短文
(1)
 65人の男女にコメディ、科学番組、レスリング、歌舞伎(注1)などの動画を見てもらい、まばたき(注2)の回数を測定した。そのデータと「面白い」と感じた程度との関係を調べてみると、たしかに、面白いと思うものを見たときには、男女ともにまばたきの回数が少なかった。
 ちなみにまばたきが一番少なかったのはレスリングで、多かったのは歌舞伎だ。私のような歌舞伎好きには残念な結果だが、そういう好みの人たちだったのだろう。このようなまばたきのデータは、テレビやCMのリサーチに使われている。

(族中直行 「アップルのリンゴはなぜかじりかけなのか?一心をつかむニュー マーケティング』 光文社による)


(注1) 歌舞伎 : 日本の伝統芸能の一つ
(注2) まばたき : まぶたを開閉させる運動

(55) 本文のデータは、どういう考えがもとになっているか。

短文
(2)
 程度に差はありますが、失敗したときには誰だってショックを受けるし傷つきます。本人は気づかないかもしれませんが、直後はエネルギーが漏れてガス欠状態になっています。こういうときに失敗とちゃんと向き合い、きちんとした対応をしようとしても、よい結果は得られません。大切なのは「人(自分)は弱い」ということを認めることです。自分が、いまはまだ失敗に立ち向かえない状態にあることを温く受け入れて、そのうえでエネルギーが自然に回復するのを待つしかないのです。

(畑村洋太郎『回復カ一失敗からの復活] 講談社による)

(56) 筆者は失敗した時はどうすればいいと言っているか。

短文
(3)
 もともと、人の脳は他人の行動を理解できるようにできています。そのことは、さまざまな形でわかってきています。
 有名なのは、ミラーニューロンでしょう。人がある動作をした際に、それを見ている人の脳内を調べると、実際に動作をしている人と同じ部位が反応する。見ているだけなのに、相手と同じょうに脳が働く。こういう脳の働きが、他人に共感したり、気持ちを理解したりするのに役立っているのではないか、と考えられています。

(養老生司 自分」 の璧」 新潮社による)

(57)本文によると、人が他人に共感するのはどうしてか。

短文
(4)
 以下は、通信販売の会社から商品を買った山田さんに来たメールである。

 山田花子さま
 この度は弊社の商品をお買い求めいただきまして、まことにありがとうございました。
 弊社におきましては、お客さまにご満足いただける商品を作ろうと日々努力を重ねております。
 つきましては、お買い上げいただきました商品に関しまして、率直なご意見をいただけますと、大変助かります。
 今後ともよりよい商品を提供できますよう改良を重ねていきたいと存じますので、是非ご協力いただきますよう、お願い申し上げます。
 尚、ご協力いただきました場合は、次回のご注文の際の送料を無料とさせていただきます。

〇〇月XX日


・・・(株) 商品開発チーム

(58) メールで頼んでいることは何か。

短文
(5)
 最近、人と話すのが苦手な若い人が増えています。メールはできても、1対1のサシ(注1)でのコミュニケーションとなると、とたんに尻込み(注2)する。とくに相手が職場の上司や目上の人、自分の住む世界とジャンルの異なる人となれば、何をどう話していいかわからない。
 要するに、自分に自信がなくて不安なのです。だから、せっかく上司から「飲みに行くか」と誘われても、「じゃあ、あいつも呼びましょうか」などと、なんとかサシのシチュエーションから逃げようとする。1対2や3以上の関係にしてしまえば、ほかのだれかがしゃべってくれるだろうから、自分は受け身でも安心、安全だからです。

(おちまさと「相手に9害しゃべらせる質問術】PHP研究所による)


(注1) サシ:2人で一緒に仕事をしたり、また向かい合って何かをする状態
(注2) 尻込み:後ろの方に下がること。あることをするのに、こわがってためらうこと。

(59) 本文によると、若い人が1対1のコミュニケーションが苦手なのはなぜか。

中文
(1)
 私はあるビジネスセミナーで聞いてみた。
 「最初に「ん?」『何かへんだな?』という違和感を持ったけれども、いろいろ論理的に考えてみれば「まあ大丈夫だろう」と思えたのでやってみたところ、結果としてやっぱりダメだったという経験はありませんか?あるという方は拍手していただけますか」
 なんと、90パーセント以上の人が拍手をされた。
 ほとんどの人が①そうした経験がある。そして失敗してしまったときに、「ああ、どこかでわかってたのに」「ちょっと引っかかるものがあったんだけどなあ」という言葉がつぶやかれる。
 脳研究の専門家によれば、人問はやってしまったことを自分自身で納得のいくものにするために、「自分がそれをやりたかったのだ」と思い込もうとするようだ。
 最初に感じたちょっとした気づきは、ささやかな感覚なのですぐに無意識の海の底に沈んでいってしまう。失敗体験や後悔のつぶやきもまた、海の底に沈んでいってしまう。そして、また同じようなことを繰り返してしまうという循環だ。
 最初の②違和感をちっときちんとすくいとって活かすことができたら、③リスクを回避していくことができる。

