短文
(1) 
 以下は、ペットとして犬を飼う人に向けて書かれた文章である。
 犬は、本能(注1)のままに働くことに喜びを感じます。獲物(注2)を探す、追いかける、取ってくる―などはその象徴的な行動です。しかし現代の人間社会では、このような行動はほとんど必要なくなってしまいました。その結果、「犬がしたいこと」と「飼い主がさせたいこと」との間に、①ギャップが生じるようになってきました。
(注1)本能:ここでは、生まれつき持っている性質
(注2)獲物:ここでは、食べるための動物

(52)ギャップが生じるのはなぜか。

短文
(2)
 壁はともすれば(注1)行動の限界を決めてしまうネガティブな(注2)イメージをもたれていますが、実は人間が他の個体と関係を調整するための大変重要なエレメント(注3)だったのではないか、とぼくは考えています。壁があったから、人間は仲良く暮らしてこられたのだ、と。壁によって隔てられれば、心理的な距離ができますから、密度高く住むこともできて、移動する距離は少なくてすむ。会おうと思えば会えますし、会いたくなければ壁のうちにこもっていれば(注4)いい。
(注1)ともすれば~もたれる:ここでは、~もたれることもある
(注2)ネガティブな:ここでは、マイナスの
(注3)エレメント:要素
(注4)~にこもっている:~から出ないでいる

(53)筆者は、壁にはどのような役割があると考えているか。

短文
(3)
以下は、ある会社で回覧された文書である。

10月15日


各課担当者各位

総務課


年始の挨拶状について


 取引先にお送りする年始の挨拶状につきまして、総務課から一括発送する相手先のリストを作成しました。添付の資料を各課でご確認のうえ、修正が必要な箇所があれば来週木曜(22日)までに総務課にご連絡ください。
 また、そのほかに各課から直接送付したい相手先がある場合は、各課で発送をお願いします。必要分の挨拶状を配りますので、10月30日までにその数をお知らせください。12月初旬に各課に配る予定です。
以上

(54)各課の担当者がしなければならないこととして合っているのはどれか。

短文
(4)
 研究者人口が増えれば、それだけ科学の進歩に速くなる。もちろん、重要な科学的成果があげられるかどうかは、研究の作業量に比例するものではない。運にも左右される偶然性の高いものだ。だが、様々な考えを持った多様な研究者が多数研究に従事する(注1)ことで、誰かが大発見をする確率が高くなる。
 多くの研究者は、多様な考えに基づいて研究することはこのうえなく(注2)重要だ。多数の研究者がひとつの考え方に沿って研究するというのでは、未来はないだろう。
(注1)~に従事する:ここでは、~を行う
(注2)このうえなく:最も

(55)筆者の考えに合うのはどれか。

短文
(5)
 もしつらい恋愛で苦しんだ人が、ある恋愛ものを読んで慰められたとすると、そのときのことというのは、あとあとまで、ずっと覚えているものです。人生でそういう経験をもっている人はやっぱり幸いだと、私は思います。何も恋愛に限らないけれど、そのような深い体験をもっていると、こんどは『源氏物語』のような古典作品を読んでも、深く味わうことができる。そうやって人間の精神は大人になっていくんです。

(56)筆者によると、人間の精神が大人になるには、何が必要か。

中文
(1)
 嫌いな子どもが多いピーマンは、β-カロテン(注1)を含んでいる。しかし、プロッコリーやほうれん草でも摂れる栄養素であることから、①「嫌いなピーマンを無理に食べさせる必要はない」と考える人もいる。確かにプロッコリーやほうれん草を食べられるなら、ピーマンにこだわる必要は栄養学的にはほとんどないであろう。
 それでも、幼児期はいろいろな生活環境に心や体を適応させる(注2)意味で重要な時期であることから、多様な食材を食べる経験を積む必要があると考える。そこで、切り方や味つけを工夫し、「ひと口でもいいから食べてみよう」と励まし(注3)、ほんの少しでも食べたら「すごいね!」と褒め、子ども自身がさまざまな食材を受容できる(注4)環境をつくることが大切である。
 嫌いな食材を食べられたという達成感は、褒められることでさらに強められ、自信が生まれる。その自信がやる気につながり、物事に前向きに(注5)取り組めるようになるであろう。例えば人間関係について考えてみると、世の中には自分と気の合わない人もいるが、「嫌いだからつきあわない」と切り捨てるわけにはいかず、ある程度つきあっていかなければならない場面も多い。相手を好きになれなくても「こんな考え方があってもいい」とその人の個性を受け入れることで、円滑な(注6)人間関係を築くことができる。
(注1)β-カロテン:栄養素の一つ
(注2)適応させる:ここでは、合わせる
(注3)励ます:やる気にさせる
(注4)受容できる:受け入れることのできる
(注5)前向きに:ここでは、自分から進んで
(注6)円滑な:ここでは、良い

