短文
(1)
以下は、辞書の編集にかかわったことのある人が書いた文章である。
 最新の意味が、辞書に載ってない、とはよく言われることである。保守的 (注1)すぎる、と。辞書は、その点、小回り(注2)がきかない。けれども、最新の意味を辞 書に載せたとたん、その意味が消えてしまったらどうだろう。その辞書は、もう使われ もしない古い意味を載せていることになる。だから、辞書の編者は、 新しい意味が、 日本語の中に、 きちんと定着するかどうかを見極め(注2)ている。 保守的というより、 慎重だと言ってほしい。

(小野正弘 『オノマトべがあるから日本語は楽しいー擬音語. 擬態語の豊かな世 界』による)


(注1)保守的:新しいものを受け入れず、古いものを守ろうとするこ と。
(注 2)小回りがきく:状況にすぐに対応できる 。
(注 3)見極める:ここでは、十分に観察し、確かめる 。

(55)最新の意味が、辞書に載っていないとあるが、なぜか。

短文
(2)
以下はある会社で回覧された文章である。
2013年7月29日
総経理

ゴミの分別に関するお願い


各位
 皆さまのご協力のおかげで、 ごみの分別状況は改善されてきましたが、リサイクル可能な紙類の多くが、いまだに「燃えるごみ」のボックスに捨てられています。
 例えば、新聞、雑誌だけでなく、菓子箱、紙袋などもリサイクルが可能です。これらは必ず「リサイクル」のボックスに入れてください。
 詳しい分別方法は、ボックスの上に掲示しておきますので、捨てる前に再度ご確認ください。分別の徹底をお願いいたします。
以上

(56)この文章で最も伝えたいことは何か。

短文
(3)
以下は、ある庭園の案内である。
 多田庭園は地元有力者多田家の別荘の庭を保存したもので、一般に公開されてい ます。庭の一 角には1800年代初めまで使用されていた伝統的な建物も残されて います。
 庭の中心には池があり、 滝が約3メートルの高さから流れ落ちています。 夏は滝の 音が涼しげで、暑さ を忘れさせてくれます。秋の夜にはライトアップが行われ、紅葉 と滝が光の中に浮んで見えて見事です。 そのため、この時期には多くの観光客が訪れ ます。

(57)この案内から、多田庭園についてどんなことがわかるか。

短文
(4)
以下は、保護者に向けて書かれた文章である。
 最初に知っておきたいのは、保護者が嫌いなものは、子どもも好きになれないということです。 普段から「まずい、嫌い」と聞かされているものを美味しいと思えないのは当然です。また、嫌がるものを無理に食べさせても、嫌な思い出が残るばかりで、 良い結果は出ません。
 それに対して、最初は苦手だった食べ物でも、周囲の大人たちが「美味しいね」と笑顔で食べている姿を見て興味が湧き、 食べられるようになることがあります。つまり、偏食をなくすには「親子で一緒に楽しみながら」がコツなのです。

(58)筆者の考えに合うのはどれか

短文
(5)
学歴があっても学力がない人は教えた仕事だけは本当にきちんとやります。 しか し、自分で考えることに積極的ではないので進歩が遅い。
体力があっても根性がない人はあきらめが早い。それはいまの仕事で自分に何か求 められているかを突 き詰めて、(注)考えていないから、 やる気が湧いてこないのです。
つまり、この2タイプは自分の仕事に対して無関係なのです。少なくとも上司の目には そう映ります。

(長谷川和廣「社長のノート」による)


(注)突き詰めて:ここでは、徹底的に

(59)この2タイプとあるが、この2タイプのどちらにも言えることはなにか。

中文
(1)
 ①面接の準備をする作業は自分自身を見つめ直すいいきっかけになると私は思います。
自分って要するになんなんだろう?何が人と違って、 どこが優れているんだろう? 普段は自分自身のことをそこまで考えないでしょうが、面接に臨む(注1)ためには、 自分で自分を的確に語れるようになっていなくてはダメで す。 それも短い的確な言葉に 絞り込まなければなりません。
 新聞記事をよく見てください。太い大見出しというのは10文字以下です。あれがニュースです。世界中に起きていること、国会で起きていること、大きな事件、それらをたった10文字以下で表現している のです。
 一日の国会でどれだけたくさんの論戦が戦わされていることでしょう。その事 実だけを列挙(注2)しても 新聞にはなりません。すべてを書かれても、読み手はそのすべてを受け取ることもできません。 そこで記者が膨大な事実の中からニュースと判 断されるものを探し出し、たった一言でまとめてしまう、それがニュースであり、大見出しなのです。
 (中略)
 面接で自分を語るということは②自分自身を見出しにするということです。 自分の人生という長く膨大な時の流れと経験の数々、その都度(注3)、心に去来した(注4)ありとあらゆる(注5)思い、それをたったヒトコトで(注6)表現するので す。
 ヒトコトなんかじゃ語れないことは分かっています。でも、ヒトコトで語らなけ ればならないのです。

