短文
 (1) 人間の心理にはハロー(後光)効果といって、最初に受けた印象を強めていく傾向があります。例えばお会いした時に清潔な印象をうけると、その人の部屋が本当は汚かったとしても「部屋はいつもきれいに片づいているに違いない。人間関係もきっとさわやかでしょう」などと、こちらが勝手にその人のよいイメージを重ねていきます。
 反対にだらしない印象を受けると、部屋の中をピカピカにしていても「家の中も汚いだろう」と悪い印象を重ねてしまうようです。

(岩下宣子「実践 マナー塾」2009 年 4 月 18 日付日本経済新聞による)

(55)筆者はハロー効果をどのように説明しているか。

短文
 (2) 木を植えることはいいことだ。われわれは無条件にそう考えがちだ。
 でも、乾燥(かんそう)地帯に木を植えれば、少ししかない木が吸い取られる。悪くすると地下水が()れ、川の流量も減る。
 よく考えてみれば当たり前のことだろう。しかし、森林の役割を重視するあまり、自然の循環(じゅんかん)を忘れた「植林神話」が世界に広がっているそうだ。

(伊藤智章「窓」2008 年 2 月 20 日付朝日新聞夕刊による)

(56)「植林神話」とはどのようなものか。

短文

2010年6月28日


販売店各位

西東薬品株式会社販売部長南五郎


アンケート実施についてのお願い


 拝啓
 いつもお世話になっております。
昨日夏に販売を開始いたしました商品「エネルギーZ」は、おかげざまで順調に売り上げを伸ばしてまいりました。来月、本製品販売|周年を迎えるにあたリ、製品の使用効果、値段などについてお客様のご感想やご希望をうかがいたくアンケートを実施することにいたしました。
 つきましては、本製品をお買い上げのお客様へのアンケー卜用紙の配布およびご協力の呼びかけをお願いいたします。販売店のみなざまにはご面倒をおかけいたしますが、よろしくお願い申し上げます

敬具

(57)ご協力とあるが、だれが何に協力するのか。

短文
 (4) 国際宇宙ステーションは、地球から約400km離れたところを回る巨大(きょだい)な有人実験施設である。宇宙では、地球から運ばれる水はコップ1杯30~40万円に相当するほど高価なものとなるが、2008年にステーションで使用した水をリサイクルする装置が設置された。再生された水は飲料水や実験のほか、酸素を作り出すのにも使われる。いずれ装置が完全に機能すれば、地球から新たに水を運ぶことも不要になる。

(58)再生装置が完全に機能すると、国際宇宙ステーションで使われる水はどうなると述べているか。

短文
 自動車で旅して歩くことを、鉄道の旅よりも良いと感じる所以(注1)は、いつ出発してもいいし、どこでどれだけ立ち止まってもいいということである。
 鉄道の車窓から、「あ、良い風景!」と感心したとて(注2)、それは一瞬のうちに後方に流れ去って実際にその場所に立ってそれを味わうことは事実上不可能である。だから鉄道の車窓の風景は一種の「幻 」(注3)だと言ってもよい。
 しかし、名も無き道を、ゆっくりとドライブして、その行く先々に発見する風景は、自在に(注4)立ち止まり、そして一日でも眺めていることができる。
(注1)所以:理由
(注2)感心したとて:感心したとしても
(注3)幻:あるように見えて、実際には存在しないもの
(注4)自在に:自由に

(59)筆者は自動車の旅のどのような点がいいと思っているか。

中文
(1)①会話の技術は、運転技術とよく似ています。ボーッと運転をしていると、事故を起こしかねません。たとえば、数人で楽しく()り上がっているときに、いきなり入ってきて、自分の話を始める人がいます。あれは、高速道路に加速しないで進入してくる車のようなもので、本人は気づかなくても、入った途端にクラッシュ(注1)して入るのです。
 グループに加わりたいときは、まず()って話を聞くことです。②うなずきながらエンジンを温め、他の車と速度を同じくして会話に加わると、流れにうまく乗ることができます。
 そのうえで、自分の話ばかりしないように注意すること。人は誰でも、自分の話をしたがっているのですから。会話は、ボールゲームのようなものです。サッカーでもバスケットボールでも、ひとりでボールを独占していたら、次からは遊んでもらえなくなります。
 みんなで話しているとき、自分がどれだけ話をしたのか、常に意識していることも必要です。特に、大勢で話しているときは、発言しない人により多くの意識を配ってください。おとなしい人は無視されがちですが、同じ場にいることに敬意を払って、その人にも(注2)話を振らないと。
 つくづく思いますけれど、会話ほど、個人のレベル差が大きいものはありません。充実した会話をしたいのであれば、それなりの準備や練習は必要なのです。私は練習することで得るものは大きいと思いますよ。その中に、人生を変える出会いや幸運が(注3)(ひそ)でいるのではないでしょうか。