(57)①「嫌いなピーマンを無理に食べさせる必要はない」と考える理由として合っているのはどれか。

(58)筆者は、幼児期の子どもにどのようなことをするのがいいと言っているか。

(59)筆者は、嫌いなものを食べて褒められた経験がどのようなことにつながると考えているか。

中文
(2)
 ストレスという言葉は広く知られるようになった。しかし、ストレスにもよい面があると言うと、いまでも驚かれることがある。ストレスはよくないイメージがつきものだからだ。(注1)
(中略)
 よいストレスというとイメージしづらいかもしれないが、逆に何もストレスを感じないでのんびりしている状態を想像してほしい。①そのような状態では仕事や勉強が先に進まなくなる。
 私もそうだが、時間が十分にあると考えると、のんびりしすぎて仕事に手がつかなくなる。意味もなくテレビを見ているうちにいつの間にか時間が過ぎてしまい、後悔することになる。ストレスがないと、集中力や緊張感がなくなるし、何かをしようという気力さえなくなってくる。
 私たちは、ほどほどに(注2)ストレスを感じるからこそ、いろいろなことができる。心配になるから準備をするし、緊張するから集中することができる。これは、こころだけではない。体にとっても、運動や規則的な生活など、ほどほどのストレスは大切だ。
 ストレスは人生のスパイスだといわれるのは、そのためである。
(注1)~がつきものだ:~が必ずついてくるものだ
(注2)ほどほどに:適度に

(60)①そのような状態とあるが、どのような状態か。

(61)ストレスのよい面とは何か。

(62)ストレスについて、筆者はどのように述べているか。

中文
(3)
 以下は、写真家について書かれた文章である。
 人の顔には個性が表れている。よく「写真家はその人の内面に迫らなくてはいけない」というようなことを言うが、心配しなくても写真には自然にそれが写っている。それこそが写真というものの特性(注1)だ。撮る者や撮られる者が気づいていてもいなくても、写真は①そこにあるものをかなり正直に描き出す。自然に、当たり前のようにいま撮った写真にはその人の「人となり」(注2)が、顔や髪形、肩や手のしぐさに表れて写っている。
 ポイントは、写真家が〝そのこと〟を強く意識しているかどうかという点にある。〝そのこと〟とはいま言ったふたつのこと。「人を撮ればその人の内面が写る」ということと「写真は写真家の気づかないことまで写している」ということ。(中略)②写真は2度撮られるという。シャッターを切る(注3)ときと選ぶときの2度だ。撮影の現場で気づいていなかったことも、それがその被写体(注4)の重要な構成要素であり、そこに写真家がセレクト(注5)の段階で気づき、そのことが一番よく表現された一枚を選ぶなら、それはその写真家の立派な作品、成功作だ。そしていい写真家ならその発見を生かして、じゃあ現場でもっとこういうことをやっておけばよかったというフィードバック(注6)を得て次の撮影に向かう。そしてまた撮れた写真でまた新しいことに気づき、それを生かしていく。つまり写真家は前もって(注7)すべてを知っている人ではないが、なにも知らないで済ます人でもない、ということだ。
(注1)特性:特徴
(注2)その人の「人となり」:その人らしさ
(注3)シャッターを切る:シャッターを押す
(注4)被写体:ここでは、写真に撮られる人
(注5)セレクトの段階:選ぶ段階
(注6)フィードバック:ここでは、反省点
(注7)前もって:事前に

