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作者というものは、たいていの場合、自分の詩のいい読者ではありえません。作意(注)や創作過程が心につよく残っていて、作品を客観的に見ることを妨げるからです。だれだって、自分のことは自分がもっともよく知っていると思うでしょう。ですが、その反面、他人にはすぐわかるのに、本人にはいっこうにわからないような一面が人間にはあります。作者と詩の場合もこれと同じです。だから、作者がこの詩についてはこう言っているのだから、これが正しいというような考え方には、僕は①あまり賛成できません。
(注)作意:作成した意図