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「文字を読んだり計算をしたりして、いったい何の役に立つのか] と疑問に思われる方も多いと思います。このドリルの目的は、「読むこと・計算をすること」 の能力を上げることではなく、脳(とくに①前頭前野) の働きを向上させることにあります。私たち人間を人間たらしめている(注1)脳、それが前頭前野です。 生物学的に人間は動物と何が違うのか? この答えを脳科学に求めると「前頭前野が異常なほどまでに発達
しているのが人間である」 となります。
 前頭前野には異なった働きをする領域(注2)があり、そこからさまざまな大切な能力が発揮されます。
① 他者とのコミュニケーション
② クリエーティビティ(注3)
③ 積極性
④ 発想の転換
⑤ 複数の物事を同時に行う
⑥ 短期記憶 カ
 私は、これらの人能力を発揮する前頭前野の領バの多くが、文字を読むことや簡単な計算を素早くすることによっても使われることに注目しました。 前頭前野の入経細胞は、脳の他の場所の神経細胞と比べて非常に「柔軟]」な(注4) 対応力をもち、ひとつの神経細胞が多くのことをするために働くことがわかっています。したがって、読みや計算を繰り返し行い、読みや計算で働く前頭前野を鍛えれば (注5)。、その場所が 司 っている(注6)その他の能力も上がると考えたのです。
(川島 隆太『脳を鍛える携帯版大人のドリル』 くもん出版)
(注1) 人間たらしめる :「人間である|] とする
(注2) 領域 : 場所
(注3) クリエーティピティ : 新しいものをつくり出すカ
(注4) 柔軟な: その場合に合わせて変わる
(注5) 鍛える: 強くする
(注6) 司る : 支配する

間1 前頭前野とは何か。

問2 筆者が行ったことは何か。

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 安眠のためには、脳が満足して「おなかがすいている」 という信号を消す程度に少しだけ食べるのが覧い方法です。簡単にいえば、自分で①自分の脳を上手にごまかす(注1)わけです。
 では、どんな食べ物が、少しの量でも脳に満腹だと思わせる効果があるのでしょうか。脳が信号として「栄養が十分とれた| とキャッチするのは、プブドウ入です。プドウ精は、脳のエネルギー源となる基本的な糖です。つまり、吸収が早く、消化がよい、すぐブドウ繕に変わって、少ない量でも効率よく脳に信号として伝わるものを食べれば、胃に負担もなく、了眼りもさまたげず、脳はほどほどに(注2)満足して、気分的には「おなかが満たされた」 状態で眠りにつけることになります。
 プドウ炒に変わりやすい食べ物とは、ズバリ(注3)「甘いもの」 です。ビスケットを少しかじったり、キャンディをなめるのもいいでしょう。 ヨーロッパのホテルなどでは、枕元に敬いチョコレートを履く習慣がありますが、チョコレートに含まれるカフェインには覚醒作用 (注4)があるので、寝る前に食べるものとしては少し考えものです。
( 井上昌次郎 『上手な快眠術』 実業日本社 )
(注 1) ごまかす : だます
(注 2) ほどほどに : ちょうどよい程度に
(注 3) ズバパリ : はっきり言うと
(注4) 覚醒作用 : 寝ている人の目をさます働き

問1 ①自分の脳を上手にごまかす の説明として適当なものはどれか。

問2 筆者が言っていることと合うものはどれか。

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(3番)
 日本人なのに日本語を知らないという現象、「日本人の日本語知らず」がしばしば話題になる。その例としてよく出されるのが「情けは人のためならず」ということわざの解釈である。このことわざの意味は「あたたかい思いやりの心をもって人に親切にすれば、良いことが自分に返ってくる」ということ、つまり、①「情けは人のためではない」と言っているのだ。ところが、これを取り違えて解息する人が多いらしい。この取り違えはどこから生じるのか。文法に強い友人の説明によると、誤りのポイントは「ならず」という部分にあるということだ。「ならず」は古い言い方で、現代語にすると「ではない」という意味だから、「情けは人のためではない」が本来の意味である。それを「人のためにならない」と解釈してしまうので、意味の取り違えが生まれる。その結果、「人に親切にしてもその人のためにならないから、親切にしないほうがいい」と理解する人が多いらしい。ことわざには、しばしば古い文法が用いられている。「ならず」の固定形は「なり」で、これは「だ・である」に当る。だから「ならず」は「ならない」ではなく、「ではない」になるわけだ。文法的にはこれで納得がいくのだが、一方で、なにか②割り切れない思いが残ってしまう。ことわざには逆説的な(注1)意味をもつものが少なくないのだが、とはいっても、このような「新解釈ưが生まれる背景(注2)には、現代の乾いた人間関係があるように思えてならないからだ。

(書き下ろし)


