A
日本では、姓は一つの家族のまとまりを示すものである。だから家族が皆同じ姓を名乗ることで、連帯感を感じることができる。結婚して、好きな人と同じ姓になることはうれしいことだし、結婚したという実感がわき、共に新しい家族を作っていこうとする大事な契機にもなる。夫婦の大半が男性の姓を名乗ることは差別ではないかという主張もあるが、それは差別ではなく「慣習」である。欧米のように、ファーストネームで呼び合う文化とは異なり、名字で相手を呼ぶ習慣の日本では、夫婦が同姓であることの社会的意義は、はるかに大きいと思われる。もし、姓が変わることが女性の仕事に不都合となるなら、仕事の時だけ旧姓を使うことを認めればよく、多数が満足している現状を変える必要はないだろう。
B
夫婦が別々の姓になると「家庭が崩壊する」という人もいるが、家族を不幸にしようと思って別姓を選択する人などいない。むしろ姓が違うからというだけで、家族のつながりを感じられないことが問題ではないか。夫婦別姓となれば、何らかの事情で母親や父親と名字が違う子供が差別されることも少なくなるだろう。また、現在は、女性は旧姓だと独身、改姓すれば既婚、また旧姓に戻れば離婚したことも明白だ。これは女性のプライバシー侵害につながりかねないが、男性にはそういった心配が少ない。さらに、仕事を持つ女性が名字が変わったことを取引先などに知らせるには、電話代や葉書だい、本人の労働時間など、多大なコストがかかる。夫婦同姓が日本の文化や習慣だという意見もあるが、文化や習慣は時代と共に変化するものである。女性の選挙権や社会進出にしても、その当時の慣例を打ち破ってきたものであったはずだ。