慣れ親しんだ
百貨店が消えるのは、寂しい。
東京・
銀座の玄関として一世を
風靡した、
有楽町マリオンの
西武有楽町店が今年末に閉店する。今年は
丸井今井室蘭店、
松坂屋岡崎店がすでに閉じ、
四条河原町阪急なども閉める予定だ。
昨年は
三越池袋店や、そごう
心斎橋本店が姿を消してしった。長引く不況のなかで百貨店の閉店ラッシュが( 41 )本格化してきた。
バブル崩壊後の1990年代半ばから続く百貨店業界の( 42‐a )に、世界同時( 42‐b )が追い打ちをかけている。この10年で140社から86社に、店舗数は310店から270店に減った。業界全体の売上高は9兆円から6兆6千億円に3割近くも縮小している。
人員減らしも急ピッチで、
老舗の三越でも社員の4分の1にあたる約1600人が早期退職に応じた。
デフレ下で新興勢力にますます押されている。低価格を武器にする衣料品専門店や巨大な家電量販店、インターネット販売の台頭で、消費者の購買スタイルの変化も激しい。
そんななか、百貨店業界は時代の変化を( 43 )でいるようにさえ見える。
値段はちょっと高いが商品への満足感も、それなりに高い。ブランド重視、美術展なども織り込んだ手厚い顧客サービス。そうした百貨店の路線は90年代初めまで、全国各地で消費者から支持されていた。
だが、老舗の看板、
歳暮などの贈答文化に安住し、新たな未来図を描けないできたところが少なくない。
150年前、パリで創業した世界初の百貨店ポン・マルシェは豊富な品ぞろえ、商品値札、派手なショーウィンドー、季節セールなど新しい売り方に挑み、客の心をつかんだ。
その原点に学んではどうだろう。高級ファッション中心の商法にこだわらず、もっと新しい商品構成や売り方に挑戦しながら百貨店の強みを生かす道は必ずあるはずだ。
ユニクロが保温性肌着をヒットさせたように需要を掘り起こし、メーカーと共同開発する力は百貨店にもある。
デパ地下の食品売り場や全国駅弁フェア、地方物産展などのイベントには、客があふれることも( 44 )。好立地の百貨店がモノを売る力はまだまだ大きい。
観光大国をめざす日本に( 45 )、ワンストップで高品質の品々をそろえる百貨店は貴重な観光資源だ。銀座や
日本橋、
新宿はアジアを代表するショッピング街になりうる。全国で百貨店を観光資源として活用すれば、日本経済再生の助けともなる。
きのう合併で
大丸松坂屋百貨店が誕生した。こうした再編も恐れない新時代の百貨店のありようを見たい。
(「朝日新聞」2010年3月2日付)