日本で暮らす外国人の「
在留管理制度」が9日から一新された。60年続いてきた自治体発行の外国人登録証明書(外登証)が廃止され、国が発行する「在留カード」へ切り替える。国が情報を一元的に管理することで、不法滞在者を減らす狙いがある。一方で、在留資格がない外国人が、人権上の配慮で認められてきた教育や医療から( 41 )との
懸念も指摘されている。
日本に滞在する外国人について、これまでは
法務省入国管理局が出入国や在留期間の情報を、各地の自治体が居住地や世帯などの情報をそれぞれ管理していた。自治体は在留資格の( 42 )外登証を交付していたため、不法就労などに利用される問題もあった。
こうした状況を解消しようと2009年7月に出入国管理法などが改正され、3年の周知期間を経て施行された。在留カードは3カ月を超えて日本に滞在する外国人に交付される。ICチップが付いており、顔写真や氏名、国籍、住所、在留資格のほか、仕事ができるかも明示され、不法就労を見抜ける仕組みだ。
現在、外登証を持つ外国人は在留期間内(上限3年)に切り替えが必要。カードを持つ外国人は日本人と同様に住民基本台帳に登録され、在留期間の上限は5年に延長される。勤務先や留学先の変更や、離婚の届け出が罰則付きで義務づけられ、勤務先や学校には外国人情報を国に提供する努力義務も課された。
新制度で問題となるのは、在留資格を持たない外国人への自治体の対応だ。不法滞在者は現在、6万7千人以上とみられる。これまでは外国人登録( 43‐a )、子どもの学習権や生存権を保障するため、義務教育や予防接種、母子手帳などの行政サービスが( 43‐b )。政府は「受けられるサービスは変わらない」との立場だが、今後は住民登録できないため、自治体側が居住実態を把握できず、サービスが( 44 )可能性がある。
外国人を支援する市民団体が今年1~3月、県庁所在地の市など71自治体に実施したアンケートでは、「子の就学を受け入れるか」との質問で「居住実態が確認できれば可能」との回答が56あった一方、「不可」は4。残り11は「検討中」などと答えた。自治体の対応にばらつきが生じる恐れがある。
国士舘大学の
鈴木江里子准教授(社会学)は「母国に帰れない外国人は日本で生きて( 45‐a )。生きて( 45‐b )人を見えなくする制度には反対だ」と指摘している。
(「朝日新聞」2012年7月9日付)