、⽕が使えるということが挙げられる。⽕によって、ヒトは他の動物から⾝を守り、夜間に活動することも可能になった。
 ⼈類が⽕を⼿に⼊れたのは、約100万年前のことだと推定されている。⽕の利⽤でその後の⼈類の進化に⼤きな影響を与えたのは、料理ができるようになったことであろう。当時、ヒトが⾷べられる⾷材の種類は⾮常に少なかったが、⽣で⾷べられないものを煮たり焼いたりすることで、次第にそれは増えていった。
 ①料理して⾷べることは、ヒトの⾝体に変化をもたらした。例えば、ゴリラは主に植物を⾷べているが、⼗分な栄養を取るためには1⽇に⼤量の植物を⾷べなければならない。⽣の植物は固いので、それをかむためにはほおの筋⾁を強くする必要があった。その影響で、脳を覆う頭蓋⾻(注1)はあまり⼤きくならなかった。⼀⽅、ヒトは、調理されて柔らかくなった⾷物を⾷べるようになり、⻭やあごは⼩さく、⾷べ物をかむための筋⾁は弱くなっていった。その反⾯、頭蓋⾻は⼤きくなり、のどの発声器官も発達したと考えられている。このように、⼈類は⾝体を発達させ、思考や⾔語を⼿に⼊れることができたのだ。
(注1)頭蓋⾻︓頭の⾻

(1) 筆者は、⽕を使うことによって⼈類は何ができるようになったと⾔っていますか。

(2)①料理して⾷べることは、ヒトの⾝体に変化をもたらしたとして、筆者が挙げていることは何か。

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 「〜道」と名の付くものはいろいろありますが、私が数年前から習っているのは茶道です。ちょっと苦い緑の粉を、決められた作法(注1)に従って味わい、楽しむ。茶道のけいこは、⾃宅で気楽にいれたお茶を飲むのとは違った時間の流れるひとときです。⽇常にない、独特なほどよい緊張感が、気持ちをリフレッシュさせてくれます。
 お茶の先⽣に聞かれたら怒られてしまうかもしれませんが、作法というのは、やはり⾯倒なものでもあります。茶道の魅⼒は、茶室に流れる⾮⽇常的感覚だけではありません。お抹茶の⾊や味や⾹りだって、魅⼒の⼀つです。このおいしい薄緑を、もっとカジュアルに楽しめないものか・・・。仕事の休憩時間にお抹茶がいただけたら、どんなにリラックスできるだろうか。・・・。
 そこで私は、最近ある⼯夫をしています。茶道の道具を、すべてオフィス⼾棚に置いておくのです。職場でさっとお茶を点て(注2)、薄緑の魅⼒を仕事仲間と共有。以前は普通のお茶の葉っぱを職場に置いておいたのですが、お抹茶なら葉っぱを捨ててたりしなくていいので、便利だということに気づいてからは、①この⽅法にはまって(注3)います。お抹茶は飲み物なのですから、おいしく飲めることが⼤事に決まっていますよね。
(注1)作法︓物事の決まったやり⽅
(注2)お茶を点て︓お茶をつくって
(注3)はまって︓熱中して、⾃分の好みにぱったり合って

