(2)
以下は、幼児の心の発達について述べた文章である。
2、3歳ごろになると、「自分でやりたい」という思いが強くなり、何に対しても「イヤ!」、「〇〇ちゃん(注1)がやるの!」というように、養育者(注2)に対する反抗が顕著になる(注3)(第一反抗期)。それまでは養育者の意図に従って行動していたのに対して、自我が芽生えて(注4)自分のやりたいことが生じ、養育者の意図とは異なる自分の意思を養育者に表明する(注5)ことで起こる。この時期には、だめなことはだめと伝えたり、ひととかかわる時にはルールがあることを根気強く教えていく必要がある。そのことにより、幼児は自分の気持ちをコントロールする力を身につける。
このころの幼児は、他者の立場に立ってものごとを考えることが難しく、自分の考えと相手の考えが同じであるととらえている。このとらえ方を①自己中心的思考とよぶ。例えば、自分が楽しいときには、相手も同じように楽しいと感じているととらえていたり、自分の見た夢のことを相手も知っていると思っている状態である。
(中略)
目の前にない物やできごとを思い浮かべることを象徴的思考と言う。乳児(注6)期には、「目の前にないものは存在しない」という考え方をする。そのため、母親が乳児の目の前からいなくなると母親が存在しなくなったと思い、不安になって泣く。しかし、幼児期になり、象徴的思考ができるようになると、目の前に母親がいなくても、母親がこの世(注7)からいなくなったわけではないと考えられるようになるため不安を訴えて泣くことはなくなる。
(注1)〇〇ちゃん:ここでは、自分
(注2)養育者:ここでは、親など子供を育てる人
(注3)顕著になる:ここでは、多く見られるようになる
(注4)自我が芽生える:ここでは、自分の考えが生まれる
(注5)表明する:はっきり表す
(注6)乳児:1歳ごろまでの子供
(注7)この世:現実の世界