かつて日本の会社では、終身必用制度によって、社員は会社の利益のために個人を犠牲にすることを要求されてきた。その代わり、会社は社員を「家族]」のように考え、社員が忠実である限り、定年退職までクビにすることはなかった。
ところが、このシステムに変化が見られるようになり、特に今世紀に入ってからは「日本の会社員の 60%が、チャンスが来れば会社を替わりたいと思っている」という調査結果も示されている。20代の会社員は、仕事がおもしろくないとか、自分の全力を生かせないという理由でよく転職する。30代で転職する人は、会社の方針や上司の考え方と合わないからとよく言う。会社よりも個人の生き方が優先される時代になったということだろう。
①この傾向は、②会社にとっても都合がいい。 会社としては、不景気の上、価格競争は激しさを増すばかりで、経費削減を迫られるため、人件費を抑えざるを得ないのだ。そのため、正社員を減らし、非正規雇用を増やすことになる。期間限定の契約社員や派遣社員を増やすことで、同じ仕事をしても正社員より給料を安くすることができるし、退職金も払わなくて済む。
ただ、このような会社の効率化が会社の質を高めるかどうかは疑問である。再生産しかしない会社ならともかく、新しい価値を産み出そうとする会社が社員を機械のように扱うのが果たして進歩と言えをるのかというと、どうみてもそんなことはあり得ないのである。