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震災(注1)前のデータでは海外旅行をした日本人は年間で約16 00万人、一方日本へ来た人は約861万人、1位韓国、2位台湾、3位中国などアジアからの観光客が70%以上を占めていた。世界で観光収入が多いのは1位アメリカ1101億ドル、2位スペイン616億ドル、3位フランス556億ドル、4位イタリア457億ドノレなどで先進国が多い。アジアでは中国が5位に入り408億ドルをかせいだ。日本はやっと28位108億ドルを得ていたに過ぎないが、震災後は放射能の影響で激減している。政府は2003年に「ビジット・ジャパン」と名付けた観光キャンぺーンを始めた。2010年までに年間1000万人という目標を立てたが達成できなかったし達成は当分不可能であろう。震災前は円高やビザの問題、それに観光客に対する気配りが不足していた。日本では英語の案内さえあまりないし韓国人観光客が多いならもっとハングルの表示をするべきだった。今後は日本が細長い国で放射能の影響を受けていないすばらしい観光地が残っているとアピールしなければな-らない。
観光客が少ないと言っても北海道のニセコはオーストラリア人スキー客で大変にぎわっていたし、秋田は韓国ドラマのおかげで韓国人観光客でいっぱいだった。これは民間あるいは地方の観光課などの努力の結果だ。工夫次第で観光客を増やすことができていたということだ。幸い北海道や秋田は放射能の影響がないから一時的に観光客が減ることがあっても持ち直すだろう。
世界では違う面から観光を考える動きもある。医療観光に力を入れているのは韓国やシンガポールだ。日本も医療技術では負けていないし、MRIなどの高度の装置の普及率も高い。しかしつい最近まで治療を受けたい外国人がビザをもらえずあきらめたということもあった。一方、韓国は外国人の患者を受け入れるために医療法まで改正した。韓国は美容整形(注2)が有名だがさらに他の分野の患者を増やすことで観光業全本への効果を期待しているようだ。現在海外で安い費用で高度な治療が受けられる国として人気が高いのは韓国、シンガポール、タイ、インドなどだ。特にタイは2005年には120万人もの医療観光客を招いている。放射能の影響を除いても日本がこれらの国に追いつくには時間がかかりそうだ。
日本の観光の現状を考えるといい物をたくさん持ちながら生かし切れていないと言える。日本の観光業を活性化するために国には民間や地方のアイディアがうまく事業化できるようにビザの発給などの面でも支えてもらいたい。さらに原子力発電所の問題を早期に解決するとともに放射能の影響がない地方の情報を世界に発信しなければならない。それが政府の重要な役割である。
(注1)震災:地震による災害。この文では2011年に起きた東日本をおそった大地震と津波を指す。
(注2)美容整形:美容を目的とした手術。鼻を高くしたり胸を大きくしたりなど。