(注1)逆説的な:一般に考えられていることとは逆の
(注2)背景:裏、後ろ側

(問1) ①「情けは人のためではない」の解釈について、適当なものはどれか。

(問2)②割り切れない思いが残ってしまうとあるが、これはなぜか。

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(4番)
「笑う門には福きたる」という上方(注1)の諺がある。ニコニコ笑っている家には福運がおとずれる(注2)いうことだ。
 人間は喜びをもとめ、悲しみを避ける。それは万国共通の人情ではあるが、笑いというと、これはもう「文化的」なものだ。うれしいからかならず笑うというものでもないし、悲しいから泣くというものでもない。喜びの感情と笑いの表現とは直接的にはつながらない。一国の文化の特徴がしみついた表情が、それぞれぞれのお国柄(注3)の笑いをつくる。
 ①笑いはかならずしも国境をこえない笑いはかならずしも国境をこえない。イギリス人ならけっして笑わないことでも私たちが笑いころげることはあるし、その逆もまたありうる。また、日本人の笑いといっても、一様(注4)ではない。地方ごとに微妙な差があるし、年齢によっても笑いの質が違う。箸のこけたのを見てもゲラゲラ笑っている娘たちを、老人はいぶかしげに(注5)、ときには不愉快そうに見る、といったあんばい(注6)だ。
 笑いは複雑な人間的表情である。だからこそ、笑いの理論といったものも、なかなか一定にさだまりにくい(注7)のである。

(多田道太郎『しぐさの日本文化』角川書店)


(注1)上方:京都、大阪地方
(注2)おとずれる(訪れる):こちらへ来る
(注3)(お)国柄:その国や地方に独特の特徴
(注4)一様:全部が同じようであること
(注5)いぶかしげに:疑問を持っているような様子で
(注6)あんばい:様子
(注7)さだまりにくい(定まりにくい):決まりにくい

(問1) ①笑いはかならずしも国境をこえないとはどんなことか。

(問2) 筆者は、「笑い」とはどんなものだと言っているか。

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(5番)
品格(注1)のある人とは、なにより人から信頼される人です。信頼されるには信頼される行動を取らねばなりません。信頼されるためにはすばらしい言葉を言うより、きちんとした行動を少しずつ積み重ねていかねばなりません。①信頼関係を築くためにはホームラン(注2)は必要ありません。投げられたボールをこつこつとバッ卜(注3)に当てていくだけです。具体的に言えば、約束した時間を守る。約束した仕事は約束した期限に仕上げる。出席すると言った会合には必ず出席する。電話すると言ったことは電話する。誰かに紹介すると言ったら紹介する。送ると言った資料は必ず送る。あげると約束したものをあげる。見せてあげると言ったものを忘れずに見せる。一つ一つはたいしたことではありません。ついうっかり忘れてしまいそうなことです。でもこうした小さいことの積み重ねが、あなたの信用を作るのです。ちょうど百円、二百円の小銭を口座に積み立てるようなものです。こうしたお金が積もり積もって大きな財産になっていくように、日頃の約束を守る行動が、気がついたらあなたの信用状になり、あなたの品格を高めていくのです。

(坂東眞理子『女性の品格』ド只?研究所)


(注1)品格:人や物がもっている質の高さ
(注2)ホームラン:野球で、打ったボールが遠くまで飛ぶ大きな当たり
(注3)バット:野球でボールを打つ棒

(問1)①信頼関係を築くためにはホームランは必要ありませんとあるが、この「ホームラン」とはどんなことか。

(問2) 筆者によれば、品格を高めるために必要なことはどんなことか。

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(6番)
僕は、本を読むのが嫌いだ。極端な(注1)いい方をすると本というものは過去のものしか書いていない。僕は、本を読むと、それにとらわれてしまって、何だか退歩するような気がして仕方がない。だいたい、僕の人生は、いわゆる見たり、聞いたり、試したりで、それを総合して、こうあるべきだということで進んできた。もしわからないようなことがあって、そのために本を読むんだったら、そのヒマに人に聞くことにしている。五〇〇ページの本を読んでも、必要なのは一ページくらいだ。それを探し出すような非能率なことはしない。うちには大学出はいくらもいるし、その道の専門家に、課題を出して聞いた方が早い。そして、それを自分の今までの経験とミックスして、これならイケるということでやっているだけで、世の中の人は、本田宗一郎は、ピンからキリまで(注2)やっていると思っているようだが、とんでもない。
 結局、僕の特長は、ざっくばらんに(注3)人に聞くことができるということではないかと思う。つまり、学校に行っていないということをハッキリ看板にしているから、知らなくても不思議はない。だから、こだわらずに(注4)、だれにでも楽に聞ける。これがなまじっか(注5)学校に行っていると、こんなことも知らないんでは、だれかに笑われると思うから、裸になって人に聞けない。そこで②無理をする。人に聞けばすぐにつかめるものが、なかなかつかめない。こんな不経済なことはない。

(本田宗一郎『ざっくばらん』ド只?研究所


(注1)極端な:非常にかたよっている
(注2)ピンからキリまで:小さいことから大きいことまで全部
(注3)ざっくばらんに:遠慮しないで
(注4)こだわらずに:気にしないで
(注5)なまじっか:ちょっとでも