(黒石祐治「メッセージを高める 黒石の法則」による)


(注1)面接に臨む:面接を受ける
(注2)列挙する:並べる
(注3)その都度:そのたびに
(注4)心に去来する:ここでは、心に浮かぶ
(注5)ありとあらゆる:すべての
(注6)ヒトコト:普通「一言」と書く

(60)①面接の準備をする作業について、筆者はどのように考えているか。

(61)面接と新聞の共通点は何か。

(62)②自分自身を見出しにするとあるが、どういうことか。

中文
(2)
 美術館に展示(注1)してあるものに答案は一つもない。その作品をどう観るか はまったくの自由だ。もちろん、その作品を制作したアーティストの意図は存在する。 しかし、それは決してただ一つの答案ではない。作者も考えていなかったような見方、 読み方ができることが芸術作品の魅力 (みりょく ) なのだ。優れた作品は作者の意図を軽 軽々を超えて、観客の心のなかで多様な気づきを生み出していく。多様な解釈(かいし ゃく)ができることは、優れた美術作品の条件だと言ってもいい。
 しかし、日本人は、この「答えがない」ことが苦手なのだ。「美術が難しい」「絵 がわからない」という声を よく聞くのは、多くの日本人が美術や絵の見方に「正確」が あると思っているからである。欧米ではこうした声は聞かれない。「美術は好きじゃな い」「絵には興味ない」という人はいる。しかし、「わからない」もの だと思っている 人はあまりないのではないかと思う。
 ただし、「絵がわからない」と当惑(とうわく) (注記2) 気味につぶやくのは 大人たちだけだ。子供はそんなこ とは言わない。
 美術館で子供たちは、それぞれのや り方で作品を受け止める。 (中略)
 面白いと思えばハマる ( 注記3) 。思わなければ忘 れてしまう。子供たちと美術の最初の出会いはそれでいいのだと思う。

(衰豊『超(集客力)革命―人気美術館が知っているお客の呼び方』による)


(注1) 展示(てんじ)する:並べて見せる
(注2) 当惑(とうわく)気味につぶやく:困ったように小声で言う
(注3) ハマる:ここでは、夢中になる

(63)筆者は、どのような芸術作品が優れていると述べているか。

(64)筆者によると、日本人の大人が美術を難しいと感じるのはなぜか。

(65)子供と美術の出会いについて、筆者はどのように考えているか。

中文
(3)
 暑い夏、外を歩くと汗が出る。汗を止めるために冷房のきいた部屋に入る。誰もがしがちな行動だが、実は私たちの体にとっては①良いことではない
 汗は汗腺によって作られるが、この汗腺は汗を作るだけだはなく、汗を体外に出す働きも持っている。 そして多くの汗腺が活発に働いていれば、 蒸発しやすいさらさらした汗が作られ、体温調節がスムーズに 行われる。 汗腺は人の体には200~500万か所ほどあるが、通常、そのうちの半分程度が働かずに 休んでいる。そして、通常でも半分しか働いていないのに、 冷房を多用するなどして汗を出さないでいると、 さらに休む 汗腺が増えていく。
 働いている汗腺が100か所あって、そこで100ccの汗を作って出すという処理をしなければならないとして考えてみよう。その時にもし冷房のきいた部屋に入り②汗腺が50か所しか働かなくなれば、一カ所当たり1ccの処理のはずが、2倍の2ccの処理になる。そうなると、処理が問に合わず、塩分などの 体内に吸収されるべき成分 を含んだままの汗が体外出てしまうことになる。このような汗はべたべたとして おり、 蒸発しにくく、 「蒸発することで体温調節をする」 という汗の役割をうまく果たせない。
 休む汗腺を増やさないためには、日ごろから汗が出る時にはそのまま出すという生活をしたほうがいい。 飲食物に気をつけることも有効である。汗が出ている時に冷えたものをとると、脳が「体は冷えた」と判 断し、汗を止めてしまうので注意が必要だ。