(斎藤孝「できる人」の極意!による)

(注1)クラッシュする:衝突事故を起こす
(注2)話を振る:話す機会を与える
(注3)潜んでいる:隠れている

(60)①会話の技術は、運転技術とよく似ていますとあるが、この文章ではどんなところが似ていると述べているか。

(61)②うなずきながらエンジンを温めとあるが、ここではどういうことか。

(62)みんなで会話をしているときには、どのような注意が必要だと述べているか。

中文
(2)2000年から2001年にかけて、全国紙として有名な新聞が、基本の活字を少し大きなものに変えました。地方紙も同じだったと思います。高齢者人口の増加が原因でしょうが、新聞を読む人の総数の中で、老眼鏡ろうがんきょう)(注1)を必要とする人の割合が増えたからです。
 新聞だって「お客様は神様」でしょうから、その「神様」のニーズに沿って紙面を変えるということは、とうぜんのことです。その案内の記事では、これまでの活字と新しい活字を比較して、いかに見やすくなったかがしめされていて、わかりやすく納得できるものでした。そして、各社ほとんど同じことを書いていたと思いますが、紙面の大きさは変えないわけだから、「文字が大きくなった分、文字数を減らさねばなりません。そこで、記事は要点をおさえ(注2)簡略化して適切化をはかる」というような説明になっていました。なるほどと思う一方、①これまではそうでなかったのかなとも思いました。
 大きな活字の本も出まわるようになってきました。とくに辞書は同じ内容で同じデザインで大きな版(注4)のものが出て、老眼鏡なしでも利用できるとありがたがられています。ただサイズが大きくなった分、大きく重いという欠点もありますが、その快適さに換えられないという人には②問題になりません

(光野有次『みんなでつくるバリアフリー』による)

(注1)老眼鏡ろうがんきょう):年をとって近くが見えにくくなった人のための眼鏡
(注2)要点をおさえる:要点をつかむ
(注3)適切化をはかる:適切になるようにする
(注4)はん版:ここでは、サイズ

(63)新聞の文字が大きくなった理由は何か。

(64)①これまではそうでなかったとは、どういう意味か。

(65)②問題になりませんとあるが、何が問題にならないのか。

中文
(3)転職を考えることがときどきある。とはいっても、①それほど本気ではない。ただ、もし別の仕事を選んでいたら、自分はどんな人生だったのかを想像してしまう。想像するだけでもけっこう楽しい。いまの仕事に大きな不満はないが、そうかといって格別面白いというわけでもない。もしこの仕事をしてみたら、自分はもっと充実するのかも、とついつい考えてしまうのだ。
 まあ、隣のしば芝ふ生はよく見えると言われてしまえばそれまでだが、自分にピッタリの洋服がなかなかないように、誰しも(注1)自分だけの仕事を探しているのだろう。洋服は試着できるが、仕事に関しては、試しにちょっと、というわけにはいかない。もっとも多少働いたとしても、仕事の本質はわからないだろうが。
 昔に比べれば、われわれの職業選択の幅ははるかに拡がっている。だけど……これが②自分の仕事だと胸を張って(注2)言える人は意外と少ないのではないだろうか。
 才能があれば、と思う人がいるかもしれない。子供の頃にあこあこが)れていた野球選手とか、大学時代に憧れた映画監督になっていたら、たしかに楽しいだろう。でも、現在、私が思うのは、そんなあこが憧れの世界ではない。たとえ平凡へいぼん)な才能でも、自分にピッタリの仕事を探せればよいと思っている。誰しも、自由な職業選択における自分だけの“必然”(注3)を求めているのではないだろうか。

(梅崎修『マンガに教わる仕事学』による)

(注1)誰しも:誰でも
(注2)胸を張って:自信を持って
(注3)必然:そうなって当然のこと

(66)①それほど本気ではない理由として、本文から考えられることはどれか。

(67)②自分の仕事とはどのような仕事か。

(68)この文章で筆者が言いたいことは何か。

統合理解
A
社内にばかりいると、ビジネスマンとして人脈じんみゃく)(注1)も広がらない。そこで、セミナーや勉強会、講演会などに出かけて自己をみが磨いている人も多いはずだ。しかし意外と、あまりメモもとらず、「聞きっぱなし」という人も多いのではないだろうか。
 話を聞いているときは「なるほどなあ」と思っていても、それを的確にメモしてなければ、あとになって「あの話は何だったっけ」ということになる。人間は忘れやすい動物なのだ。
 では、こういうときのメモはどうすればいいか?
 基本的なことは、話の内容をいちいちすべてメモしまい、ということである。漫然まんぜん)(注2)と聞いて、話したことをすべてメモしていたら、核心かくしん)(注3)が見えなくなる。そこで、自分の仕事やライフスタイルに関係すること、本当に興味のあることしかメモしないのである。

