私は、これからの時代は、ますますスピードが重要になると思っています。なぜから、仕事のスピードは今やその人の信用度に直結する問題だからです。
そういう意味でも、移動しながらでも仕事ができる態勢をつくって作業スピードをアップさせる努力をするということは、単に自由な時間を生み出すというだけではなく、自分の社会的信用度を高めることにもつながる重要事項だと言えます。
ところが、スピードを重視している人、自分のスピードを武器としてアピールする人はまだあまり多くありません。
(41) 、試験値の低い人は、スピードこそが価値であるという観点に、まだ慣れていないような印象を強く受けます。実際、学生でもスピードよりも丁寧にやることのほうが価値が高いと思っている人はたくさんいます。
先日も、英語のレポートを期日までに2ページ提出するという課題を出したのですが、2ページと言っているのに1ページしか書いてこない学生がいました。
そこでなぜページしかないのか理由を聞くと、「ちょっと考えすぎてしまって」と言うのですが、これでは (42)。
その学生が悩んだかどうかなど、こちらは問題視していないからです。2ページ書くということが提出の条件なのですから、出来不出来にかかわらず、とりあえずは2ページ目の最後まで英語で埋まっていなければ、評価の土俵 (43) 上がれません。
確かに、その学生はまじめか不まじめかと言えばまじめなのだと思います。 (44) 考え込みすぎてしまって書けなかったのだと思いますが、考えすぎた結果、時間がなくなった書けませんでした、ではダメなのです。
しかし、スピードよりまじめさが大切だと思っている人が多いので、こういうことはよく起きます。
日本人の場合、実は、不まじめだからダメだとか、だらしがなくてダメだというケースよりも、このまじめすぎてスピード感が出なくてダメだというケースのほうが多いのです。しかも、そんな彼らの最大の問題は、自分はまじめにやっていると思っているので、「すみませんでした」 (45) 、本当のところ では 反省できていないということです。
(中略)
スピードが上がらない理由は、一種の心理的障壁みたいなものがあるために、本当に必要ではない作業に多くの時間を使ってしまうからです。
でもそれは、本当に大切なこと、本当に必要なこと、今自分が求められていることがわかっていないということです。わからないから悩むのです。
(藤孝『最強の人生時間術』祥伝社による)