またひとつ、前途が心配な空港が誕生した。全国で98番目となった茨城(いばらき)空港。経営を黒字にできる確かな見通しもないままつくられたのは、なぜなのか。よく考えてみたい。
 空港経営を黒字にできなければ、その負担を負うのは国民である。 
地元には、羽田(はねだ)空港や成田(なりた)空港に続く「首都圏第3空港」として期待する声もある。だが、茨城空港の定期就航はソウル便と神戸便のわずか2路線しか決まっていない。
 成田や羽田に近すぎて、航空各社が就航を見合わせた。年間の利用客数は、着工前の予測の5分の1ほどしか見込めない状況にある。空港運営で大きな赤字が避けられないほか、県の公社が営むターミナルビルでも赤字は年間2千万円ほどになりそうだ。
 需要が期待はずれとなった空港は( 41 )。海外も含めたビジネスや観光などで、利用客がこれから増えるに違いない。そんな捕らぬタヌキの皮算用があちこちで幅をきかせ、地元の期待をあおった。しかし、開港後は厳しい現実に直面する。日本中、そんな空港であふれている。
 国土交通省(こくどこうつうしょう)いまとめた全国の空港の国内線の( 42‐a )によれば、比較可能な69空港のうち、実績が需要( 42‐b )を上回ったのはわずか8空港だった。
 不況も一因ではあろう。しかし、建設反対論を押し切ろうと、( 43 )甘い需要見通しをつくったのではなかったか。そんな疑いもぬぐえない。
 需要予測は、人口や国内総生産の将来予想、観光需要などをもとに作られる。本来は客観的なものとなる( 44 )、その調査の多くは国土交通省出身者が幹部を務める財団法人などに委託されている。
 全国の空港で駐車場や保安業務の多くを請け負っているのは国交省(こっこうしょう)航空局が所管する27の公益法人だ。うち20法人に官僚700人以上が天下っている。空港利権に期待する関連業界や自治体、政治家。官僚もそのなれ合い構造にくみした結果が、無責任な空港建設につながったのではないか。
 98空港の多くは赤字経営だ。その運営維持に巨額の税金がつぎ込まれ続ける事実も忘れてはならない。昨年1月に日本航空が撤退して経営が苦しい福島(ふくしま)空港では、空港運営の赤字を税金で年間3億~4億円穴埋めしている。
 アジアなどからの客を呼び込むなど、各空港が経営の改善に向けて努力することが望まれる。だが赤字垂れ流しをいつまでも続けることはできない。見通しが困難な空港は、思い切って統廃合を進めるしかない。
 ハブ化する羽田との連絡など航空網の未来図は( 45 )、新幹線と高速道路も含む総合的な基幹交通ネットワークを描きながら、空港ごとの採算性を厳しく問いたい。

(「朝日新聞」2010年3月12日付)

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