短文
(1)
 (前略)4歳の長男は妻に似て、低血圧で寝起きが悪い。叱って起こす日々が続いたある日、一計を案じた(注1)。保育園で植物を育てる楽しさに目覚めた彼と一緒に、野菜の種を買いに行き、庭を耕し、種を植えた。翌朝、寝床でぐずぐずしている息子に声をかける。「えんどう豆(注2)さんがお水をほしいって言ってるぞ。早く起きないと、お父さんが水をまいちゃうぞ」
 ①むくっと(注3)起きた息子は、「僕がやる」と庭に飛び出していく。夏には、彼が育てたおいしい野菜たちが食卓を飾ることだろう。

(渥美由喜「ダン力ジ日記」2011年6月4日付け朝日新聞による)


(注1)一計を案じる:ある計画を考え出す
(注2)えんどう豆:豆の一種
(注3)むくっと:瞬間的に、突然

(55) ①むくっと起きたとあるが、息子が起きたのはなぜか。

短文
(2)
 むかしは、道が必ずしもいまのように舗装されて(注1)いたわけではなく、多少デコボコしていたり、坂道を歩いて上り下りすることも少なくありませんでした。日常生活のなかで足首をよく使っていたのです。
 いまは道路が平らに整備されていますし、何より車で移動するケースがふえていますから、足首を曲げる機会が格段に(注2)減りました。階段を上れば、多少は足首を使いますが、エスカレーターに乗ってしまうと、足首を曲げる必要はまったくなくなります。つまり、自然と足首を曲げるような運動をする場面が減ったため、足首が硬くなってきているのです。

(辻秀一『お父さんはなぜ運動会で転ぶのか?いますぐできる運動不足解消メソッド』PHP新書による)


(注1)舗装する:道路などの表面をきれいに固める
(注2)格段に:大きく

(56) 筆者がここで述べているのはどのようなことか。

短文
(3)
 人間とロボットが、お互い、得意なこと、不得意なことを、それぞれ補い合い、協力すること。その姿勢を忘れてしまうと、ロボットに過剰な期待を押しつけてしまうことになり、結果、失望してしまうということにもなりかねません。
 「あ一あ、ロボットって、ちゃんと動いてくれないんだな」
 そんなふうに思ってしまっては、せっかくの可能性が失われてしまう。(中略)
 レスキュー(注1)ロボット。
 ロボットカー。
 どれも、機能を特化し(注2)、人間の役に立つべく、開発されたロボットたちです。機能をどれかひとつに特化するということは、何もかもロボットにやってもらうのではなく、必要に応じて、ロボットと人間が協力することが前提主3〕になっています。

(瀬名秀明『14歳の世渡り術ロボットとの付き合い方、おしえます。』河出書房新社による)


(注1)レスキュー:救助
(注2)特化する:限定し専門化する
(注3)前提:ある物事が成立するための条件

(57)筆者はロボットについてどのように考えるべきだと述べているか。

短文

(58)これは何の手紙か。

短文
(5)
 「自分探し」という言葉が流行っています。でも「自分らしさの一番へ」「自分らしさがきっと見つかる」などと連呼されていますね。一方で、「今の自分を変えたい」「自分が好きになれない」という若い女性もたくさんいます。(中略)
 思春期(注1)に、理想の自分と現実の自分の落差が見えるようになってそれに耐えられなく(注2)なり、自身を嫌悪し憎むということはよくあることです。しかし20代になったら、等身大の自分を受け容れることが必要です。自分の現在の境遇(注3)が嫌いで、まったく違う生き方があるのではないか、自分の中に隠れた才能があるのではないかと、ウロウロしていてはいけません。

(坂東眞理子『幸せの作法働く女性に贈る61のヒント』アスキー新書による)


(注1)思春期:12歳~17歳ごろで精神的に大きく変化する時期
(注2)耐える:がまんする
(注3)境遇:家庭環境、経済状態、人間関係などの状況

(59)筆者がいちばん言いたいことは何か。

中文
(1)
 そもそも人間が生きているかぎり、多かれ少なかれ限界や挫折(注)というものは必ずやってくるものです。
 それを乗り越えるための心構えを少しずつ養っておく必要があるのですが、いまの学校では、「君たちには無限の可能性がある」というようなメッセージばかりが強くて、「人には誰にでも限界がある」「いくら頑張ってもダメなことだってある」ということまでは、①教えてくれません
 子どもたちを傷つけてはいけないとか、子どもはみんな可能性を秘めているといった考えからなのか、いまの学校では、むかし以上に競争を最小限に抑えようという雰囲気があるようです。評価も本当はしているはずなのに、それが表からは見えにくいような②工夫がなされています。でも、一方で社会はいま、むかし以上にものすごく競争がきつくなっている「評価社会」なのです。
 こうしたズレがあるので、社会に投げ出されたときにものすごいギャップを感じてしまうわけです。挫折や限界にいきなりぶつけられたら、人はどうしていいか戸惑ってしまうでしょう。学校にいる間だけは社会の辛い波風にはさらしたくないというのは、一見いかにも子どもたちのことを考えているようで、じつは本当のところで子どもたちの将来についてきちんと考えていない無責任な態度といえるかもしれません。