(坂戸健司『メモの技術』による)


B
昔、ある大学者が、尋ねてきた同郷どうきょう)(注4)郷の後輩の大学生に、一字一句教授のことばをノートにとるのは(注5)ぐ愚だとおし訓えた。いまどきの大学で、ノートをとっている学生はいないけれども、戦前の講義といえば、一字一句ノートするのは常識であった。教授も、筆記に(注6)便なように、一句一句、ゆっくり話したものだ。
 その大学者はそういう時代に、全部ノートするのは結局頭によく入らないという点に気付いていたらしい。大事な数字のほかは、ごく要点だけをノートに記入する。その方がずっとよく印象に残るというのである。
字を書いていると、そちらに気をとられて、(注7)内容がおるすになりやすい。

(外出滋比古『思考の生理学』による)

(注1)人脈:人のつながり
(注2)漫然と:あまり注意しないで、なんとなく
(注3)核心:一番大切な部分
(注4)同郷の:同じ出身地の
(注5)愚だ:ばかだ
(注6)便なように:便利なように
(注7)内容がおるすになりやすい:内容に注意が向かなくなりやすい

(69)Aは、なぜメモをとることを勧めているのか。

(70)AとBで共通して述べられていることは何か。

長文

(  ①  )



この言葉は私のオリジナルです。この考え方にたどり着いたのは38歳のときですが、その頃から努力することにたいして抵抗感がなくなり、とても生きやすくなりました。
  私たちはなぜか、中学、高校生のころ頃に「努力する姿」を人に見せることをやめてしまいます。試験前のガリ勉(注1)や運動会前の徒競走ときょうそう)もう)練習(注2)などが、人に知られると気恥ずかしくなってしまうのです。 その心境は複雑です。まず結果が出なかったとき「あいつ、あれだけやってダメだった」とバカにされるのを恐れます。結果が出ても「あれだけ準備すれば当然だ」と評価が下がるのを恐れます。他者の評価を気にし始めると、いずれにせよ努力を隠すに越したことはない(注3)わけです。 それは社会人になっても同じです。得意わざ)について「よほど努力しているのでしょうね」とほ褒められても、「たいしたことはしていません」と②自分の努力をわざわざ否定してしまったりするわけです。  しかし、この「謙遜けんそん)して努力を隠す対応」はとても危険です。なぜなら、努力しなくていいことへの言い訳になる一方で、努力を「かっこう悪い」とする無意識のバリア(注4)になりかねないためです。
  もちろん、努力すれば、すべてがなんとかなるわけではありませんが、努力なしでは何も始まりません。そのためには「努力」という言葉を生活に積極的に取り入れ、そのプロセスを楽しむ仕組みをつくらなければなりません。
  そして、努力を客観視するための測定方法が「時間」なのです。
  努力をする、しないはあくまで主観ですが、その分量を時間換算する仕組みを取り入れれば、自分がどこまで努力をしたのか、わかりやすく管理できるようになり、堂々と(注5)「〇〇については何年間やってきた」と言えます。
  例えば、私はよく「文章を書くのが速い」と言われますが、その場合にこう返すのです。「大学卒業から16年間、独立するまで、文章で顧客こきゃく)(注6)にリポートを作る仕事でしたから速くないと困ります」と。
  努力を時間で測定すれば、時間が有限だからこそ、何を努力するのか自分で考え、決めなければいけません。そうすれば、結果はあとからついてくる、という気持ちになれるま魔ほう法の言葉なのです。

(勝間和代「勝間和代の人生を変えるコトバ」2009年4月11日付朝日新聞による)

(注1)ガリ勉:成績を上げるために勉強ばかりする様子
(注2)もう猛練習:一生けん懸めい命練習すること
(注3)隠すに越したことはない:隠したほうがいい
(注4)バリア:障害となるもの
(注5)堂々と:自信のある様子で
(注6)こきゃく顧客:大切な客

(71)( ① )には、筆者の人生にえい影きょう響を与えた言葉が入る。それはどれか。

(72)②自分の努力をわざわざ否定してしまったりするのはなぜだと筆者は述べているか。

(73)筆者は「努力」についてどのように述べているか。

情報検索

(74)この市民セミナーを受講できるのは次のうちのだれか。

(75)このセミナーの申し込みについて、正しいものはどれか。