(許藤共「違和感のチカラー最初の「あれ?」』 は案外正しい !] 角川春店による)

(60) ①そうした経験というのは何か。

(61) ここで言う②違和感とはどんなものか。

(62) 筆者は③リスクを回避するために、何が大切だと言っているか。

中文
(2)
 以前、ゼミの面接でグループディスカッションをしたときのことです。まず、ある経済学の本の一章を読んでもらうことにしました。読んだあとに問題を出すのでと言って、とりあえず読んでもらい、「この章のどこが間違っていると思いますか」と①質問をしました。
 なぜそんなことをしたのかというと、それぞれの学生がどういう視点で本を読んでいるか知りたかったからです。先に問題を言うと、学生も私の意図を察知して、間人違いを探すために批判的な目で本を読むことでしょう。でも私は、普段の学生の本の読み方を把握したかったので、あえて②問題を教えなかったのです。  
 その結果わかったことは、ほとんどの学生が本の中身をしっかり頭に入れよう、一生懸命覚えようとして読んでいたということです。面接だから、とくにそういう読み方をした面はあったと思いますが、あまり批判的には読んでいませんでした。
 このとき私が学生に読ませたのは、経済学的なミスや間違いのある文章ではありません。「あなたはこの文章のどこかに、自分では納得できない点やおかしいと思う点はないか。それを探してほしい」というのが私の出題意図でした。
 その後、学生一人ひとりと画接をして話を聞いたところ、どこに間違いがあるのか探すというのは、とても③難しいことだったようです。大部分の学生が、「この本のどこかに(誤字や脱字のような)明らかな間違いがあって、先生はそこを見つけられるかどうかを試しているんだな」と思ったようです。もちろん、なかには「ここが変だ」という意見をきちんと言える学生もあいましたが、それは少数でした。

(柳川纏之『東大教授が教える独学勉強法」草思社による)

(63) 筆者が①質問をした目的は何か。

(64) ②問題を教えなかったことについて、本文の内容と合っているのはどれか。

(65) どうして③難しいことだったのか。

中文
(3) 
 一般には、科学は役に立つものという感覚が強い。生産力や輸送力を高める、生活を便利にするし効率的にもする、細菌やヤウイルスという目に見えない敵をやっつけてくれる、金儲けができる、と科学の効用はさまざまで、人間の役に立ってこそ科学には価値があると考えるのだ。
 (中略)
 しかし、科学のもう一つの側面を忘れてはならない。①文化としての科学である。それは端的には「役に立たない科学」であるが、「不用の用」という言葉もあるように、不用だと思っていたものが心を励ましたり、広い視点を与えたりして、大きな役に立つこともある。このような、精神に働きかける文化にこそ科学の本質があると考えられないだろうか。
 (中略)
 では、科学を文化として成り立たせているものは何なのだろうか。科学は芸術や宗教と同じような人間の精神的活動の成果であることは当然である。最大の特徴は、②見返り(利益や直接の効能)を求めないけれど、人々の支え(中略)無しには成り立たないということだろう。科学研究からすぐに利得が得られるわけではない。にもかかわらず、科学研究には金がかかり、何らかの形の援助がなければやっていけない。科学者とそのスポンサーたる市民の間に暗黙の社会的契約が結ばれているのである。大学における科学研究に税金が使われるのは、市民の間で文化を大事にするという合意が基礎になっている。

(池内了『科学と人閣の不協和音』角川書店による)

(66) 筆者はなぜ科学を①文化と言っているのか。

(67) ②見返りを求めないとあるが、なぜか。

(68) 筆者の意見として正しいものはどれか。

統合理解
A
 今、日本では電子機器を使って対戦をする「e(エレクトロニック)スポーツ」をスポーツと認めるかということが、議論されています。障害のあるなしにかかわらず対等な立場で競い合うことができ、高齢者も楽しむことができる。スポーツは、今後スポーツとして広まる可能性を持っているという有識者もいます。しかし、ルールに基づく肉体的な運動を通じて社会性や心身の健康を得るのがスポーツの意義なのではないでしょうか。eスポーツは身体的運動にしく、人と直接巡れ合うこともありません。単ななるコンピューターゲームではないかと思うのです。世界保健機関(WHO)は、ゲームがやめられず、日常生活に支障を来すゲー
ム依存症を「ゲーム隆害」という精神疾患と位置づけています。未来を担う若者がスポーツの名の下にゲーム漬けになり、依存症となる可能性があるにもかかわらずそれをスポーツと認めるなど言語道断です。

