短文
 日本人の生活習慣は戦後大きく変わった。最も大きな変化の一つは食生活だろう。もともと日本人は、米を中心とするカロリーの少ない食事をしていた。しかし、肉をはじめとする脂肪(注1)の多い料理をよく食べるようになり、必要以上のカロリーを摂取(注2)するようになってしまった。さらに、現代人は体を使う労働が少なくなり、消費カロリーが減少した。このような生活によって余ったカロリーは、体内に脂肪として蓄えられ、健康にさまざまな害を及ぼすことがわかっている。
(注1)脂肪: 動物や植物に含まれている油
(注2)摂取: 体の中に栄養を取り入れること

(55)この文章の内容に合うものはどれか。

短文
 フランスのワイン生産者団体の一つが、日本に輸出されるワインについて、ペットボトルに入れて販売することを認めることを発表した。それまでは、ワインはガラス製のびんに入れて販売することが望まれるとして否定的な立場だったが、検査の結果、ペットボトルでも中身に問題は生じないことがはっきりしたという。ペットボトル入りのものは、軽い分、輸送費が抑えられるため、数年前から販売されてきた。今回の発表で、それがさらに拡大し、売上が伸びそうだ。

(56)今回の発表はどのような内容か

短文
 かつて、科学者とは、だれも考えつかなかったものを発見したり発明したりする人のことでした。だれも持っていない道具を自分で作り、それを使って研究を進め、新しい真実を発見する人、つまり、めったにいない天才でした。ところが、科学の進歩にともない、一定の技術を持ったさらに多くの科学者が必要になりました。そこで、科学者を短期間で育てるための制度ができ、多くの科学者が生まれ、必要とされる職場に送られるようになりました。科学者は一般的な職業になったのです。

(57)この文章の内容に合うものはどれか

短文
 世界の森林は減少し続けている。その理由の⼀つは商業⽤⽊材を得るための伐採(注1)がある。⾃然の森の中では、多くの場合、⾼価な⽊材として売れる⽊とそうではない⽊が⼀緒になって⽣えている。それにもかかわらず、商業的な伐採では、効率上の理由から、広範囲にわたってそこに⽣えている⽊をすべて切ってしまうことがある。近年、このような伐採に対する法による規制が強まっているが、違法伐採は依然として続いているという。

(注)伐採︓⽊を切ること

(58)この⽂章の内容に合うものはどれか

短文
 「⽇本全国どこも似たような町になってしまった」と⾔う⼈がいる。地⽅へ⾏っても、都会と同じような姿の駅、都会にもあるような名前のスーパーやコンビニ、ホテルばかりで、つまらないと⾔うのだ。しかし、こういうことを⾔う⼈は建物しか⾒ていないのかもしれない。実際は、そこに住む⼈々の⽣活の中に⼊り込んでみると、異なる点がたくさん⾒えてくる。その⼟地にずっと住んでいる⼈と⼀緒に⾷事でもしながら話してみるといい。「戦前、この村はこんな産業が盛んで、その影響がこんなふうに残っている」「この村の祭りには、伝統的にこんな役割がある」といったような話がいろいろ聞けるだろう。

(59)筆者は、現代の⽇本について、どのような意⾒を述べているか

中文
(1)
 誰でも⼦供の時というのは⻩⾦時代なのである。その時に何も感じないような平凡な出来事でも、時をへてみると、いつしか(注1)⻩⾦に変わっている。①ふだんは気がついていなくても、あの時にへと想いを馳せれば(注2)、そこいら中(注3)、⻩⾦でないものはない。
 ⼦供の頃の雑誌かなにかの教材(注4)で、点がばらばらに投げ出されていて、その点に番号が打ってある。その番号順に点を結んでいけば、ライオンやゾウの姿が浮かんでくる。これは数字を学習するための教材なのであるが、私は幼いころ記憶もこれに似ていると思う。散らばった点は無数にあり、②星のように光っているものも、燃え尽きて消え⼊ろうとするものもあるのだが、点と点とを結んでいくと記憶がありありと甦って(注5)くる、消えそうな点も、もう⼀度輝き出すのである。
 そうやって現れてくるものは、結んでいく点の順番によって、どのようにでも変わっていく。(中略)
 昔はみんな⼦供だったのである。だれもが記憶の中に⻩⾦を埋蔵させている(注6)。問題はそれを掘り起こすかどうかであって、掘ろうという意志を持ったとたん、地価鉱脈(注7)を掘りあてたかのように③⻩⾦はあふれ出してくる

(⽴松平和『いい⼈⽣』野草社による)


(注1)いつしか︓いつの間にか
(注2)想いを馳せる︓遠く離れている⼈や物事のことを思う
(注3)そこいら中︓そこも、ここも、全部
(注4)教材︓教えるための材料や道具
(注5)甦る︓死にそうだったり、消えそうだったりしたものが、もう⼀度元気にになる
(注6)埋蔵させている︓⼟の中に埋めてかくしてある
(注7)鉱脈︓役に⽴つ鉱物が埋まっているところ

