われわれが現実に暮らしている世界は、実に複雑なものであり、とても理論で割り切れるものではない。こんなことは、一般の人ならだれでも知っている常識だが、科学の分野で、これを説明しようというのが「カオス理論]」である。
それまで、自然科学の分野では、数値で計算できないものに対しては、無秩序なものとして、関心を示さなかった。しかし、科学者は、この予測不可能な現象、不現則でコントロール不可能な現象についても、理論化する道を切り開いた。複雑な現実を単純化して、原因と結果の機械的な関係だけでとらえようとするのではなく、不規則性、予測不可能性そをのものを理論化する方法を得たのである。
たとえば、天気予報がそうである。明日の天気なら、天気図やるさまざまなデータを基に予測できるのに、10日先の天気となると予測不可能になる。また、よく例に挙げられるのがスポーツの試合である。スポーツでは、まずルールが確定しており、選手の能力もさまざまに数値化されており、選手の動きもある程度予測できる。しかし、ちょっとした一つのミスや誤差が、さまざまな要素と複雑にからみあい、次々に予想外の結果を引き起こし、最後には、負けるはずのないチームが負け、勝てるはずのないチームが勝つという結果にいたる。これがいわゆるバタフライ効果である。スポーツは最後まで何が起こるかわからない。 予測不可能だからこそ、われわれは試合を見て興奮し、感動するのである。