私がよく利用する図書館でのこと。前は市民の中から選ばれた年配の人が利用者の対応を していたのですが、最近、職員が替わり、今度はユニホームを着て、てきぱきと仕事をこなすようになりました。何よりみんな若いのが特徴です。言葉づかいも統一されていて、利用者へのサービスも考慮されており、一応、プロとして仕事をしているのが伝わってきて、好感を持てました。
ところが、ある日のこと、私が借りた本を返しに図書館の入口から入ってカウンターの前に立ち、本を差し出すと、職員の若い男性が、「返却ですか ? 」と言うのでした。私は一瞬「 ? 」と答えに詰まり、黙ってうなずくしかありませんでした。本の貸し出し・返却のカウンターは、図書館に入ってすぐのところにあって、そこから入口は見えているのですし、利用者の行列ができていたわけでもなく、私は外から入って来て、だれもいないカウンターの前に立ったのです。他の職員の場合は、「返却ですね」と言ってすぐに手を出して受け取ってくれるのに、「どうして ? 」と私は心の中で自問しました。細かいことですが、それがずっと引っかかっていま した。
その後も何度か同じことがありました。私は週に一度は図書館を利用するので、そのことが気になって、ちょっと観察してみると、やはり、あんな聞き方をするのはその若い職員だけでした。また、私に対してだけでなく、本と一緒に利用カードを出さない人に対しては、一様に「返却ですか ?」と聞くことがわかりました。貸し出し時の対応を見ていても、すごくまじめで、だれに対しても常に同じ言葉を口にしています。ちょっと形式的すするかな、というのが正直なところですが、異常に見えるところはありません。コミュニケーションが得意じゃない、今の若者によく見られるタイプなんだろうと思い、たかが「か] と「ね」の違いに目くじらを立てることはないかと、もともと悪気があってのことでないのはわかっていたので、それですっきり納得。きっと最初に業務の説明を受けたときに、「利用者がカウンターの前に立つたら、貸し出しか、返却か、確認すること」というふうに教えられたのでしょう。彼はそれを忠実に守っているだけなのでしょう。
そう思うと、そんな些細なととにどうして自分は引っかかったのかと反省です。他人のちょっとした前度に不愉快な思いをするのは、自分に他人の事情をおしはかる心のゆとりがないからではないのかな、と。そのように思えてなりません。 人は皆それぞれの事情を抱えて生きている、それを忘れないようにしたいものです。