高級な刺し身やすし使われるクロマグロのうち、日本への供給量の半分を占める大西洋産が来なくなる可能性が出てきた。
 カタールで13日に開幕するワシントン条約締約国ていやくこく会議でこの海域に生息するクロマグロを保護するため国際取引を禁止する決議案が出される。
 有効投票の3分の2以上が賛成ならば、地中海を含む大西洋産のクロマグロの国際取引ができなくなる。欧州連合や米国が支持している。
 日本は世界中でとれるマグロの類の4分の1、クロマグロ( 41 )8割を消費している。クロマグロの国際取引が止まれば太平洋産に頼るしかなくなる。約1年分の国内在庫があるとはいえ、影響は大きい。
 この海域のクロマグロの資源管理は本来、大西洋まぐろ類保存国際委員会(ICCAT)の仕事だ。( 42-a )の恐れがある野生生物の( 42-b )が目的のワシントン条約で扱うのは筋違いだとする日本政府の主張には理がある。
 ただ、クロマグロの資源は年々減少している。欧州では、日本との取引を念頭に、生息する魚類を根こそる「巻き網漁」が広がり、乱獲や密漁も後を( 43 )。さらに、近年は、海でとった幼魚をいけすで太らせる「蓄養ちくよう」ビジネスが拡大している。
 ICCATはこれまで漁獲枠や禁漁期の設定によってクロマグロの資源管理を進めようとしてきた。しかしその効果は不十分だった。
 資源が枯渇しかねないという批判に対して日本政府も手をこまぬいていたわけではない。ICCAT加盟の漁業国とともに昨年11月、総漁獲枠の4割削減の決定に参加したが、欧州の環境保護派は納得しなかった。フランス、イタリア両国政府がその後、国際取引禁止支持へと立場を変えた。
 事態がここまで来た( 44 )、政府はただ決議反対を叫ぶよりも、ICCATが昨年導入した対策が実効性を持つよう規制を強め、日本が資源管理策の先頭に立つ決意を国際社会に示すことが大事ではないか。
 総漁獲枠の一層の削減、密漁や不正流通の監視態勢の強化、欧州諸国による巻き網漁船の減船。そうした只体策を示せば、日本の立場に理解を示す国が増えるだろう。
 注目したいのは、クロマグロを卵から魚に育てる完全養殖の技術だ。近畿きんき大学が世界で初めて8年前に実験に成功した。天然の資政の資源に頼らずにむ技術だ。実用化を急ぎたい。
 政府は、取引禁止になっても決定への「留保」を通告し、日本漁船も引き認める考えだが、日本への視線は厳しく( 45 )。
 マグロの味覚を守り続けるためには、資源保護への配慮とともに消費者の我慢も必要になってくる。

(「朝日新聞」810年3月8日付)

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