身近な製品に使われる資源が足りなくなる。争奪が激化するという。ならば、捨てられる製品の山から探し出して再利用するリサイクルの仕組みをつくれないだろうか。
 そんな知恵が求められているのがレアメタル。液晶パネルや携帯電話、ハイブリッド車などに不可欠な希少金属のことである。日本は、そのほとんどを輸入に頼る。
インジウムやリチウム( 41 )レアメタルは世界的に埋蔵量が少なく、産出国が偏る。しかも新興国の経済成長で需要は増えている。
 次世代自動車に必要な電池の材料になるリチウムをめぐっては、南米ポリピアを舞台に活発な首脳外交が繰り広げられている。日本の主な( 42-a )先である中国が( 42‐b )規制を強化していることも、心配の種だ。
 資源確保の外交努力は重要である。( 43 )、それに頼り切るわけにはいかない。リサイクルの仕組みづくりを進めるとともに、代替材料の開発にも力を注ぎたい。
 注目すべきは、使用済みの家電や携帯電話など非鉄金属やレアメタルを多く含む廃棄物だ。「都市鉱山」とも呼ばれる。だが、解体して資源を効率的に取り出す技術や、回収の仕組みは確立していない。そこに大きなチャンスが眠っている。
 経済産業省(けいざいさんぎょうしょう)をどが昨年11月から2月末まで実施した不要な携帯電話の回収では、56万台が集まった。含まれるパラジウムは約2キロで多くはないが、2億台ともいわれる「たんす携帯」のごく一部だ。消費者が回収に応じやすい環境を( 44 )、増やせる。
 携帯電話に限らず、企業はリサイクルを前提にした製品の設計や販売方法を工夫できる。そうした製品と回収ビジネスを含むリサイクルの仕組みは、新たな雇用を創出する機会となる。
 やがてはレアメタルの枯渇を防ぐ対策の一つとして各国のモデルになったり、資源争奪を緩和する手だてになったりするのではないか。
 とくに中国をはじめとする途上国には、世界中から使用済み家電などの「電子ゴミ」が流れ込む。資源を取り出し、処理する過程でひどい公害を引き起こしている。そうした問題の解決にも( 45 )。
 レアメタルと同じ役割を果たす材料の開発にも期待したい。大学や企業では、亜鉛や鉄などありふれた素材で代用する研究が進んでいる。
 2度の石油ショックが日本の省エネや環境技術の向上を推し進めた物語は、内外で有名だ。不足を克服するための知恵を再び発揮して、新しい物語をつくるべき時が来た。
 資源の効率的利用で争奪を避け、地球環境と調和する。新しい道への知恵を絞る先頭に、日本が立ちたい。

(「朝日新聞」2010年3月17日付)

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