(1)①この⽅法とは、どんな⽅法か。

(2) 筆者が抹茶を楽しむうえで最も重視しているのは何か。

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 ⽚⼿に荷物を持っていたり、⾃転⾞のハンドルを握っていたり、傘をさしていたりして、⽚⼿がふさがっている(注1)とき、ろう者はもう⼀⽅の⼿だけで話をします。また、⾃転⾞を運転しているろう者が、⽚⼿でハンドルを握り、⽚⼿で⼿話を話すことがあります。ちなみに、後部座席のろう者の返事は、ミラーで⾒ています。
 ⼿話には、その語や⽂の特徴が何重にも(注2)お織り込まれて(注3)注3)いて、⼀部分が⽋けても全体を理解することができるという特徴があります。これを冗⻑性と⾔いますが、①その性質のおかげで、両⼿による百パーセントの表現でなくても、⾒て分かるのです。もちろん、そのときに、⼿話特有の表情や視線、⼝の形や働きなど、⼿以外の要素が必要な役割をもっています。
 ときには、⽚⼿すら使わず、表情だけで会話が進んでいくことがあります。視線をチラリと(注4)向けるだけで「ほら、あの⼈・あそこ」と⾔ったり、ほっぺたの内側を⾆でこすって「ウソだよ」といったりするなどです。両⼿に荷物を持っているときなどは、アゴを引いてまゆ眉を上げ、相⼿をじっと⾒ることで「ほんとに︖・え︖」と聞き返したり、(パ、パ)と⼝を開いてうなずくことで「終わった」と答えたりします。
(注1)ふさがっている︓ 空いていない
(注2)何重にも︓いくつも重なって
(注3)織り込まれて︓(⽷で模様を作るように)いろいろなものが⼊って
(注4)チラリと︓ ⼀瞬

(1)①その性質は何を指しているか。

(2)ろう者が、コミュニケーションの際に⼿を使えないときに、使わないものはどれか。

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 読者諸兄(注1)の中には経済問題には詳しい⽅がたくさんいらっしゃると思いますが、服の⾊と景気には密接な関係があるという事をご存じでしょうか。
 以前、ある研究所が⻑年にわたって調査してきたデータを拝⾒したことがあります。それは、服の⾊と⽇本の景気との関係性を調べたデータでした。街を歩いている⼈の中で、⿊い服を着ている⼈の出現率(全⾝真っ⿊でなくても、1枚でも⿊い服を着ている⼈の割合)が⾼い時は不景気であり、低い時は好景気であるというものです。
 私は昨年2⽉のこのコーナーで、「今年は不景気だから⿊が流⾏る」と書きましたが、①⾒事昨年の秋冬ファッションは「⿊」に占領された(注2)ぐらいの勢いで流⾏していました。実際に昨年の秋冬は⼼理的な不景気感のピークだったのではないでしょうか。(中略)
 今はどうかと⾔うと、ギャルと⾔われる若いおしゃれコンシャスな(注3)⼥性達のファッションが明らかに変ってきました。 ⿊が減って⽩やベージュ、⽩地に花柄プリント等、⿊ではない⾊が増えてきています。
 ギャルと不景気はあまり関係ないのではないかと思われる⽅も多いでしょうが、そうでもないのです。
(注1)読者諸兄︓読者の皆さん
(注2)⿊に占領された︓⿊ばかりになった。
(注3)おしゃれコンシャスな︓おしゃれを強く意識した。

(1)①⾒事は、何のことをいっているか。

(2) 筆者は、今の景気はどうだと考えているか。

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 ⽇本伝統のなかにはたしかに議論をする習慣がない。議論が下⼿です。だいたいみんな同じ意⾒になるのがいいと思い、意⾒の違う⼈は敵だとなりがちです。
 ⽇本の共同体の伝道にはいい⾯と悪い⾯がある。みんなが協⼒して同じ⽬的を追求するために、⾃分だけを主張しないのはいいことでしょう。他⽅では、どうしても意⾒の違う⼈が村⼋分(注1)にされる。意⾒の違うを受け⼊れることがなかなかできない。それがもっと極端(注2)になると、意⾒を表明すること⾃体がそもそもあまり望ましくないということになります。したがって、論争しない。論争すると敵・味⽅になる傾向が強い。これはわるい⾯です。
 ヨーロッパ会社では論争が多い。⽶国でも⽇本よりは多い。それはあらゆるところにあらわれています。たとえば英国の放送局BBCが、政治問題に限らず、どういう問題でも座談会(注3)みたいなことをするときには、みんな異なる意⾒をもってかなり激しい論争をします。論争というのは相⼿を怒鳴りつけることではなくて、⾃分の議論を展開して、これこれしかじかの理由でこう考えるという主張をすることです。反対側の⼈もそう⾔って、お互いに根拠を挙げて意⾒を戦わせる。⽇本のTVの座談会では、だいたいみんな同じことを⾔うか、怒鳴りあうかどちらかになる。
(注1)村⼋分︓仲間に⼊れないこと
(注2)極端︓普通の程度から⼤きくはずれていること、偏ること
(注3)座談会︓座って話し合いをする集まり