(菅野仁『友だち幻想人と人の〈つながり〉を考える』筑摩書房)


(注)挫折:途中で失敗してやる気を失うこと、あきらめること

(60) ①教えてくれませんとあるが、何を教えてくれないのか。

(61)どのような②工夫か。

(62)筆者は今の学校について何と言っているか。

中文
(2)
 (前略)一人前の大人であるってことには、どんなよい面があるのか、そして、どんな悪い面があるのかを考えてみよう。(中略)もののわかった大人であるというのは、思慮が深くて(注1)判断が正確で、行動に軽はずみな(注2)ところがない、というようなよい面があって、だからこそ古くから日本では①そういう大人であることが尊敬されてきたのだが、ただほめるばかりでは一面的でありすぎる。
 一人前の大人であるが故の欠点だってあるのだ。それはたとえば、斬新な発想が生まれにくい、なんてことである。慣例へのこだわり(注3)が強くて、自由にものが考えられないのだ。そうかと思うと、トラブルを避けようとするあまり、事の根本を改善しようとはしないで、折り合いをつけて(注4)。しまいがちだ、というような欠点もある。とりあえずその場は収まるのだからいいようではあるが、本質的な解決にはなっていないというやつだ。そんなのも大人の知恵で、それで本当によかったのかどうか疑問が残ることもあるのだ。
 大人である、ということにはよい面ももちろんあるが、その悪い面もあるのだとちゃんとわかっていたいものだ。
 そして、そこまで考えてみれば、②逆のほうにも両面があるのだと気がつく。つまり、大人でない、というのは未熟(注5)で恥ずべきことのように思いがちだが、考えてみればそれ故のよい面だってあるのだ。経験による知恵はないかもしれないが、自由に大胆な発想ができるのは、大人でないが故の可能性なのだから。

(清水義範『「大人」がいない…』筑摩書房)


(注1)思慮が深い:注意深く考える
(注2)軽はずみな:深く考えないで言ったりしたりする
(注3)こだわり:小さいことでも必要以上に気にすること
(注4)折り合いをつける:譲り合って互いの意見を一致させる
(注5)未熟:何かをするのに十分な状態になっていないこと

(63) ①そういう大人の特徴と言えるものは何か。

(64)②逆のほうにも両面があるとあるが、ここでの両面とは何か。

(65)この文章で筆者は「大人」についてどのように言っているか。

中文
(3)
 動物の行動や認識をめぐる研究はチンパンジー(注1)が有名だが、イヌには最近までほとんど目が向けられなかった。最古の家畜とされるイヌは習性(注)や生体(注)が人工的に変えられ過ぎて、調べる対象に向かないという考えがあったのだ。研究が盛んになったのは1990年代半ば以降。イヌの心を知りたいという一般からの要望が強いことも①影響しているらしい。
 イヌの知能はどれぐらいか。A教授(心理学)は、人間が目の前で隠した物をにおいに頼らず探し出すカナダの実験結果から、人間の1歳半ぐらいの知恵があることになるとみる。一般的には、イヌの知恵は人間に近いサルより劣るとされてきた。でも、何をもって賢いとするかは見方による。
 中身が見えない、エサが入った入れ物と空の入れ物を見分ける実験。片方を人間が振って音がしなければ、チンパンジーは「もう片方にあるはず」と論理的に判断して正しく見分けられるが、イヌは苦手だ。ところが、人間が「こっちだよ」と片方を指さしで教える方法だと、イヌは簡単にこなし(注4)利口なはずのチンパンジーは②うまくできない
 B教授(動物行動学)は「例えると、チンパンジーは科学者、イヌは心理学者」と説明する。イヌもチンパンジーも群れをつくる動物だが、他者の顔色をうかがって(注5)心を読むような社会性はイヌの方が優れているのかもしれないのだ。

(厂心も空気も読める犬」2012年6月25日付け朝日新聞朝刊による)


(注1)チンパンジー:サルの一種
(注2)習性:動物に見られる行動の特性
(注3)生態:生物が自然の中で生活している様子、状態
(注4)こなす:与えられた仕事などをうまく処理する
(注5)顔色をうかがう:相手の表情から気持ちを探る