(63)①そこにあるものとは何か。

(64)②写真は2度撮られるとあるが、なぜそう考えられるのか。

(65)筆者によると、いい写真家とはどのような人か。

統合理解
A
睡眠不足で悩む人が多い。そのような人は、十分な睡眠時間が取れていないからだと思うかもしれないが、実はぐっすり眠れていないことが原因のほうが多い。睡眠時間の長さだけでなく、眠りの質を大切にしなければよく眠れたとは感じられないのだ。
質のよい睡眠をとるためには、睡眠の妨げになる緊張や興奮を取り除いて心や体を落ち着かせることが大事だ。例えば、私は温かい牛乳を飲んだりクラシック音楽を聞いたりしている。寝る前には心配事や悩みについて考えたり、テレビやケータイの画面などを見すぎたりしないほうがいい。寝る前の時間の過ごし方について、少し意識を変えてみることで睡眠の悩みの改善につながるはずだ。

B
朝起きたとき、よく眠れなかった、疲れが取れていない、などと感じたことがありませんか。睡眠不足を感じるのは、眠りが浅いことが原因です。日によって寝る時間や起きる時間ができるだけ異ならないように、生活のリズムを整えることが大事だという意見もあります。しかし、最も大きな問題は、質のよい睡眠が取れていないということなのです。
睡眠不足にならないようにするには、睡眠に適した環境を作ることが大切です。部屋の照明や温度を調整することはもちろん、体に負担のかからない、自分に合った枕や布団も睡眠をサポートしてくれます。よい睡眠は少しの工夫で得られるようになるものです。

(66)睡眠不足で悩む人について、AとBが共通して原因だと指摘していることは何か。

(67)睡眠不足を解消するために、AとBはどのようなアドバイスをしているか。

長文
以下は、カウンセラーに相談することについて書かれた文章である。

 人からよく相談される人というのは、じっくり相手の話に耳を傾けてくれる人であるはずだ。相談者は、答をすぐに出してほしいのではなく、まずはじっくり話を聞いてほしいのだ。語りたいのだ。
相談に行って、親切にもこちらに代わって即座に答を出してくれる人がいたとして、それは助かったと素直にその回答を採用するほど、僕たちは単純素朴ではない。だいいち、本人がいくら考えてもわからない難問に対して、事情もよくわからない他人からそんなに簡単に答を出されてはたまらない。
 だからといって、人に話すことが役に立たないというのではない。いや、むしろ大いに役立つのである。あんなに悩んでいたのに、いろいろ迷うばかりでどうにも答が出なかったのに、人に話してみたら案外簡単に建設的な(注1)解決策が見つかった。そんなことも珍しくない。(中略)
 そうしたケースでは、悩みや迷いを話した相手が答を出してくれたわけではない。相手に事情がわかるように話して聞かせているうちに、これまでと違った視点からの回答がふと思い浮かんだのである。これまでいくら考えても思い浮かばなかったことが、別の構図(注2)のもとに突然浮かび上がってくる。迷いが吹っ切れる(注3)瞬間というのも、そのようにして訪れるのだろう。
では、そうした別の構図をもたらす(注4)新たな視点は、いったいどこからやってくるのか。それは、語り合いの中からというしかない。聞き手がいることで、聞き手にわかるように事情や自分の悩める思いを説明しようとする。聞き手がわかってくれないことには話が進まないので、聞き手に理解してもらうにはどう説明するのがよいかを工夫しながら話すことになる。
 そこで意識されるのが、聞き手の理解の枠組み(注5)、つまり聞き手がものごとを理解するのに主として用いている枠組みである。聞き手の理解の枠組みを意識しながら、事情を説明し、自分の悩める思いを説明しているうちに、自分の理解の枠組みと聞き手の理解の枠組みが交錯(注6)しつつ融合し(注7)、そこに自分ひとりで考えていたときとは違った視点がもたらされる。そんな感じなのではないだろうか。
 その新たな視点を採用してみると、これまで経験も違った意味をもってくる。目の前の現実の見え方も一変する。
(注1)建設的な:ここでは、よりよい
(注2)構図:ここでは、とらえ方
(注3)吹っ切れる:消えてなくなる
(注4)もたらす:ここでは、生み出す
(注5)枠組み:ここでは、方法
(注6)交錯する:交差する
(注7)融合する:一つになる

(68)筆者によると、相談者が最初に聞き手に求めることは何か。

(69)筆者によると、語り合いの中で相談者はどのように話そうとするか。

(70)筆者の考えに合うのはどれか。

情報検索