B
 スポーツとは何だろうか。日本では「運動」とほぼ同義でとらえられることが多いが、海外では少しニュアンスが違っている。もう少し「競技」という意味合いが強いようだ。肉体的な動きによって汗をかくことが日本でのスポーツのイメージであるのに対して、「競う」ことがスポーツであると考える国では、チェスやビりヤード(注1)などもスポーツに分類きれている。日本では将棋(注2)や囲碁(注3)をスポーツであるとする考え方は一般的とは言えまい。「ゲーム大国」と言われてきた日本が、eスポーツに関して世界の流れから取り残されようとしているのは、このようなスポーツに対する考え方の違いが根本にあるからなのではないかと思う。
(注1) ビリヤード : 台上に置いた球を棒で突き、他の球に当てて得点を競うゲーム
(注2) 将棋 (注3) 囲碁: ともに二人で行うポードゲームの一種

(69) AとBに共通している点は何か。

(70) AとBはeスポーツについて、それぞれどのように述べているか。

長文
 本来人間には「疑う力」が備わっていると思われる。子供の頃にはどんなことに対しても、「なやぜ、なに」という疑問がわいてくるものだ。初めはあらゆることに対して興味を持ち、自分の理解できないことに対して疑いを持ち、「なぜ]と大人に尋ねる。そのときに大人が、「こうに決まっているじゃない」と答えてしまって、「なぜ」という疑問にきちんと答えてあげないと、子供の疑う力は徐々に奪われていく。「決まっていることなんだ」と思ってしまえば、それに対する疑いは消えてしまう。こうして徐々に大人になっていくわけだが、秀才と言われる人間はほど、「決まっていること」を覚える能力が高いので、秀才ほど疑う力は衰えていく。①官僚や公務員には秀才が多いが、彼らの多くは、前例主義を取り、自分たちの行っている行政手法に疑いを持っていない。制度や法律のほうが間違っていても、それを疑うようなことはせず、前例を踏襲(注1)していこうとする。仮に疑問を持ったとしても自分たちの力ではどうしようもないというあきらめの気持ちがあるのかもしれないが、なるべく自己矛盾が起こらないように、疑わない習慣を身につけていくようだ。
 それに対して、エジソンのような天才は、「なぜ、なに」という疑う気持ちを突き詰めていったがために、大発明家になっている。
 前述したように、本来は知識が増えるほど、②既存知識とのバッティングが起こり、疑いを持つ場面が増えてくるはずだが、疑う習慣を持っていないと、それができない。官僚の人たちは、知識が豊富なはずだから、それぞれの知識がぶつかり合って、疑問点、矛盾点をたくさん感じているはずなのだが、それをあえて疑わないように封印(注2)しているのかもしれない。
 そうした秀才の人たちも、反抗期の頃にはけっこう疑う力はあったのではないだろうか。反抗期に、親や先生に対して暴力的に逆らう子もいるが、何でも口答えをする「知的反抗」のような反抗法もある。若い時期には、親や先生など大人の権威に逆らいたくなる時期があり、大人が何かを言うと、「それは違うんじゃないか。こういう理由で違うはずだ」と反論したくなるものだ。大人はそれを押さえ込もうとするが、そういう芽を摘まないようにすることも重要だろう知的反抗心をうまく育ててあげれば、疑う力を将来発展させて、高い知的生産活動ができるようになるかもしれないのだ。

(和田秀樹『く医うカ>の習慣術」PHP研究所による)


(注1)踏襲する:先人のやり方や説をそのまま受け継ぐこと
(注2)封印する:それまであった物事や言動を、表に出さないようにすること

(71)①官僚や公務員について、筆者はどう考えているか。

(72)②既存知識とのバッティングとはどういうことか。

(73)本文の内容に合っているのはどれか。

情報検索

(74) カリナさんは定期利用をしたいと考えている。カリナさんが利用登録をするための手続きとして正しいのはどれか。

(75) 大学生のアリフさんはサマーコースに参加するため、その期間だけ自転車駐車場を利用しようと考えている。サマーコースは7月30日~8月29日で、通学回数は7月が2回、8月が20回、全部で22回である。最も安い場合でいくらかかるか。