(1)筆者は、「論争」とはどのようなものだと説明しているか。

(2)筆者は、⽇本の共同体の伝統にはどんな⽋点があると⾔っているか。

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 怒りは、喜びや悲しみと同じように、⼈間の基本的な感情として、その働きやメカニズムが研究されてきた。最近では、⼈間の健康を害するものという観点からも捉えられるようになってきている。例えば、怒りと⼼臓病な関係について検討した研究によれば、⾼⾎圧を伴う⼼臓病の患者には怒りやすい性格の⼈が多いという傾向があるそうだ。また、怒りという感情が神経や免疫(注1)システムに影響を与え、それが⼼臓病になるリスク(注2)を⾼めているのではないかという報告もある。
 怒りと健康の関係が注⽬されるようになったのは、病気に対する社会の考え⽅が変ってきたからだろう。⾼齢化により、社会全体で負担する医療費の問題もばかにならなくなってきた。患者個⼈だけではなく、国や保険会社が負担する医療費も増えてきたのだ。これを抑えるためには、病気を予防することが⼀番である。⾷事や睡眠といった⽣活習慣に気を配すことで病気を予防することは良く知られているが、現代ではさらに、様々な研究結果から、個⼈の性格や考え⽅の傾向といった⼼理的要因も健康に影響することがわかってきた。こうして、⼼理学や医学の分野において、怒りという感情と健康の関連性を考えるようになってきたのである。
(注1)免疫︓体内に⼊った病気の菌などに、体が⾃然に抵抗すること
(注2)リスク︓危険

(1)筆者が、怒りは健康に影響を与えると⾔っている理由は何か。

(2) 筆者が、怒りと健康の関係が注⽬されるようになったのはなぜだと⾔っているか。

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(7)
 警察庁によると、刑法犯(注1)で逮捕、書類送検(注2)などされた少年少女は近年減少傾向にあり、2009年は前年比0.8%減の9万282人。少子化の影響もあってピークの1983年の半分ほどになった。しかし、一方で、再び罪を犯す再犯率は98年から右肩上がりで増え続け、09年は過去最高の31.3%に達した。不良グループとの付き合いが続き、きちんとした生活を築けないまま再び非行に走る(注3)ケースが目立つという。
 各警察はこれまで、少年側から持ちかけられたほ(注4)場合は相談相手になるなどしていたが、今後は①受け身の姿勢を改め、「出前型」と称して(注5)積極的に関係をもつよう方針転換する(注6)。問題が残り、将来に不安を感じるケースについて、保護者らの了解を前提に、所轄署(注7)の少年担当の警察官や地域のボランティアらが連絡をとる。保護者と相談した上で「学校を休まず通えるようになる」「まじめに仕事を続けるようになる」といった目標を設定。電話やメール、家庭訪問などを通じて励まし、相談に乗るという。また、他の人からほめられたり感謝されたりする経験が立ち直りのきっかけになるとして、ごみ清掃などのボランティア活動や老人ホームへの慰問(注8)にも誘う。

(五十嵐透「少年の再犯防止へ『脱^受け身』警察官が個別サボート」
2010年12月16日付けasashi.comによる)


(注1)刑法犯:法律に違反する犯罪を行った犯人
(注2)書類送検:事件について調べた書類を裁判のために送ること
(注3)非行に走る:少年や少女が、社会のルールや法律に違反するようになること
(注4)持ちかけられた:話を受けた
(注5)称して:名前を付けて
(注6)方針転換する:目標ややり方を変える
(注7)所轄署:その地域を担当する警察
(注8)慰問:見舞いをして元気づけること