(66)①影響しているとあるが、何に影響しているのか。

(67)②うまくできないのはなぜか。

(68)筆者はイヌとチンパンジーについてどのように述べているか。

統合理解
A
 多くの学生が苦手とするのが「面接試験」であるが、最近の傾向として、その場の雰囲気がよくなかったり少しでも厳しい質問をされたりすると「もうだめだ」と感じてしまう人が多いようだ。面接官がいつも笑顔で学生を迎えてくれるとは限らないし、不機嫌そうな人や無表情な人もいるかもしれない。そうであれば、その面接官がもともとそういう性格なのだと思ったほうがよいだろう。面接では自分の評価が気になるため面接官の態度に対して敏感に(注)なっているものだが、面接官の態度など気にする必要はないのである。

B
 これまでたくさんの学生を面接してきましたが、面接対策の本に書いてある言葉をそのまま使って答えようとする学生が非常に多いです。本で読んだ言葉や誰かから聞いた言葉ではなく、多少下手でも自分自身の言葉で仕事や将来について話してほしいのですが、そういう学生にはめったに会えません。ですから、ごくまれにそういう学生に出会うと面接のやりがいを感じます。自分の言葉で話せるということは、自分の頭できちんと考えているということだからです。このような学生はどの企業からも求められるだろうし、将来、伸びる可能性もあると思います。これから面接試験を受けようという皆さんは、ぜひ自分自身の言葉を使ってください。
(注)敏感な:感じやすい

(69)AとBのどちらの文章にも触れられている点は何か。

(70)入社試験の面接について、AとBはどのように述べているか。

長文
(前略)自転車の取材を進めていると、必ずといってよいほど、「本当に自転車に乗る人のマナー(注1)は悪いですからねえ」と同意を求められることが多い。
 では、自動車の運転者や歩行者のマナーがそれに比べてよいのかといえば、日々自転車のサドルの上から両者の動きをつぶさに(注2)見ている私には①そうは思えない
 信号が黄色から赤に変わってからも、なんとか突っ切ろうと猛スピード(注3)で交差点を渡ろうとする車、駐停車禁止エリアで路上駐車をしている上に、後方から自転車が近づいているのを確認しないで、運転席のドアを開けようとするドライバー、車道脇を自転車で走っていると、すぐ前の車がウインカー(注4)も出さず、突然左折しようとして、ぶつかりそうになった経験は数知れない。まして、自動車の運転者は、免許制度のない自転車の利用者とは違い、道路交通法をきちんと勉強し、学科試験に合格して免許を取得した人ばかりである。その上で、危険な運転をしているとしたら、確信犯であるぶん、性質が悪いという見方もできる。 
 歩行者は歩行者で、携帯電話ばかり見ていて、まったく周囲に気を配らずに、堂々と赤信号を渡る姿に幾度となく出会うし、自転車レーンをまったく悪びれずに歩く集団に行きあうと、本当に②がっかりする
 マナーの悪い人の「出現率」は、実は、車の運転手であろうと、歩行者であろうと、そうは変わらないのではないかというのが、私の経験上による結論である。自転車に乗っている人も、次の瞬間には歩行者になっていたり、別の日には車に乗ったりしているわけだから、同じ人が自転車に乗っているときだけ、マナーが悪くなっているとは思えない。
 ただ、道路交通法違反をしていても、自動車ほど警察から取り締まられない(注5)こと、歩行者のマナー違反に比べ、加害者として致命的な(注6)事故を引き起こしかねないために、より見られる目が厳しいということにすぎない。
 であれば、車と同様に、自転車も法規・マナーを守りましょうという精神論ではなく、規則の徹底とその厳しい運用で、誰もがルールを遵守する社会を作るほかない。

(佐滝剛弘『それでも、自転車に乗りますか?』祥伝社による)


(注1)マナー:態度、礼儀
(注2)つぶさに:細かく
(注3)猛スピード:とても速い速度
(注4)ウインカー:方向指示器、自動車などにつける部品で右や左などに進路を変更するときに方向を示すもの
(注5)取り締まる:不正が行われないように管理する
(注6)致命的な:(失敗や損害など)もとの状態に戻せない

(71)筆者は何について①①そうは思えないと述べているのか。

(72)②がっかりするのはなぜか。

(73)この文章で筆者が言いたいことは何か。

情報検索

(74)さくら市民である田中さんは自然や科学をテーマにした体験型の講座に興味がある。平日に受講できる講座はどれか。

(75) 山田さんは企業をテーマにした講義を聞きたいと考えている。仕事の関係で9月以降にしか受講できないが、受護できる講座はいくつか。山田さんはさくら市に住んでいない。