(問1) ①僕は、本を読むのが嫌いだと言っているが、これはなぜか。

(問2) ②無理をするとは、どんなことを言っているか。

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(7番)
tuhocjlptくん、
 ぼくはついに①例のものを持たずに旅に出ました。
 おわかりですか?
 例のもの、ほら、ぼくがむかしから旅行にはかならずたずさえて(注1)いったものです。②本当はそれを持たずに旅をしたいと、もう何年ものあいだ、ずっと考えつづけてきた例のもの。
 もうおわかりですね。
 苦笑していらっしゃるあなたの顔が眼に浮かびます。そうです。ぼくは、ついにやったのです。あれを持たずに風のように軽いバッグをたずさえてニ泊三日の北陸(注2)のドライブ旅行に出発したのです。 
 その名は、カメラ。
 もう一度あなたに自慢させてください。ぼくはついにあのふしぎな力を持つ機械から自由になりました。自分の眼と心のフィルムをとりもどしたといってもいいかもしれません。

(五木寛之『若き友よ』幻冬舎)


(注1)たずさえる:持つ
(注2)北陸:北陸地方(新潟県、富山県、石川県、福井県)

(問1) ①例のものとは何か。

(問2) ②本当はそれを持たずに旅をしたいのはなぜか。

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(8番)
 部下をほめるとき、どんなほめ方をするでしようか。ほめて育てるといいますが、①ほめ方によっては逆効果になるようです。
 コロンビア大学の心理学者クローディア・ミューラーは、十歳から十二歳の小学生をニグループに分け、ほめ方の効果を調べました。
 まず何種類かのテストを実施した後で、第一グループの子には「能力があるので、よくできた」とほめました。第二グループの子には「努力したので、よくできた」とほめました。
 その後で、別のテストを実施し、今度は全員に「できが悪かった」と報告しました。
 そうしたところ、第一グループの子は「能力が足りない」と考え、再挑戦しよう(注1)としませんでした。一方、第二グループの子は②「努力が足りなかった。次は頑張ろう」と意欲的でした
 第二グループの子は、「成功や失敗の原因は努力にある」と判断するように誘導されて(注2)いたので、失敗したとき「もっと努力すれば成功する」と前向きに考えたのです。
 これは子どもを対象にした研究ですが、部下をほめるときにも通用する考え方です。

(渋谷昌三『心理学者は知っているリーダーシップのある人、ない人』?只?研究所)


(注1)再挑戦する:もう一度やってみる
(注2)誘導する:目的に向かって導く

(問1) ①ほめ方によっては逆効果になるが、「逆効果」とはどのようなことか。

(問2) ②「努力が足りなかった。次は頑張ろう」と意欲的でしたとあるが、これはなぜか。

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(9番)
 ヨーロッパに、①“忙しい人ほどヒマがある”ということわざがある。忙しい人は集中して手早く仕事をしてしまうから、そのあとに、自由な時間ができる。それにひきかえ(注1)ありあまるほどの時間をもっている人は、ちょっとしたこともダラダラしている。いつまでも終わらないから、かえってヒマがなくなり忙しい思いをする。そういう逆説(注2)を述べたものである。
 『パーキンソンの法則』という有名な本に、こんなエピソードが出てくる。有閑(注3)、富裕な(注4)あるおばあさんが、メイ(注5)のところにはがきを書こうと思い立つ。メイは避暑先にいる。アドレスをさがして二十分。文面を考えて四十五分。書き上げた手紙を投函しにポストまで行くのに、洋傘をもっていくかどうかを考えて二十分。しめて(注6)一時間半近くかかる。時間がいくらでもあるからで、忙しい人ならすべてが三分で終わる。
 ②時間は必要だが、ありすぎると、よろしくない。すくなくとも、あると思うのがいけないのである。
 時間はすこし足りなめなのがよろしい。時間と競争して仕事し、勉強する。緊張と集中のもとで行われるところから、立派な成果が生まれる。時間が足りないという気持ち、タイム・ハングリーである必要がある。
 そのためには、あまり多くの時間をかけないことである。勉強時間にしても、多ければ多いほどよいなどと考えるのは禁物(注7)。むしろ思い切って、時間をすくなくする。その方が充実した(注8)勉強ができる。

(外山滋比古『ちょっとした勉強のコッ』みくに出版)


(注1)それにひきかえ:それとは反対に
(注2)逆説:ふつう考えられることとは逆の考え方
(注3)有閑(な):ひまな
(注4)富裕な:金持ちの
(注5)メイ:姪
(注6)しめて:全部で
(注7)禁物:してはいけないこと
(注8)充実した:内容がたくさんある

(問1) ①“忙しい人ほどヒマがある”ということわざにはどのような意味があるか。

(問2) ②時間は必要だが、ありすぎると、よろしくない。とあるが、なぜ良くないのか。