中文
(1)
 日本ほど木がたくさん植えられている緑豊かな国はめったにない。私は森林を見るたびに地球の温暖化防止に役立っているのだから木は切らないほうがいいと考えていた。しかし古い木は炭酸ガスめ吸収率が低いそうだ。だから古い木を切って新たに木を植える必要がある。1995年には日本の森林は若かったが今のままでは将来炭酸ガスがまったく吸収されなくなる恐れもあるそうだ。
 木で家を造ると木の中の炭酸ガスがそのまま残る。だからなるべく日本の木を使って家を建てまた新じい木を植えることが望ましい。当然家も長持ちさせたほうがいいし家を壊すときにその木が再利用できれば炭酸ガスを出さず地球環境のためになる。
 日本の林業は外国の安い木材の輸入拡大によってすっかり衰えてじまった。1960年には86.7%もあった木材の自給率が1970年には45.0%になり1995年以後は20%前後に落ち込んでいる。値段だけではなく日本の木は水分が多いので外国産に比べて変形しやすく、使いにくいそうだ。また他の問題もある。木材の値段が下がるにつれて山で働くのは年寄りばかりになってしまった。木を育てるためには間伐(注)が必要だが、日本の山は手入れする人が減って荒れている。
 木材を使用するときは変形を防ぐために乾燥させなければならない。普通は3ヶ月以上かけて自然乾燥させる。当然時間もお金もかかる。最近流行している人工乾燥の場合はいろいろなやり方がある。中でも100度ぐらいの高温て2・3日で乾燥させる方法がよく使われているそうだ。しかし高温で乾燥させると割れたり、木材に含まれる油分が失われたりするので強くてよい木材にすることが難しいそうだ。またそのために使われる燃料費もぼかにならない。
 最近ある会社が低温乾燥装置を開発した。45度で1週間かけて水分が10%ぐらいになるまで乾燥させる。すると変色もしないし油分も逃げないので強い良質の材木ができるのだそうだ。燃料費も低く抑えられるので今見学者が後を絶たないそうだ。
 ちょっと日本の林業に薄日(注)が射してきたような気がする。この装置をおおいに利用して地球の温暖化防止のためにもっと日本の木を使うようにしてほしい。
(注1)間伐:木がよく育つように適当な間を空けて木を切ること
(注2)薄日:雲を通してさす弱い太陽の光

(問1) なぜ木は切つたほうがレルヽのか。

(問2) 著者はどんな乾燥方法がいいと言っているか。

(問3) 日本の林業の一番の問題点は何か。

中文
(2)
 「奇跡のリンゴ」は無農薬の上に無肥料「奇跡」というのは普通では起こらないという意味だ。無農薬の米や野菜を作るには大変な努力が必要だそうで、完全な無農薬の作物を作ることはほとんど不可能に近いそうだ。ましてリンゴは決して無農薬では作れないと言われていた。ところがそれに挑戦した1人の日本人がいた。木村秋則さんと言う。彼は書き留めた資料が箱いっぱいになるほど研究熱心だった。虫を殺すためにも毎年様々な工夫をした。酢をまいたこともあった。しかしその全てが無駄であった。いくらやってもリンゴが実らなかったのだ。リンゴが収穫できないので無収入になり出稼ぎに出たこともあったそうだ。当然家族の生活はどん底だった。周りからは馬鹿だとか迷惑だとか言われ、親類からもあきらめろど言われた。そんな苦しい生活の中で家族だけが彼を支えてくれた。しかしいくら工夫してもリンゴはできなかった。絶望の中で偶然森の土が自分の畑の土と全然違って柔らかく、木々が生き生きしていることに気づいた。そこで森の土を調べて同じような土を作ろうと、雑草も生えたまま、自然のままにした。すると畑の土に微生物(注)が住むようになって、土が柔らかくなり、森と同じようになった。そして翌年とうとうリンゴが実をつけたのだ。
 彼のリンゴは味が濃いそうだ。リンゴは切ると直ぐに色が変わる。しかし彼のリンゴの色はそのまま変わらないそうだ。さらに腐らないとさえ言われている。だから当然その人気は高く販売されるやいなやわずか10分ほどで売り切れてしまうそうだ。誰もが買えるわけではない。もし知選に当たれば買うことができる。1個300円。ほかのリンゴに比べて決して高くない。もっと高くても買う人は大勢いると思うのだが彼は決して高く売ろうとはしないそうだ。こんなところも彼の魅力の1つなのかもしれない。今ではリンゴ作りの他に農業指導や講演会、本の出版などで忙しく過ごしているそうだ。
 私たちは彼が経験した信じられないほどの貧乏生活や、数え切れないほどの工夫や
努力、挑戦し続ける強い気持ち、そして最後に訪れた成功などに心を引かれずにはい
られない。そしてそれを他の人に知らせたく立る。私も彼の話を書いているからにはその1人であることを認めざるを得ない。
(注)微生物:目に見えないほど小さい生物

