先の冬季五輪で女子フィギュアを制した金姸児選手は、フリーの演技を終えると、(50)手を振った。氷のハートを思わせる彼女。演技後の涙は初めてという。重圧のほどを知り、韓国中がもらい泣きしたそうだ。
 めったに泣かない人の涙は胸を打つ。W杯のパラグアイ戦を終えた(51-a)、多くが頬を(51-b)。仲間の泣き顔に、完全燃焼はおれも同じだと涙でこたえる、そんな絵に見えた。こみ上げる思いは、真夜中の列島も湿らせた。
 0ー0の末のPK戦。選手の髮に、ちぎれた芝がついている。延長戦まで120分を走り、転がり、精魂尽きた男たちが、肩を組んで祈った。敗者を作るための儀式は、いつも非情である。
 4戦とも、(52-a)をかけて泥臭く守った。(52-b)でをろうが、激しく動き回り、少ない決定機を待った。たびたびの円陣と、「この(52-c)でもっと」のコメントが示すように、控えや裏方を含む結束も素晴らしかった。
 結束、連帯は、南アフリ力大会のキ一ワ一ドでもある。出稼ぎで都市に出た黒人にとって、サツ力一は横につながる唯一の場だったのに、黒人参加のプロリーグは(53)。苦難の時を経て、W杆開催の誉れを手にした人々だ。わが代表の健闘にも励まされたかと思う。
 乾いた日々が続く。結果こそ悔しいが、もらい泣くほどの共感もたまにはいい。国民をやきもき(注2)させ、夢中にし、元気づけた岡田ジャパン。(54)、拍手燃え尽きてなお、未知の成果を持ち帰る。もう一つの「はやぶさ」(注3)を、熱いで迎えたい。

(「朝日新聞」〈天声人賭〉2010年7月〗日付〕


(注1)精根尽きた:体力と気力を使いきった。
(注2)やきもき:あれこれ気をもんでいらだつこと。
(注3)「はやぶさ」:惑星短期機の名前。ここではサッカー日本代表チ一ムのこと。

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