大阪のベッドタウン、
池田市は3年前、市役所の予算の使い道の決定に市民が参加できる制度を始めた。
11の小学校区ごとの住民組「
地域コミュニティ
推進協議会」に、地域での事業と予算の提案権を認めたのだ。
協議会の委員は
公募で、限度額は1校区( 41 )年約700万円。防犯パトロール車の購入と住民による巡回、小学校の校庭
芝生化、高齢者の配食サービスなどがこれまでに実現した。
一部とはいえ税の使い道を市民が決める工夫である。
倉田薫市長は「自分たちの地域は自分たちでつくる。それには市民が税を支配し、汗もかいてほしい」とねらいを語る。将来は限度額を広げ、小学校の体育館改築といったハード分野まで含めたいという。
池田市の地域型に対し、
千葉県市川市はテーマ型だ。( 42‐a )が納める住民税の1%分を、( 42-b )が応援したい市民活動団体の資金支援に回せる仕組みだ。5年前に導入した。
「年金暮らしでも参加したい」という声がお年寄りから出て、指定のボランティア活動などでもらえる点数もお金に換算して支援に回せることにし、より多くの市民が参加できるようになった。2009年度はNPOなど130団体に計2100万円が回った。
二つの制度が生まれた背景には自治体の財政難がある。行財政改革だけでは追いつかず、市民に自治や協働を( 43 )台所事情だ。
一方で、市民の側には多様な公共サービスを自分たちも担おうという機運の高まりがある。コミュニティーを再構築しようという動きでもある。
千葉県
我孫子市は、市役所が担う約1100の仕事すべてを対象に民間委託や民営化の提案を公募した。市役所と民間のどちらがやれば、より市民の利益になるかという視点で提案を吟味し、これまでに妊婦対象の教室や公民館講座などの37件が採用された。
肥大化した行政サービスを見直そうという3市のような試みは、ほかの自治体にも広しがっている。
しかし、民間が市役所の単なる下請けになったのでは意味がない。行政サービスは画一的に( 44 )。地域のニーズをきめ細かくつかんだ新しいサービスの形をつくり出したい。
そのためには、予算づくりをはじめとする行政情報が市民に公開されている必要がある。そして市民が税金の使い方にもっと口を出す。汗もかく。地域の力を生かし、市民の意思で動く市役所へと変えていく。そうした変化は
鳩山政権が唱える「新しい公共」にも共鳴することになるだろう。
地方分権が進み、権限と財源が政府から自治体へと移っても、首長の力が大きくなるだけでは足りない。分権の実をあげるためには、市民の自治こそが( 45 )のでは。
(「朝日新聞」2010年3月1日付)