(問1)「奇跡のリンゴ」とはどんなリンゴか。

(問2)「奇跡のリンゴ」を生んだ土はどんな土か。

̣̣̣̣(問3)「奇跡のリンゴ」の話を聞いた後の著者の気持ちはどれか。

中文
(3)
 昔ながらの古い商店街に客が来なくなっています。人口減少や車社会になり郊外の大型店に客を取られたからです。閉店した店が多い商店街は店のシャッターが下りたままなのでシャッタ一通りと呼ばれています。
 このままではいけないとユニークな商店街を作ったところがあります。ある商店街は空いた店を利用して無料で健康相談、料理教室、子育て相談、そろばん教室、英会話教室などを行っています。少しでも人を呼び込もうというのです。努力の結果今では客が次第に増えてきたそうです。
 またある商店街は30年間も続いた不況を、懐かしい昭和の町並みを復元することで克服しました。最高でも2万人だった客が今では30万人にも増えました。地域の人ばかりではなく多くの観光客が訪れるようになったからです。都会から若者も戻ってきて町はますますにぎやかになりました。
 また占いを取り入れた楽しい商店街もあります。ある時商店街が占い師21人を呼びました。その行事に予想を上回る多くの女性客が集まり、マスコミにも取り上げられました。そこでこれを街の再生に使おうと占い館を作って毎日占いができるようにしました。また第4金曜日には占い師を約30人呼んで商店街の道路上で占いをさせました。店にも占いと商売を結び付けるように協力してもらいました。例えばある居酒屋は割り箸で運試しをして当たった人にはビールを1杯サービスしています。眼鏡店では当たった人に10%の割引をしています。肉屋も占い大吉(注)コロッケを売り出しました。すると真剣に運命を占ってほしい人も遊びでちょっと運命を見てほしい人も次々と訪れるようになりました。
 これらの例を見ると、どの商店街にもアイディアがあることがわかります。また地域だけに留まらず広く人を呼び込める商店街を作っています。お客が来なくて困っている全国の商店街もみんなでいいアイディアを出し合って地域の特色を出した魅力ある商店街を作ってほしいものです。
(注)大吉:最も運がいい

(問1)日本全国の商店街は今どんな状況か。

(問2)占い商店街でしていることはどれか

(問3)これらの商店街が成功した一番の理由は何か

中文
(4)
 世界のガン死亡者は増加の一途をたどりまもなく1位になると予測される。ガンの治療法は手術・抗ガン剤(注1),放射線などだが、この全でが体に大きな負担を与える。ガンが消えたり小さくなったりしても体が弱ってしまうという問題が残る。現在ガンワクチン(注2)の研究が進められているが、ワクチン治療はそれが金けられる。ワクチンを注射するだけだから、入院の必要もないし副作用もない。患者は今まで通りの生活を続けながら治療を受けることができる。
ガンは何かの原因で自分の細胞が変化してできる。私たちは病気を治すリンパ球(注3)を持っている。リンパ球は外部から異物が侵入すると直ぐに攻撃を開始する。しかしガン細胞は異物だが攻撃されない。リンパ球はガン細胞を敵だと認識できない。自分の細胞が変化して生まれた物だからだ。ガン細胞にはペプチド(注4)という物が付いているそうだ。そこで体にぺプチドを注射するとリンパ球はぺプチドを異物だと認識して攻撃を始める。当然ペプチドが付いているガン細胞も攻撃する。敵だと認識するからだ。日本の研究ではワクチンを注射した20%の人のガンが小さくなり、40%の人のガンが同じ大きさに留まっていたそうだ。しかも実験の参加者は全員助からないと言われていた人ばかりだったから、初期の人ならもっと効果があるだろう。
 しかし日本でワクチンの研究がなかなか進んでいないのも現実だ。ガンはできる場所によってペプチドの形が違うから全てのガンワクチンを作るためにはばくだいな研究費が必要になる。アメリカでは研究費を年間5千億円以上使える。市民の寄付も相当の金額になるそうだ。一方日本は数百億円に過ぎない。きっとアメリカが先に作るだろう。日本はそれを使えばいいという意見が出てくるだろう。しかしそれを日本で使うためにはまた様々な試験をして国の許可を得なければならないから時間がかかる。さらに問題なのはそのワクチンが日本人を含めたアジア人には効かない恐れがあることだ。人種によって効かない場合があるからだ。だからどうしても日本であるいはアジアで開発する必要がある。国には研究のための費用をもっと負担してもらいたい。ワクチンが開発できれば多くの人の命が助かり、増加している医療費の削減にもつながる。さらに新薬を輸出することでばくだいな利益がもたらされる。国にとっても悪い話ではないはずだ。
(注1)抗ガン剤:ガンの化学治療に使われる薬
(注2)ガンワクチン:ガンの予防や治療に使われる薬.
(注3)リンパ球:病気を予防したり治したりする役目を持つ細胞
(注4)ペプチド:タンパク質の一種。アミノ酸がつながってできている

