(2)
いくら熱い言葉で相手の善意に訴えても、それだけでは人はなかなか動いてくれません。また、たとえ多くの支援や寄付金が集まったとしても、一瞬のブームで終わってしまったなら、たいした成果は期待できないでしょう。
社会事業
(注1)においてなにより大事なことは、一時のインパクト
(注2)よりもいかにアクション(注3〉を継続するかのほうです。社会というのはいったん安定してしまったら最後、そう簡単には変わりません。①
それを変えようと思うなら、長きにわたって変えるための行動を、辛抱強く続けるよりほかないのです。 しかも、人の心は移ろいやすいときています。力強い言葉や崇高な
(注4)理念で一時的にその気にさせることはできても、時間が経てば最初のインパクトはどんどん薄まっていく。気持ちを持続させるのは至難の業
(注5)なのです。
うまくいっていない社会的事業は、たいていここのところを勘違いしています。いいことをしていれば、正しい主張をしていれば、人がついてきてくれるわけではないのです。また、わかってくれる人だけが応援してくれればいいという姿勢では、②
単なる自己満足で終わってしまいます。
必ず結果を出さなければならないのは、社会的事業も一般の企業も変わりありません。
(中略)
では、結果を出すためにはどうすればいいのでしょうか。一つのかぎは「仕組み
(注6)」にあります。人々のほんのわずかな善意のかけらも、すくい取ってアクションに結びつける効果的な仕組みを用意できるかどうかが、その社会事業の成功と失敗を分けるといっても過言
(注7)ではないのです。
(小暮真久『20代からはじめる社会貢献400社が支援した「社会起業」とは』丹!?新書による)
(注1)社会事業:社会からの援助を必要とする人を助ける仕事
(注2)インパクト:強い印象
(注3)アクション:行動
(注4)崇高な:すばらしくて高い
(注5)至難の業:とても難しいこと
(注6)仕組み:物事の構造、組み立て
(注7)過言:言い過ぎ
(63)①それとは何か。
(64)ここでいう②単なる自己満足とはどのようなことか。
(65)筆者は社会事業についてどのように述べているか。