短文
(1)
 旅は病気みたいなもので、じっとしていると、また行きたいなと思う。いつでも旅で人生を一瞬だけ忘れるのはいい。ある街で1日だけ時間があったら歩き回り、道の角っこ(注1)の先がどうなっているかを知って喜んでいる。鈍行列車(注2)の旅の本を出すと、読者からは「56歳にもなってハードなことをしてますね」との感想が来る。けど、僕は楽し
んでる。アジアはやっぱり面白いですよね。行っても行っても、違う顔を見せて、違うことが起きる。

(下川裕治「アジアを語る」2011年6月6日付け朝日新聞による)


(注1)角っこ:角
(注2)鈍行列車:各駅に停車する普通列車、普通電車

(55) 筆者は旅について何と述べているか。

短文
 リストラ(注1)に遭って再就職を求め、職安(ハローワーク)(注2)に行って、「あなたはなにができますか?」と問われた時、「前の会社では部長でした」などと答える人がよくいるという。問われているのは、「あなたはなにができますか?」であって、「あなたはナニサマでしたか?」ではないのである。「ナニサマ」かであった時は既に過去のものとなっている。過去のものは過去のものである。そこから「なにがしかのもの(注3)」が引き出されてこそ、過去は「経験」となる。

(橋本治『「わからない」という方法』集英社新書による)


(注1)リストラ:退職させられること
(注2)職安(ハローワーク):公共職業安定所、仕事の紹介をするところ
(注3)なにがしかのもの:何か

(56)この文章でいう「ナニサマ」とは何か。

短文
(3)
 科学が縁遠く(注)なったもう一つの理由に、数学の言葉を使っていることがあげられるでしょう。数学で記述することにより、科学が論理的に表現され、誰にもわかり、数値的に実証できるようになりました。科学の法則が普遍的に成立していることを示すには、数学の言葉が不可欠なのです。問題は、対象や現象が日常から離れるにつれ、非常に難解な数学を使うようになって、専門家以外には理解不可能になりつつあることです。それも分野によって仕方がないとしても、科学者は、数学を使わずに誰でもわかるよう表現する。夫をする必要があります。

(池内了『科学の考え方. 学び方』岩波ジュニア新書による)


(注)縁遠い:自分との関係が薄い

(57) 筆者がここで述べている問題はどのようなことか。

短文
(4)

6月1日


関係者各位

SJIモバイル株式会社
代表取締役社長田中一郎


(    )


 拝啓いつも弊社の携帯電話事業にご理解いただき、厚くお礼申し上げます。おかげさまで、昨年度も国内販売台数1位となりました。
 さて、このたび弊社では夏モデルの9機種を開発いたしました。今回のモデルは、これまでの日本語と英語に加え、中国語、韓国語の入力が可能となり、高速通信や防水にも対応するなど幅広いニーズに応えるものとなっております。
 つきましては、発売に先立ち、下記のとおり発表する機会を持ちたいと思います。多数のご来場をお待ち申し上げます。

敬具

―記一
曰時:6月20日(木)10:00〜12:00

(58)この文書の件名として(    )に入るのはどれか。

短文
(5)
 みなさんはふだん、地球という丸い球の上に住んでいることは忘れているはずです。太陽や木星(注)ほど大きくはありませんが、地球は私たち人間にとっては、ふだんそのサイズを心配しなくてすむほど十分に大きいものだからでしょう。
 しかし半世紀前とちがって、地球はいまや無限に大きなものではなくなってしまったのです。環境の問題。地球温暖化の問題。人類の活動が急速に盛んになってきたいま、じつは人類は地球のゆくえを左右するほどになっているのです。
 ①こういった時代に生きる私たちとしては、地球を見る眼と地球を考える心をもたなければなりません。

(島村英紀『地球がわかる50話』岩波ジュニア新書による)


(注)木星:太陽系にある星

(59)①こういった時代とはどのような時代か。

中文
(1)
 生まれてきたばかりの赤ちゃんの脳が、情報の伝導路を形成するのに、きっかけになるものがあります。それは、お母さんへの「興味」です。
 自分の身近にいて、自分を守り愛情をかけてくれるお母さんという存在ーーそれについて知りたいという「興味」をもつことが、人間の脳を発達させていくのです。つまり、人間の脳にとっては「興味をもつこと」こそが、①すべての始まりなのです。
 みなさんの周囲にも、何にでもすぐ興味をもって、首をつっ込みたがる人はいませんか?おそらく、②そういう人は物事の習熟に優れ、頭の回転も速いはずです。
 一方、どんなに頭脳明晰な(注1)人であっても、興味がないことは覚えられないものです
し、深く思考したり、独創的な(注2)発想をしたりすることもできません。
 とくに、人並み以上に物事への興味が薄いという人は、注意が必要。脳の考えるしくみ(注3)が機能しなくなるばかりか、脳の神経伝達路も、使わなければ衰えていくからです。
 歳を重ねるにしたがい、物事への興味を失って、「何をやってもおもしろくない」と行動量が減ってしまうケースがありますが、これは考える力が低下していると同時に、脳の神経伝達路の機能が落ちていることの表れなのです。(中略)
 また、人の話を聞いたり、本を読んだりして情報を得るときに、「そんなことは知っている」と斜に構えるのも、興味をもっていないのと同じです。聞いたことがあるなと思う話でも、自分がまだ知らない部分もあるかもしれないと考えれば、興味がわいてくるはずです。脳にとっては、常に新しいことを知ろうと、前向きに耳を傾ける姿勢をもつことが大切なのです。