(問1) ガン治療について述べているので正しいのはどれか。

(問2) ガンワクチンの研究の問題点は何か

(問3) ガンワクチン開発に対する著者の意見はどれか。

中文
(5)
 震災(注1)前のデータでは海外旅行をした日本人は年間で約16 00万人、一方日本へ来た人は約861万人、1位韓国、2位台湾、3位中国などアジアからの観光客が70%以上を占めていた。世界で観光収入が多いのは1位アメリカ1101億ドル、2位スペイン616億ドル、3位フランス556億ドル、4位イタリア457億ドノレなどで先進国が多い。アジアでは中国が5位に入り408億ドルをかせいだ。日本はやっと28位108億ドルを得ていたに過ぎないが、震災後は放射能の影響で激減している。政府は2003年に「ビジット・ジャパン」と名付けた観光キャンぺーンを始めた。2010年までに年間1000万人という目標を立てたが達成できなかったし達成は当分不可能であろう。震災前は円高やビザの問題、それに観光客に対する気配りが不足していた。日本では英語の案内さえあまりないし韓国人観光客が多いならもっとハングルの表示をするべきだった。今後は日本が細長い国で放射能の影響を受けていないすばらしい観光地が残っているとアピールしなければな-らない。
 観光客が少ないと言っても北海道のニセコはオーストラリア人スキー客で大変にぎわっていたし、秋田は韓国ドラマのおかげで韓国人観光客でいっぱいだった。これは民間あるいは地方の観光課などの努力の結果だ。工夫次第で観光客を増やすことができていたということだ。幸い北海道や秋田は放射能の影響がないから一時的に観光客が減ることがあっても持ち直すだろう。
 世界では違う面から観光を考える動きもある。医療観光に力を入れているのは韓国やシンガポールだ。日本も医療技術では負けていないし、MRIなどの高度の装置の普及率も高い。しかしつい最近まで治療を受けたい外国人がビザをもらえずあきらめたということもあった。一方、韓国は外国人の患者を受け入れるために医療法まで改正した。韓国は美容整形(注2)が有名だがさらに他の分野の患者を増やすことで観光業全本への効果を期待しているようだ。現在海外で安い費用で高度な治療が受けられる国として人気が高いのは韓国、シンガポール、タイ、インドなどだ。特にタイは2005年には120万人もの医療観光客を招いている。放射能の影響を除いても日本がこれらの国に追いつくには時間がかかりそうだ。
 日本の観光の現状を考えるといい物をたくさん持ちながら生かし切れていないと言える。日本の観光業を活性化するために国には民間や地方のアイディアがうまく事業化できるようにビザの発給などの面でも支えてもらいたい。さらに原子力発電所の問題を早期に解決するとともに放射能の影響がない地方の情報を世界に発信しなければならない。それが政府の重要な役割である。
(注1)震災:地震による災害。この文では2011年に起きた東日本をおそった大地震と津波を指す。
(注2)美容整形:美容を目的とした手術。鼻を高くしたり胸を大きくしたりなど。