(66)①良いことではないとあるが、なぜか。

(67)②汗腺が50か所しか働かなくなればとあるが、そうなった場合どうなるか

(68)筆者によると、良い汗を出すにはどうすればよいか。

統合理解
A
 1969年に人類は初めて月に到達した。 その後も人類の夢はとどまらず、 各国は国 の誇りをかけて膨 大な費用を使い、先を争うように宇宙開発を進めてきた。
 しかし近年、多くの国でこのような状況が問題となっている。他類の国家予算を使うにも関わらず成果が見えにくい宇宙開発に対して、国民が疑問を感じ始めたのだ。
 現在、 世界には環境問題や資源問題など早急に解決しなければならない課題が数多く 存在する。 同じように多額の費用を使うなら、宇宙開発よりも身近で現実的な問題を解決することの方が優先されなければならない。 政府は、我々の生活に直結するような問題にこそ、予算を使うべきである。

B
 宇宙開発に伴い近年の科学技術が発展したと言ってもよい。宇宙開発は、特に気象観 測や通信、 通信、交通システムの分野で、人間生活の向上に大きく貢献してきた。人工衛星技術の進歩により信頼性の高い気象予測が可能になるなど、身近な生活でも、私た ち多くの恩恵を受けていることは誰 もが認める事実だろう。
 しかし近ごろ宇宙開発に対して否定的な意見が多く聞かれるようになってきた。確かに、ばくだいな費用の割に目的も成果も不明瞭だ。
 だが、宇宙開発は短期間で成果が得られるものではない。これまでの成果を活かす ためにも、長期的な視野に立って研究開発を進めていくべきではないだろうか

(69)宇宙開発に対する最 近の意見としてAとBで共通して触れられているのはどれか宇宙開発は費用がかかるが、成果が明確ではない。

(70)宇宙開発について、 A と B はどのように述べているか。

長文
以下は、ある漫画家が書いた文章である。
 僕はいままで数多くの漫画やアニメで未来をイメージしてきた。 未来を「想像」し、そこから作品を「創造」してきた。僕ににとって想像と創造はごく近しい、混じり合ったものだと言っていいだろう。
 では、イメージすること、想像することについて考えてみよう。僕は想像には二種類あると考えている。 可能性が希薄(注1)でも許される 「空想」 と、 角度の高い(注2)データに基づいた「予測」だ。
空想は幻想的(注3)な意味での夢見る世界。予測はやがてこうなるだろうという 現実の延長線上に 浮かぶものだ。 このふたつが自分の頭の中で組み合わせられ、 出来上 がっていくものがぼくにとっての「想像」だ。
 「空想」の中には途方もない(注4)こともある。子どもの時に考えていたこととなんら変わりがない、突 拍子もない(注5)ものも含んでいる。「夢」と言い換えてもい いだろう。しかし、夢や空想だけではどこかものたりない。そこで、現実の延長線上に ある未来についての予測が必要になってくる。しかし、空想が現実からかけ離れるばかりかといえばそうではないし、予測が必ず現実を言い当てるというものでもない。 どちらも、未来をイメージする=想像することのうちにあるのだ。
 (中略)
 僕は空想も予測も好きな少年だった。子どもの頃から「想像」することが大好 きだった。しかし、ぼくが「想像」をただの「想像」に終わらせず、作品を作るという 「創造」 へと結びつけてきたのはなぜだろう。 僕自身はあまり意識してこなかったこと だが、こうして考えてみると、やはり「何のためにえがくのか」という言 葉が浮かび 上がってくる。
 「想像」するだけなら一人でしていけばいい。あるいは、友人たちとのおしゃべりで 十分だろう。しかし、「創造」するためには、そこに「何のために」という強い動機が 必要なのだ。
僕が「想像」したことをもとに作品を「創造」することで、もしかしたら、その 作品をきっかけに何かが変わ るかもしれない。僕も人類の一人として、この地球がより よい方向に進み、幸福な未来へとつながってい いてほしい。
大げさなことはあまり言いたくないが、 大きな目的で、 「地球の未来のために」 僕は 作品をえがいている のかもしれない。

(松本零土「未来創造ー夢の発想法」による)


(注1) 希薄でも:ここでは、低くても
(注2)確度の高い:ここでは、確かな
(注3)幻想的:現実から離れている
(注4)途方もない:とんでもない
(注5)突拍子もない:常識から外れた

(71)空想と予測について、筆者はどのように述べているか。

(72) 筆者にとって、「創造」するとはどういうことか。

(73)筆者の考えに合うものはどれか。

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(74) 次の学生のうち、このコンテストの応募条件を満たしているのは誰か。

(75)このコンテストに応募する際に注意しなければならないことは、次のうちどれか。