(60)①ふだんは気がついていなくてもとは、何に気がついていないのか

(61)②星のように光っているものも、燃え尽きて消え⼊ろうとするものもある

(62)③⻩⾦はあふれ出してくるの「⻩⾦」とは何か。なぜあふれ出してくるのか

中文
(2)
 ①ある哲学者が、こんな打ち明け話を(注1)した。
 学⽣のころ、陸上競技の選⼿をしていたこの⼈は、運動と勉強の両⽅をするのは、忙しい。充分な勉強もできない。こう考えて、思い切って、陸上競技の練習をやめてしまった。それで勉強の成績は上がるだろうと考えたが、実際には、逆に成績が下がってしまった。おかしいと反省して、やはり、忙しくなったことで、勉強の能率が悪くなり、⼿早くしていた勉強が時間の増えた分、のろくなったということがわかった。運動と勉強の両⽅をしていたときの集中がゆるんでしまったのは失敗だったと、この哲学者は若き⽇を回顧した(注2)。なまじ時間があると(注3)、仕事の能率が悪くなる。忙しい⽅がよく仕事ができる、というのは、ヒマな⼈には想定外のことである。
 仕事が多くなれば、仕事が早くなり、案外時間があまる。時間があると思うと、仕事ののろくなり、のんびりするから、時間内に仕上げることもできなくなったりする。(中略)
 予定表をそばに置いて、予定と競争して勉強すると、どんどんすすみ、とても無理だと思ったことが予定の時間内にできてしまい時間があまることもある。②忙しくしたから、ヒマが⽣まれたのである。ヒマな⼈がたくんの仕事を予定して時間内にこなす(注4)ようにすれば、つまらぬことに時間を空費する(注5)ことはなくな
ると気づいたという。

(外出滋⽐古『傷のあるリンゴ』東京書籍による)


(注1)打ち明け話をする︓⾔わないでかくしていたことを話す
(注2)回顧する︓昔のことを思い出す
(注3)なまじ時間があると︓⼗分ではなくても時間に余裕があると
(注4)こなす︓やるべきことを処理する
(注5)空費する︓むだに使う

(63)①ある哲学者が話した内容として、正しいものはどれか

(64)②忙しくしたから、ヒマが⽣まれたとは、どういう意味か

(65)筆者が述べたいことは何か

中文
 「⼀度」とか「⼀⼈」という⾔葉は数を⽰すものであり、それ⾃体には良いも悪いもない。
 しかし昨今、それらの⾔葉がとりわけ騒々しく⽿を打ち⽬にとまる(注1)のは、「百年に⼀度」とか「千⼈に⼀⼈」といった⾔い回しが多⽤されているためである。
 つまりこの「⼀度」や「⼀⼈」における「⼀」は、百年とか千⼈といった遥かに(注2)⼤きな数に対応する「⼀」であり、確率を表す数字ということになるのだろう。
 たとえば百年に⼀度の⼤災害に⾒舞われる(注3)とか、千⼈に⼀⼈の割合で発⽣する事故の犠牲者(注4)になるとかいったような形でこの数字は使われる。そして多くの場合、ここの数量表現は、だから実際には⼈は滅多にそんな困った事態にぶつかるものではありませんよ、と①⼈々を安⼼させる働きを担っているような気がしてならない。
 別の⾒⽅をすれば、本⼈がその確率を承知して暮らしている以上、もし天災に出会っても、天から降って来る⼯衛星のかけら(注5)に当たっても、医療⾯でのトラブルに巻き込まれても、誰も責任を問われることはなくなるのかもしれない。
 確率を⽰す数字が全く必要ないほどとは思わない。少なくともそれは、ごく⼤雑把な⾒当をつける(注6)上では役に⽴つことも多いだろう。
 ただ②忘れてはならぬのは、もし何かが起こった際には、その当事者は分⺟(注7)の数字に関係なく、分⼦(注8)の「⼀」である点だ。その時には⾃分にとって分⺟と分⼦は同じ数となる。つまり、⼀分の⼀になってしまう。
 だから「⼀度」や「⼀⼈」を気軽に扱って欲しくない。分⺟は数字でも分⼦は数字ではないのだから。

(⿊井千次「⼤きな分⺟」『ベスト・エッセイ2012』光村図書による)


(注1)⽿を打ち⽬にとまる︓聞いたり⾒たりして気にかかる
(注2)遥かに︓ずっと
(注3)⼤災害に⾒舞われる︓台⾵、地震、事故など、とても⼤変なことにあう
(注4)犠牲者︓被害にあった⼈
(注5)⼈⼯衛星のかけら︓主に地球の周りを回っている⼈⼯物がこわれて⼩さくなったもの
(注6)⼤雑把な⾒当をつける︓だいたいこのぐらいだろうと予想する
(注7)分⺟︓b/aのa
(注8)分⼦︓b/aのb