(問1)震災前の日本の観光の現状を述べているのはどれか。

(問2)医療観光について述べているのはどれか

(問3)著者の考えでないのはどれか

中文
(6)
 製品の①世界標準規格は大変重要だ。規格外の製品は自分の国で売る分には何の問題もないが、輸出することができないからだ。紙さえ規格がある。日本では紙は「B版」がよく使われているが世界的に使われているのは「A版」で元々はドイツの規格だった。小さい部品にも世界標準があるので、日本の製品がほしくても買えないこと
があるそうだ。優れていても値段が安くても規格外の製品は売ることができない。だからどこの国も自分の国の製品を標準にしたい。もし規格外になったら会社にとっても国にとっても大損害だからだ。
 昔前まではこんな制度がなかったので、いい製品を作りさえすればよかった。よく売れれば自然にその規格の製品が広まっていった。だから世界中でビデオやDVDなどの規格争いが起こった。
 しかし世界標準規格ではいい製品あるいはよく売れる製品が世界標準になるとは限らない。世界標準は1国1票で決められる。一見平等のように見えるが、かなり政治の力が働く。元々世界標準はヨーロッパを中心に進められてきた。ヨーロッパは地理的に近いので製品の規格が違うと大変不便だ。その解消のために標準規格を導入した。それで現在でもヨーロッパ主導で世界標準規格が決まることが多い。
 日本は高い技術力を持っているが、世界標準規格を取るという点では遅れている。特に中小企業はその存在すら知らずに海外市場の多くを失った。国際標準規格の製品を作ることだけでは失った市場は取り戻せない。どう取り組むかが重要だ。ある中小
企業のスイッチが国際標準規格に選ばれた。それは手で押すとスイッチが入り、離すと切れる、さらに強く握った場合にまた切れる。人間が危険を感じると反射的に強く握ってしまうという自然な行動から生まれたすぐれたものだ。この会社のように進んで規格を提案して採用されるように努力することが大切だ。
 また世界標準を取るときに協力してもらえる国をたくさん作る必要もある。例えば中国だ。中国では製品によっては独自の規格の製品が作られ、大売れだそうだ。高い特許料を払いたくないので他の技術を使って製品を作る。こんなことができるのも13億もの人ロを持っているからだ。中国市場は大変大きいのでどこの国も無視できない。現在では標準規格採用時に中国の意向が影響することがある。次に力を持つのはインドかもしれない。では政治的な面で日本はどうしたらいいか。技術の優良さだけを主張しても駄目だ。世界標準を主張するとき、多くの国にとって得になるような提案をしていく必要があるのではないだろうか。

(問1)①世界標準規格というのは何か。

(問2)世界標準規格がないときはどうだったか。

(問3)著者は日本はどうすればいいと言っているか。

中文 中文
(8)
 豊富な水に恵まれている日本で生活していると21世紀は石油ではなく水戦争が起こるなどと言われてもぴんと来ないだろう。地球には約14億立方キロメ一トルの水があるが、その約98%が海水なので実際に利用できるのは氷河や土の中の水を除くとわずか1%にしかならない。現在多くの国が水不足で困っている。世界の人口は約68億人、2025年には80億にもなるそうだ。対策を立てなければそれらの国だけでなくアメリカを始めヨーロッパ・アジア各地にまで水不足が広まるだろう。飲み水だけではない。水は作物を作るのにも必要なので食糧危機も起きる恐れがある。
 シンガポールは最も水対策に力を入れている国である。以前は国内で使用する水の50%以上をマレーシアから買っていた。しかし以前の100倍の水料金の値上げを要求されたのをきらかけに自国で水を確保することにした。現在水の再利用、海水の淡水化、雨水の回収などを含む様々な計画を立ち上げて、世界中の企業や研究所を招いて事業を始めている。将来90%の水を自国で供給できるようにするとともに、得た技術を世界に売り出して水ビジネスで莫大な利益を得ようと計画している。
 水ビジネスは飲料水のペットボトルから家庭用浄水器、水道や下水道の設備、海水
の淡水化装置など色々あって、市場は何十兆円にもなる。現在巨大メジャーのヴェオリア(フランス)、スエズ(フランス)、テムズウォーター(イギリス)が50か国以上で事業を展開していて市場の70〜80%を握っているそうだ。メジャーは施設の建設から、水の給水、料金の徴収、排水の処理などの管理・運営の全てを行っている。
 日本は水を浄化する時に使う「膜」やポンプなどの技術では一流だが、それだけでは水ビジネス全体の1%にもならない。ビジネスとしてはメジャーのように水の製造から販売までを含めた事業を売り込む必要がある。巨大メジャーには歴史があるが日本では水事業は公共団体がするべきだという考えがあって、ヨーロッパのようにビジネス化されなかった。2002年にやっと民間に開放されたのだから、施設の管理・維持の経験が不足している。これが技術がありながら日本がメジャーに遅れを取っている理由だ。日本の商社が関係した中東産油国での海水淡水化事業も、ほとんどが水メジャーとの共同プロジェクトである。ついにヴェオリアが日本の浄水場の運営や下水処理場の管理を始めたことも不思議ではない。日本の水ビジネスの遅れを取り戻すためにはかなりの努力が必要である。

(問1) 世界の水の状況について述べているのはどれか。

(問2) 水ビジネスについて述べているのはどれか。

(問3) 本文の内容と合っているのはどれか。