(林成之『脳に悪い7つの習慣』幻冬舎新書による)


(注1)頭脳明晰な:優れた知能をもっている
(注2)独創的な:他人のまねではなく、自分の考えで新しく作り出した
(注3)しくみ:物事の構造、組み立て

(60)ここでいう①すべての始まりとは何の始まりか。

(61)ここでいう②そういう人とはどのような人か。

(62)筆者がこの文章でいちばん言いたいことは何か。

中文
(2)
 いくら熱い言葉で相手の善意に訴えても、それだけでは人はなかなか動いてくれません。また、たとえ多くの支援や寄付金が集まったとしても、一瞬のブームで終わってしまったなら、たいした成果は期待できないでしょう。
 社会事業(注1)においてなにより大事なことは、一時のインパクト(注2)よりもいかにアクション(注3〉を継続するかのほうです。社会というのはいったん安定してしまったら最後、そう簡単には変わりません。①それを変えようと思うなら、長きにわたって変えるための行動を、辛抱強く続けるよりほかないのです。 しかも、人の心は移ろいやすいときています。力強い言葉や崇高な(注4)理念で一時的にその気にさせることはできても、時間が経てば最初のインパクトはどんどん薄まっていく。気持ちを持続させるのは至難の業(注5)なのです。
 うまくいっていない社会的事業は、たいていここのところを勘違いしています。いいことをしていれば、正しい主張をしていれば、人がついてきてくれるわけではないのです。また、わかってくれる人だけが応援してくれればいいという姿勢では、②単なる自己満足で終わってしまいます。
 必ず結果を出さなければならないのは、社会的事業も一般の企業も変わりありません。
(中略)
 では、結果を出すためにはどうすればいいのでしょうか。一つのかぎは「仕組み(注6)」にあります。人々のほんのわずかな善意のかけらも、すくい取ってアクションに結びつける効果的な仕組みを用意できるかどうかが、その社会事業の成功と失敗を分けるといっても過言(注7)ではないのです。

(小暮真久『20代からはじめる社会貢献400社が支援した「社会起業」とは』丹!?新書による)


(注1)社会事業:社会からの援助を必要とする人を助ける仕事
(注2)インパクト:強い印象
(注3)アクション:行動
(注4)崇高な:すばらしくて高い
(注5)至難の業:とても難しいこと
(注6)仕組み:物事の構造、組み立て
(注7)過言:言い過ぎ

(63)①それとは何か。

(64)ここでいう②単なる自己満足とはどのようなことか。

(65)筆者は社会事業についてどのように述べているか。

中文
(3)
 僕は、「やったことがないから、やらない」という人について、本当にもったいないと思ってしまいます。人は誰でも、その人にとっての「はじめて」があるから、成長するのです。
 今までに「やったこと」や「やれること」の範囲内でしか行動しなければ、世界は永遠に広がることがありません。
 「自分には向いていると思えない」というのも断る理由にはなりません。それは、「自分で考える自分」ほど、当てにならない(注1)ものはないからです。
 僕自身、社会人になる前は、一人で何かをコツコツ作るような仕事が向いていると思い込んでいました。広告のコピー案を書いたり、デザインを考えたり……という広告制作業務が自分の適職だと信じて疑わなかったのです。
 また、どちらかというと、人見知りで内向的な性格でしたから、人事部に配属され、リクルーター(注2)として、数多くの学生と会って話をしたり、採用面接をやったりする仕事には、苦手意識がありました。
 結構あがり性で、スピーチのたぐいは遠慮したいという夕イプだったので、会社説明会イベントのような大人数を前に話をする仕事を、まさか自分がやるなど①想像もしていなかったのです。
 しかし、不思議なもので、人間というのは場数を踏むと、苦手だったものが、普通にできてくるものなのです。何度か経験するうちに、初対面の人と会って自分のことを熱く語ったり、大勢の前で話をしたりすることに②抵抗がなくなってきました。(中略)
 このように、苦手だと思っていたことでも、徐々に苦手意識から解放され、今度は逆に好きになっていくということが、実際にあるのです。

(田中和彦『断らない人は、なぜか仕事がうまくいく』徳間書店による)