(1)①受け身の姿勢とは、どのようなことか。

(2)再犯を防ぐために、警察が積極的に力を入れるようにしたことは何か。

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(8)
 じつは、私たち自身も見えていないことに気づかないことがある。「見えないことに気づかない」というのは、ごくふつうのことなのだ。  たとえば、この本を読んでいるときの眼球運動。改行して次の行の文章を読むとき、私たちの頭の中では、①あたかも文章がつながっているかのように感じている。しかし、行の最後と次の行のはじめとは距離がある。この距離はどこに飛んでいってしまったのだろう。
 読書中の眼球運動を実際に計測してみると、ふつうに文字を読んでいるときは読みの速さに合わせたゆるやかな眼球運動が、そして改行のところで、非常に急速なサッケ一ドと呼ばれる眼球運動がおこっているのが観察される。
 重要なことに、サッケ一ド中、眼に入った映像は見ることができない。もし見えたとしたら、あまりにも速い眼球の動きに、本を読む前に気もち悪くなってしまうことだろう。サッケ一ド中の映像だけ切り捨てられ、サッケード前後の映像がつな
ぎ合わされて見えているのだ。
つまり、眼に入った映像すべてが見えているわけではないのである。

(山ロ真美『視覚世界の謎に迫る脳と視覚の実験心理学』講談社による)

(1) ①あたかも文章がつながっているかのように感じているのはなぜか。

(2) この文章の内容と合うものはどれか。

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(9)
 なかなか考え込む性質にあるので、生きることをしんどい(注1)と思うことも多い。
 こういう自分が今こうやって生きているのは、大袈裟にではなく、小説のおかげだと思っている。人によっては、それが素晴らしい漫画であったり、演劇であったり、音楽だったり、映画だったりもするだろう。
 僕は常に空腹であるように言葉を求めて、その言葉を自分の中に入れ、そこから自分なりに考え、言葉によって自分を守るように生きてきた。それは何も僕に言語のセンスがあったとか、頭が良かったとかいうわけではなく、わからないものは繰り返し読んできたからである。学生の時は、背伸びして色々なものに触れた。①そうしないと、逆に生きていけない気がした。
 学生の自殺の報道や、破滅(注2)を選んでしまう人達の報道を見る度に、色々思う。人生に絶望を感じるのは仕方ないと思う。誰もが明るく生きられるわけではない。家族も友人も学校も会社も助けにならない場合、しかしこの世界には、文化というものがある。文化は、すべての人間に対して、平等に開かれている。商業べ一スに乗った(注3)安易なものが溢れているからなかなか見つけにくい世の中だけど、自分を強く揺さぶり(注4)、救ってくれるようなものに出会えた時、もう1回生きてみようと思うことは、確かにある。

(中村文則「文化も救ってくれる」2009年2月21日付け産経新聞による)


(注1)しんどい:疲れて苦しい
(注2)破滅:人間や人生、家、国などがまったくだめになること
(注3)商業ベースに乗った:利益を得るための
(注4)揺さぶり:感動させて

(1)①そうは何を指しているか。

(2)筆者が考える「文化」の働きは何か。

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(10)
 あなたはなぜ笑うのか、と問われたら、面白いと思ったからと答えるだろう。昔の哲学者アリストテレスは、笑うのは人間だけであると考えた。古代ギリシャの時代から、笑うことで気分が良くなるといった心理的な効果が指摘されていたらしい。
 心理的な効果ではなく、身体的特徴を考えると、笑いは空気を吸ったり吐いたりするときに生まれるもので、呼吸と同じような現象である。近年、人間だけでなく、霊長類(注1)にも笑いのような現象があることがわかってきた。彼らは、追いかけたり取っ組み合ったりして遊んでいるときに、大きくロを開けて相手に歯を見せることがある。①このような行為は基本的に攻撃意図を示すが、遊んでいる状況では反対に、その意図がないことを示すメッセージになる。
 しかし、人間の笑いは霊長類とは異なり、様々な社会的意味を持っている。相手の言ったことが面白いから笑うというように、笑いは他者とのかかわりの中で起こる。笑うことは相手への共感(注2)を示し、その場を明るい雰囲気にする。音声言語の最初のかたちは笑い声だと言う人もいる。現代と同じように人類の初期から笑いがコミュニケ一シヨンの道具として使われていたと考えると、その意見もおかしなものではないだろう。
(注1)霊長類:動物の分類の一つで、ヒトやサルの仲間
(注2)共感:他人の考えや感情を、自分も同じだ、その通りだと感じること

(1)①このような行為とは何か。

(2)筆者が言いたいことに合うものはどれか。