(66)「百年に⼀度」や「千⼈に⼀⼈」という⾔い⽅は、なぜ①⼈々を安⼼させるのか

(67)②忘れてはならぬとは、だれが「忘れてはならぬ」のか

(68)筆者が主張したいことは何か

統合理解

 世の中には、⼈の話を聞くのが実にうまい⼈がいます。そういう⼈は、話す⼈を⾒つめながら表情豊かに興味深そうに反応しながら聞いてくれるので、話す⽅が、⾃分が受け⼊れられているという安⼼感を覚え、その⼈の⽅をじっと⾒つめて放し続けたくなるものです。⾃分にとって好ましい感じの⼈だったり、より親しい⼈であったりすれば、なおさらでしょう。しかし、数⼈で会話をしているときは、注意しなければなりません。⾃分にとって好ましいある特定の⼈ばかりを⾒ながら話を続ければ、それ以外の⼈は⾃分が軽視されているような気になり、いい気分ではないでしょう。等しい割合で視線を送ることが、グループで話すときには⼤切なのです。


 最近「傾聴」という⾔葉をよく聞く。話を聞くときに、相⼿が話したいこと、伝えたいことを、受容的・共感的な態度で聞くことで、もともとはカウンセリングなどで使われる⼿法である。学校で教えられたり企業の研修でも取り上げられたりするからであろうか、話をしているときに「なるほど」「そうですね」「たしかに」などとあいづちを打ちながら話を聞いてくれる⼈が、若い⼈を中⼼に増えたような気がする。それはたいへんに結構なことではある。聞いているのかいないのか、わからないように無反応であるよりは、ずっとよいだろう。しかし、これも度が過ぎれば、「この⼈はいつも聞いてはくれるが、⾃分の意⾒は⾔わない⼈だ」と思われてしまう危険性もある。相⼿が何を求めているのかを注意深く考慮し、時と場合に応じて、聞く態度を調整する必要があるのではないだろうか。

(69)AとBのどちらの⽂章にも触れられている点は何か。

(70)AとBについて、正しいものはどれか

長文
 私たち、何かを伝えようとするとき、伝える内容の⽅に⼀⽣懸命になる。しかし聞く⽅は、予備知識も含め、あなたというメディア(注1)全体が放っているものと、発⾔内容「⾜し算」で聞いている。
 「仕事を抱え込んでしまって困っている⼭⽥さん」が、「新商品は、何をつくるかよりも、いかに新しいつくり⽅をするかです。」と⾔ったって、①説得⼒がない
 しかし、新しいものづくりをしていると評判の⼭⽥さん」が、「新商品は、何をつくるかよりも、いかに新しいつくり⽅をするかです」と⾔えば、みんな「いいことを⾔うぞ」と聞き⽿を⽴てる(注2)だろう。そういう状況の中で話し始めれば、同じことを⾔っても、よく理解され、発⾔は通りやすくなる。発⾔が通れば、信頼感が増し、さらに発⾔が通りやすくなると、いいスパイラル(注3)になっていく。
 どうしたら、あなたが⼝を開く前に、周囲の⼈から、あなたの話を聞こうという気持ちを引き出せるのか︖どうしたら、クライアント(注4)が、あなたが企画書の表紙を開く前に、「あの⼈の企画なら間違いない」と思ってもらえるのか︖
 ⾃分の聞いてもらいたいことを聞いてもらえるメディアになる。
 「メディア⼒を⾼める」とは、そういう意味だ。少し引いた⽬で、外から観た⾃分をとらえ、それを「こう⾒てほしい」という⾃分の実像に近づけていくことだ。
 ⾃分以上に⾒られたい、という⼈もいると思うが、私はその必要はないし、戦略としてうまくないと思う。考えてみてほしい。外から⾒て⼈があなたに期待する、その「期待値」に、常に⾃分の内⾯がともなわないのだ。②
コミュニケーションの⼊り⼝はよくても、関わるごとに相⼿は、期待以下の実感をもつ。コミュニケーションの出⼝には、「幻滅(注5)」が待っている。
 そうではなく、⾃分の偽らざる内⾯のうち、どの⾯を⾒せ、謳って(注6)いくかだと思う。
「メディア⼒」をつくるものは何だろう︖(中略)
 ⾃分の営みによって、結果的に形成されていく部分が⼤きいと私は思う。⽇ごろの、⽴ち居ふるまい・ファッション・表情。⼈への接し⽅、周囲への貢献度、実績。何をめざし、どう⽣きているか、それをどう伝えているか︖それら全ての積み重ねが、周囲の⼈の中にあなたの印象を形づくり、評判をつくり、ふたたび、「メディア⼒」として、あなたに舞いもどってくる(注8)。動きやすくするのも、動きにくくするのも、⾃分次第だ。

(⼭⽥ズーニー『あなたの話はなぜ「通じない」のか』筑摩書房による)


(注1)メディア︓情報を伝える⼿段
(注2)聞き⽿を⽴てる︓注意を集中させて聞く
(注3)スパイラル︓効果を増しながらくり返していくこと
(注4)クライアント︓仕事を依頼してきた⼈
(注5)幻滅︓期待を裏切られてがっかりすること
(注6)謳う︓表現し、主張する
(注7)舞いもどってくる︓もとのところに戻ってくる

(71)①説得⼒がないのは、なぜか

(72)② コミュニケーションの⼊り⼝はよくてもとは、どういう意味か

(73)筆者は、⼈に何かを伝える場合に⼤切なのは、どんなことだと⾔っているか

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