この前、教師の人と話していて、子供がTVゲームばかりして、友達同士遊ばないから困っているとぼやいていました。
TVゲームに対するもっとも一般的な批判です。僕はいつも、この批判を聞くと、それは正しいのだけれど、だけど、先生、あなた方だって、カラオケで盛り上がるでしょう、つまり、ゆっくり酒でも飲みはじめたら、誰のどんな批判が飛び出すか分からないから、その空間を避けるでしょう、もちろん、僕もそうですよ、スタッフや役者同士が酔っばらって何を言いだすか分からない時は、カラオケに走るのがもっとも安全な方法ですから、と心の中で思ってしまうのです。
そして、子供は、そういう大人の生活の知恵を敏感に知っていて、友達の家に遊びに行って、何を話そうかと緊張する瞬間、ある者はTVゲームのスイッチを入れ、ある者は『スラムダンク』のコミックを手に取るのですよ、と思ってしまうのです。
(鴻上尚史『真実の言葉はいつも短い』光文社)