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「奇跡のリンゴ」は無農薬の上に無肥料「奇跡」というのは普通では起こらないという意味だ。無農薬の米や野菜を作るには大変な努力が必要だそうで、完全な無農薬の作物を作ることはほとんど不可能に近いそうだ。ましてリンゴは決して無農薬では作れないと言われていた。ところがそれに挑戦した1人の日本人がいた。木村秋則さんと言う。彼は書き留めた資料が箱いっぱいになるほど研究熱心だった。虫を殺すためにも毎年様々な工夫をした。酢をまいたこともあった。しかしその全てが無駄であった。いくらやってもリンゴが実らなかったのだ。リンゴが収穫できないので無収入になり出稼ぎに出たこともあったそうだ。当然家族の生活はどん底だった。周りからは馬鹿だとか迷惑だとか言われ、親類からもあきらめろど言われた。そんな苦しい生活の中で家族だけが彼を支えてくれた。しかしいくら工夫してもリンゴはできなかった。絶望の中で偶然森の土が自分の畑の土と全然違って柔らかく、木々が生き生きしていることに気づいた。そこで森の土を調べて同じような土を作ろうと、雑草も生えたまま、自然のままにした。すると畑の土に微生物(注)が住むようになって、土が柔らかくなり、森と同じようになった。そして翌年とうとうリンゴが実をつけたのだ。
彼のリンゴは味が濃いそうだ。リンゴは切ると直ぐに色が変わる。しかし彼のリンゴの色はそのまま変わらないそうだ。さらに腐らないとさえ言われている。だから当然その人気は高く販売されるやいなやわずか10分ほどで売り切れてしまうそうだ。誰もが買えるわけではない。もし知選に当たれば買うことができる。1個300円。ほかのリンゴに比べて決して高くない。もっと高くても買う人は大勢いると思うのだが彼は決して高く売ろうとはしないそうだ。こんなところも彼の魅力の1つなのかもしれない。今ではリンゴ作りの他に農業指導や講演会、本の出版などで忙しく過ごしているそうだ。
私たちは彼が経験した信じられないほどの貧乏生活や、数え切れないほどの工夫や
努力、挑戦し続ける強い気持ち、そして最後に訪れた成功などに心を引かれずにはい
られない。そしてそれを他の人に知らせたく立る。私も彼の話を書いているからにはその1人であることを認めざるを得ない。
(注)微生物:目に見えないほど小さい生物