大規模な核戦争が起きる危険は、冷戦期より格段に小さくなった。だが、逆に、核テロの危険は高まった。これを防ぐには国際協力を通じて、核物質の管理、闇市場の摘発などを強めるしかない。
 そう考えるオバマ米大統領の呼びかけで、核保安(かくほあん)サミットが開かれ、この問題が国際社会の最優先政策のひとつに押し上げられた。冷戦思考から離れて、核( 41 )現在の脅威を減らそうとするオバマ外交がまた一歩、前進したと言えよう。
 核テロ防止は米国だけでなく、世界にとって不可欠な対策だ。主要都市で核テロが起きれば、甚大な犠牲が出るばかりではない。グローバル化した世界では金融や貿易、情報通信などが( 42‐a )に陥り、国際経済が重大な( 42‐b )に直面する。サミットが共同声明で核テロを「国際安全保障への最も挑戦的な脅威」とみなしたのも、そうした安全保障観からだろう。
 共同声明は、すべての核物質の管理を4年で徹底すると表明した。行動計画では、原子力施設の警備などを定めた核物質防護条約や、核テロを重大犯罪として摘発・処罰していく核テロ防止条約の運用強化が盛り込まれた。聞市場を封じるための、各国の法律の整備・運用の国際支援でも合意した。
 国際社会のどこかに核管理の穴があれば、テロ集団にとって、つけ入る隙となる。合意事項を実行に移せるかが今後の課題だが、核テロヘの脅威感が、多くの開発途上国の間で共有されている( 43 )。しかも、核テロ対策に人材、資金をつぎ込むより、さらなる核軍縮の方が先決だとの不満もある。こうした溝をどのように乗り越えていくか。国際社会に課された重い宿題だ。
 中国の胡錦濤(フーチンタオ)国家主席は「責任ある態度で核保安を重視」すると強調した。核拡散の問題を抱える北朝鮮とイランは、ともに核の間市場( 44 )疑いがあるが、中国は両国にあまり強い姿勢で臨んでこなかった。今後は両国がからむ闇市場の防止でも欧米などと協議を密にして、有効な手立てを積極的に実行してもらいたい。
 サミットには、核不拡散条約(かく<ふかくさんじょうやく/rt>)(NPT)に背を向けたまま核武装したインド、パキスタン、事実上の核保有( 45 )イスラエルも代表を送った。核保安サミットはNPTの枠外で、新たに核の脅威を減らす国際的枠組みを設けた格好だ。
 核不拡散については、未加盟国に対し、非核化したうえでNPTに入るよう求める。あくまでそれが原則である。だが同時に、核保安サミットを活用し、核テロ防止にもやはり核軍縮が欠かせないという根本的な問題への理解を広め、多国間の核軍縮への突破口にもしていくべきだろう。(「朝日新聞」2010年4月15日付)()

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