(注1)当てにならない:頼りにならない、期待できない
(注2)リクルーター:企業の新人を採用する人

(66)①想像もしていなかったのはどのようなことか。

(67)②抵抗がなくなってきました。とあるが、それはなぜか。

(68)この文章で筆者が残念だと述べていることは何か。

統合理解
A
 新発売の「毎日野菜」は100%有機野菜で作った野菜ジュースです。この飲料の大きな特徴は栄養価の高さです。手軽に多くの栄養を取ってもらうため、栄養価の高い有機野菜6種類をすりつぶした物を入れました。1本飲むだけで大人が1日に必要な野菜の約3分の2の量を食べたことになります。有機野菜の栄養価はそのままに、野菜の青臭さが苦手な人でもおいしく飲める味にするため、我が社独自の製法を開発しました。この製法により野菜以外の物をできるだけ使わないで納得のいく物ができ上がりました。野菜不足が気になったときに飲んでいただきたい飲料です。

(「開発者インタビュー」月刊千ケ谷)


B
 新発売の飲料を飲んでみた。想像していた味と違う。野菜100%なので飲みにくいのではと思ったが、野菜の青臭さは感じられず、むしろ野菜の持つ甘みでおいしく飲むことができた。これまで野菜100%の飲料は苦手だったため、これには感動した。作り方に秘密があるのか、有機野菜を使っているからなのか。少々気になって「有機野菜」について調べてみた。「有機」と呼べる野菜は、国の厳しい検査に通った物だけで、この検査に通るためには化学肥料を使用していないことも証明しなければならないらしい。有機野菜と味の関係はわからなかったが、これなら毎日飲み続けられそうだ。

(「健康コラム」千駄ヶ谷新聞)

(69)Aが新発売の野菜ジュースをすすめている一番の理由は何か。

(70)AとBで共通して述べられていることは何か。

長文
 人はとかく網ニネットワークを組織する。この場合のネットワークとはイン夕ーネット生活に首まで漬かるという意味ではなく、人同士が連絡して結びつく、という意味である。会社の中では、社員たちは部署というネットワークに属する。(中略)私生活でも、人は携帯電話で連絡をとりあい、ネットワークを成す。家に帰れば、家族というネットワークの一員である。(中略)
 人とつながらずに生活することは不可能に近い。私たちは、①自動的に何らかのネットワークに組みこまれている。「何となくずっと続いているつきあいだから」、「給料を得るため」、といったややもすれば受動的な理由で、私たちはネットワークの一部となることもある。
 あなたは、自分のネットワークに満足しているだろうか。仮にいじめやひきこもりに悩んでいないとしても、人間関係の質や量について無頓着(注1)ではないだろうか。知らず知らずのうちに、人のネットワークの中で損をしていないだろうか。適切なネットワークを構築して(注2)、己の充実に結びつけられないだろうか。新しい友人づくり、運命的な出会いによる結婚、周りの人に受容してもらうこと、有名になってお金を稼ぐこと。人のネットワークがうまくいくと到達できそうなことは、たくさんある。ネットワークでうまくい
くにはどうしたらよいだろうか。(中略)
 答に近づくためには、ネットワークを知り、活用しなければならない。昔から、ネットワークの重要性は随所で指摘されてきた。しかし、今までは、ネットワークはイメージ主導で曖昧に語られることが多かった。みんなが手をとりあって助けあう組織を作りましょう、という具合である。そのためにはどうしたらよいか、本当に自分のためになるのか、そもそもネットワークとは何か、という問いに明確に答えられる人は案外少ない。あなたがネットワークを活用するためには、「ネットワークとは、これこれこういうもの」と具体的に定義する(注3)必要がある。そのように具体化してこそ、ネットワークを操作できる。ここをこうしたら、ネットワーク全体や自分の周りがどのように変化して、自分にどのような影響を及ぼすか、という問いについて具体的に考えることができる。あとは、その操作を生身の社会生活で実践すれば(注4)よい。これが、ネットワークの知識を生活に還元する(注5)ということである。②ネットワーク化して手をとりあっていこう、だけでは物足りないのだ。

(増田直紀『私たちはどうつながっているのか』中公新書による)



(注1)無頓着:少しも気にしないこと、気にかけないこと
(注2)構築する:組み立てて作り上げる
(注3)定義する:物事の内容や言葉の意味をはっきりと示す
(注4)実践する:実際に行う
(注5)還元する:戻す

(71)①自動的に何らかのネットワークに組みこまれているのはなぜか。

(72)②ネットワーク化して手をとりあっていこうとはどういうことか。

(73)この文章で筆者が言いたいことは何か。

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(74)関東地域にある会社の社内イベントの開催日時が、あきっての午後からあしたの午後に変更になった。社員である田中さんはイベントで必要な飲み物、弁当をあしたの午前中に会社に届けてくれるスーパーを探している。条件に合うスーパーはどれか。今は20時である。

(75)関西地域に住む山田さんは、ネットスーパーを利用したいと考えている。毎回、野薬のほかに日用品も合わせて10品以上買う。また、配達時間帯を指定したい。初回に支払う登録料と配達料の合計が最も安いスーパーを選ぶ場合、いくらになるか。